@ぴあTOP > インタビュー > 神戸製鋼コベルコスティーラーズ編 大畑大介×平島久照
熾烈な順位争いを繰り広げるジャパンラグビー トップリーグ。初代王者の神戸製鋼コベルコスティーラーズは、序盤戦で苦しい戦いを強いられたが、徐々に調子を上げ、トップ4争いに踏みとどまっている。今季限りで引退を表明している大畑大介選手、今季より大畑選手のあとを引き継いでキャプテンを務める平島久照選手に、今のチーム状況、トップ4争いへの意気込みを訊いた。
Text●村上晃一 Photo●松村真行
――大畑選手は、今季限りでの引退を表明しています。いま、どのような心境ですか。
大畑「6節にヤマハ発動機と花園ラグビー場で試合したのですが、そのときグラウンドでファンのみなさんにサインしながら、『もしかすると、選手として花園でサインするのは最後かもしれないな』と考えて、もう引退が近いんだなと思いました。7節で千葉県の柏の葉でプレーしたときも、ファンのみなさんが大勢待っていてくれて、最後なんだと実感しました」
――11日は、秩父宮ラグビー場。こちらも最後になる可能性がある。
大畑「日本代表でずっとプレーしていたので、神戸製鋼とは関係なく、応援してもらっていたし、ホームのような気がしますね」
平島「自分が神戸製鋼に入る前からのスター選手と同じグラウンドに立てるのは嬉しいし、大畑さんが最後かどうかは関係なく、11日はいいゲームをしたいです」
――東芝ブレイブルーパスが相手です。
大畑「やり甲斐はあります。僕は神戸製鋼の次に東芝が好きなんです。ジョンさん(松田努選手)に出てきてほしいです。日本代表でもチームメートでしたから」
大畑大介
――神戸製鋼のチームのことですが、後半戦はNEC戦で好スタートを切りました。
平島「ウインドウマンス(南北半球で交流戦が行われる11月)にタフな練習をしてきたことが、8節のNEC戦勝利につながったと思います。まだまだレベルアップしなければいけないところはありますが、いいスタートが切れました。ベスト4に入って日本一を目指すというのも、まだまだ可能性がありますからね」
――前半節の終盤はSO正面健司、FBピーター・グラントだったのを、8節ではグラントをSO、正面をFBに戻しましたね。
大畑「どっちの良さもあるんです。グラントは、来日当初は自分を出さなかった。神戸のラグビーや、日本選手のプレーを見ていたのだと思います。ここにきて彼自身が前を見て動くようになったことで、ボールも動き始めた。チームに馴染んできましたよ」
――大畑選手は、CTB(13番)のプレーが続きますね。
大畑「僕はどのポジションでも出してもらえるなら喜んでプレーします。なんとなく、もう14番を着ることは無さそうな雰囲気ですが、僕がCTBのほうがチームとして機能するなら、それでいいと思っています」
――14番の大畑を見たい人も多いと思いますよ。
大畑「最後は、CTBでも14番を付けようかなと思ってます(笑)」
――平島キャプテンが(第7節に)怪我から復帰し、チーム力が上がっていますね。
大畑「本当はそれではいけないのですが、平島はプレーがしっかりしています。しんどいところを踏ん張って黙々と動く。スクラム、ブレイクダウンと、後ろから見ていて、もう一歩頑張ってほしいと思っているところで、平島はやってくれます」
平島「自分としては深く考えてプレーしているわけではないのですが、今までやってきたことを評価していただいているのはありがたいです」
大畑「キャプテンとして(立場が)真逆ですよね(昨季は大畑選手がキャプテン)。僕はどんどん前に出る。平島は一歩下がってバランスを考える」
平島久照
――ポジションの特性ですね(笑)。神戸製鋼は、11日の東芝戦も含め、三洋電機、サントリーという上位陣との対戦を残しています。
大畑「トーナメントのつもりでいますよ。その緊張感はいいほうに働くと思います」
平島「この3チームは本当に強いし、チームとしてのまとまりもあって方向性も徹底されている。個人スキルも頭一つ抜けていますよね。日本代表で一緒にプレーしてもそのレベルの高さは感じています」
――日本代表の選手達のことは対戦時に意識しますか。
平島「仲がいいだけに対戦するときは負けたくない気持ちが強いです。特に畠山健介(サントリーサンゴリアス)には負けたくないですね。一緒にやって強いのが分かっているからこそです」
――大畑選手は、最後のシーズンでぜひ戦いたい選手はいますか。
大畑「ジョンさん以外では、日本代表で一緒にプレーした小野澤(サントリーサンゴリアス)くらいかな。あとは、みんな若いからなぁ。NECと試合したときは、箕内拓郎がいなくて寂しかったです」
――最後にトップリーグで優勝したい気持ちも強いでしょう。
大畑「僕は、プレーオフ(マイクロソフトカップも含む)のタイトルだけ獲ってないんです。全国社会人大会、トップリーグ、日本選手権、すべて優勝しているのですが、プレーオフのタイトルだけがない」
平島「大畑さんのためにも、いい形でシーズンを終えたい。神戸製鋼はもう勝つしかない。毎試合レベルアップしていくことが大事です。それが本当に強いチームになる鍵だと思っています」
――苑田ヘッドコーチになってチーム作りは変わりましたか。
平島「ボールを動かすラグビーは変わらないのですが、立ってプレーすることが強調されたり、ボールの動かし方の細かいところが加えられています。今はそれが身につき始めている段階。練習しているプレーが試合で数多く見られるようになっています」
――トップリーグで初代王者になった頃から何か変わりましたか。
大畑「指導者も選手も変遷がありますから、そのときどきでチーム作りも変わってきますよね。神戸製鋼は、長らく個人のスキルを軸に試合を組み立てていた。そこに頼りすぎていた部分があったと思います。でも、今は組織で動くようになってきています」
平島久照(左)、大畑大介(右)
――来年はワールドカップイヤーでもあり、プレーオフに向けてトップリーグも盛り上がってほしいですね。
大畑「大畑大介の引退だけではなく(笑)、ワールドカップがあるんだということを、今からどんどん打ち出してほしいです。何か今の日本代表選手だけワールドカップみたいな感じがしますが、今日本でラグビーをしている皆に出場のチャンスがあるということを忘れないでほしい」
平島「チャンスは誰にでもあります。僕ら代表に入っている選手も必死で残ろうとしています。前回のワールドカップに出場した松原さん(神戸製鋼HO)に、『ワールドカップは他の試合と全然違う』と言われているし、経験してみたいと思い続けています」
大畑「ほんとに、まったく違うんです。これは出場した人間にしか分からない。だからこそ、皆に目指してほしい。ワールドカップに行くと、本当にラグビーをやっていて良かったと思えるんです。僕は1999年大会(ウェールズ)はいいプレーができなかったから、2003年(オーストラリア)には自分のすべてを賭けるつもりでオーストラリアのクラブ(ノーザンサバーブス)でもプレーした。ワールドカップを中心に僕のラグビー人生は回っていました。すべてを賭けても惜しくない大会です」
――ワールドカップへの意気込み、期待を。
平島「まずは選ばれるようにトップリーグで頑張って、本戦では世界を驚かせるプレーがしたいですね」
大畑「なんかやってほしいですよね。もちろん、僕も代表入りを狙ってプレーしていきます」
