@ぴあTOP > インタビュー > 生沼知裕(リコーブラックラムズ)
Text●村上晃一 Photo●岡本寿
野球にサッカー、格闘技などスポーツジャンルは数あれど、トップリーグの会場に集う女性の美人度の高さは群を抜いている(ぴあ編集部経験調べ)。それはなぜか? ド迫力のタックルに醍醐味と言えるトライ、そしてノーサイドの精神……。理由はいくつもあるが、トップリーガーにハートを兼ね備えたイケメンが多いこともトップリーグの会場に美人が集まる要因のひとつだろう。
そこで、トップリーグ全14チームから毎週ひとりずつイケメン戦士をピックアップし、彼らの男前な素顔を探っていく。
2009年春、銀座のリコー本社ビルでは、「あの素敵な人誰?」というささやきが駆けめぐったという。スーツに巨体を包んだ28歳の新入社員は、甘いマスクで女性陣の視線を釘付けにしたのである。
「明るくて、気の優しい好青年」という周囲の評価そのままに、生沼知裕は「僕でいいんすか?」と何度も念を押しつつ話し始めた。
「僕、いじられキャラなんで、この取材を知ったチームメイトからは、『ヘイ! セクシーメ〜ン』とか、馬鹿にされています(笑)」
中学時代はバスケットボールに夢中だった。すでに身長は188p、高校からの誘いもあったが、1996年、転機が訪れる。全国高校ラグビー大会の都大会決勝戦で、兄・元(はじめ)が所属する大東大一高の劇的勝利を目の当たりにしたのだ。キャプテンを務める兄は、試合中に肋骨を折りながら先頭に立って突進した。「兄貴、かっこいい」と思った。
以降、大東大一高、大東大、セコムラガッツと兄の背中を追いかけた。その兄が2005年、癌との壮絶な戦いの末、この世を去った……。
「ずっと一緒にプレーしたかった。兄貴がいなくなったとき、自分はなんのためにラグビーをしてきたんだろうとさえ思いました」
それでも兄の遺志を継ごうとプレーは続けた。自己主張が強く、男気に富む兄は、大人しい性格の弟に言ったことがある。「お前は我慢しすぎる。もっと我を出して、やりたいようにやればいいんだ」。
今年のはじめ、セコムがラグビー部の本格強化停止を発表した。兄の闘病中にお世話になった同社への恩もあって後ろ髪を引かれる思いだったが、生沼はトップリーグに再昇格を決めたばかりのリコーブラックラムズへの移籍を決意した。
「兄も、『強いチームでチャレンジできるなら行ったほうがいい』と言ってくれると思います。それに、ずっと兄についてきた自分を変えなきゃいけないとも思った」
リコーへは正社員として採用され、仕事とラグビーの両立に日々邁進している。写真の通りの短髪だが、実は大学時代から昨年まで丸刈りで通した。
「五厘は楽ですよ。今は営業職なので伸ばしていますけど、これでも気持ち悪いくらいです」
きれい好きで、部屋の整理整頓は得意。身だしなみにも気を遣う。写真撮影時は、清潔感あるTシャツとデニムで現れた。クラブハウス前だったため、さっそくチームスタッフが大音量のBGMで冷やかす。生沼は照れた笑顔でこれを受け流した。スター気取りは性分に合わない。子供達へのサインも楷書である。崩したサインを考えること自体が、ちょっと恥ずかしいのだ。
「この取材も恥ずかしい(笑)。僕は人見知りする子供だったのですが、ラグビーをやるようになって、人間関係が広がったし、挨拶もできるようになった。精神的にも鍛えられました。ラグビーって、人生の修行ですね」
ヘッドコーチのトッド・ローデンから求められるのは激しいプレーだ。「セコムとリコーの試合で、お前の激しさに我々は苦しめられた。あの生沼を求めている」。その言葉を胸に練習に打ち込んだ結果、9月5日のトップリーグ開幕節には22名のメンバー入りを果たした。28歳の新人は、これからも自分の殻を破るべく、激しいプレーで暴れ回る覚悟だ。
好きな食べ物:肉料理全般
趣味:買い物
長所:集中力がある
短所:集中しすぎて周りが見えなくなる
好きな動物:パグ
理想の女性像:背が高く、明るく、自立した人
尊敬する人:兄
ラグビーとは:修行
座右の銘:意志あるところに必ず道あり
今後の目標:トップリーグ優勝、リコーファンを増やす
特集「大解剖!ジャパンラグビートップリーグ2009-2010」へ
