|
深夜、私は池袋に向かって自転車を走らせていた。エロDVDを購入する為である。
中2の夏休みの話ではなく、つい数ヶ月前の出来事だ。
言っておくが、私とて良識ある大人である。それほどエロを渇望しているわけではない。
離婚だったか裁判だったか、とにかく何か大きなことを成し遂げた友人のお祝いに、そいつが好きなタレントにソックリなAV女優のDVDをプレゼントしようということになったのだ。
そこで、仲間内では既にイジリー岡田をも凌ぐエロの代名詞として君臨している私が、購入の大役を仰せつかった。
飛び込みで入った割りに品揃えが良かったその店には、その後、足繁く通うことになるのだが、その時は女優選びに専念せざるをえなかった。困ったのは、私がそのタレントの顔をうろ覚えであったという点だ。仕方なく一度店を出て、コンビニに駆け込み、雑誌で顔を確認をしてから戻るといった行為を繰り返す。3往復ほどしたところでようやく絞り込むことができ、購入にいたったのだ。流石にラッピングは断られてしまったが。
任務を遂行し、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、本当の戦いはここからであった。家に着き、ひとごこちつくと買ってきたDVDが気になってしょうがない。こちらとしても珠玉の逸品を選んできた自負はある。そうなると見たくなるのが人情というものだ。誰だってカワイイ女の子が部屋に来れば押し倒したい衝動に駆られるだろう。しかも人の場合、拒否されるということは往々にしてあるが、DVDはいつだって私達を裏切らないのだ。
あまりにも低次元な物の例えに我ながら閉口してしまうが、さすがに一度封を開けたものをプレゼントとして渡すわけにはいかんだろうとギリギリのところで道徳心が踏ん張った。翌日、なんとか未開封のままプレゼントする事ができたものの、そこに至るまでの孤独な戦いを褒めてくれる者など一人もいなかった。エロDVDだけに文字通りアダルトな苦悩であったわけだが、9歳の少年ヨミンが抱える大人の苦悩とは次元が異なるものであることぐらい分かっている。
ポポ伊藤。齢29にして未だ大人の階段を上ったり下りたりしながら戸惑っている。
|