政宗といえば、よく言われるのが「遅れてきた戦国武将」。政宗誕生の1567（永禄10）年は織田信長が美濃を攻略するなど、各地で戦国大名が天下を目指し戦いを繰り広げていた真っ只中、まさに群雄割拠の世である。奥州の名門・伊達家十六代輝宗(てるむね)の長男として、出羽・米沢城に生まれた政宗。幼名は梵天丸(ぼんてんまる)。後継ぎとして期待を一身に受けて育つが、5歳の時に疱瘡(ほうそう)を患い、右目を失明し、隻眼となる。このことで一時内向的になるが、禅僧・虎哉宗乙(こさいそういつ)の教えを受け、次期当主としての器を磨いてゆく。傅役(もり)[養育係]には、のちに政宗の右腕・伊達軍の軍師となる片倉小十郎景綱(かげつな)が抜擢された。11歳で元服、初陣を経て18歳で家督相続するが、翌年輝宗が二本松城主畠山義継(はたけやまよしつぐ)に拉致され、非業の死を遂げる。自分を引き立ててくれた父を失った政宗は弔い合戦を開始。生涯最大の激戦・人取橋の戦いを経て二本松城を攻め落とす。続いて摺上原で蘆名(あしな)氏を破り200万石もの領土を獲得。東北南部では一部を除いたほとんどの土地を手にし、南奥州の覇者に登りつめた。
さらに天下人・豊臣秀吉に対しても臆することなく、大胆不敵なパフォーマンスを繰り広げる。遅れを取った小田原参陣の際には髪を白水引で結び、白装束で秀吉と対面。政宗、一世一代の大勝負であったが、秀吉の許しを得て危機を乗り切った。安堵もつかの間、葛西・大崎地方の一揆への関与を疑われ上洛を命じられた政宗は、今度は大きな金色のはりつけ柱を持参する。朝鮮出兵で上洛した際には、伊達隊の派手ないでたちに京都の人々が驚きの声を上げ、「伊達者」という言葉が生まれたとも。その後、関ヶ原の戦いでは徳川方として参戦。翌年には仙台城を築城。家臣の支倉常長(はせくらつねなが)をヨーロッパへ派遣し、自身も和歌や書、茶の湯などに才能を発揮して文化人としても名を上げた。大胆な行動力と柔軟性、国際的視野など多彩な能力を駆使し、70年の生涯を生きた政宗。現代においてこそ、彼から学ぶことは多い。