profile: 京田知己
‘70年1月22日生まれ、大阪府出身。アニメ監督、演出家。武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業後、グラフィックデザイナーなどを経て、アニメ制作の現場へ。’05年から’06年にかけて放送され大ヒットしたアニメ「交響詩篇エウレカセブン」で、初のシリーズ監督を務めたほか、’09年には映画「交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい」を監督。現在は「GOSICK-ゴシック-」(テレビ東京系)にビジュアルコーディネーターとして携わり、その動向は国の内外を問わず注目を集めている。
- 京田さんって、僕と同じでムサビ(武蔵野美術大学)出身なんですってね。後輩じゃないですか。
- そうなんですよ。いや、でも僕にとっては、みうらさんは先輩っていうより、感覚としては“すごい人”。だから今日はお会いできてうれしいです。
- そうなの? 僕、アニメとか大人になってほとんど見ないから知らなかったけど『交響詩篇エウレカセブン』って、すごい大ヒットしたっていうじゃないですか。それに比べたら僕なんて…全然ダメですよ。ムサビを卒業したところで就職もせず、いろいろワケわかんないことばっかりやってきたっていうだけだから(笑)。
- 実は僕も、ムサビを卒業してから、まともに就職してないんですよ。ずっとバイトでグラフィックデザインの事務所で丁稚をやってたんですけど、なんかいろんなめぐり合いがあった末に、気づけばアニメの監督をやるようになってたという感じなんで。
- へえ。そういう意味じゃ、僕と境遇がすごい似てますよ。っていうかさ、ムサビの卒業生ってちゃんと就職できないタイプが多いのかな。西原(理恵子)とかリリー(・フランキー)とか、そういう“系”。
- その系の中に、僕も入れていただけるんでしたら、すごいありがたいことですよ(笑)。
- じゃあ、入れちゃおう(笑)。でも逆から言えばさ、大学は何もしてくれなかったことじゃない?
- その気持ちすごいわかるんですけど、大学からしてみたら、ただの責任転嫁なんでしょうね(笑)。

- 京田さんはアニメを見る側というより、実際に作ってる側な人なわけだけど、普段はどんなテレビ番組を見たりするんですか?
- たしかにおっしゃるように、アニメは作る側なんで、あまりテレビでアニメは見ないんですよ。
- だと思った。作る側って“今のモノ”のじゃなくて“その先”を見てないといけないですからね。
- そうなんです。なので見るものといえば、ニュースとかドキュメンタリーが多い。「この世界がどんな風に成り立っているのか」っていう興味を満たす番組ですよね。それとドキュメンタリーは、アニメを制作する際の参考にもなるんじゃないかと思いまして。
- ああ、ドキュメンタリーって面白いもんね。
- でもドキュメンタリーって、放送がすごい深夜だったりするじゃないですか。なので寝ている間に録画するんですけど、そのまま見ないことも多くて。予約した時点で満足してちゃってるのもあるのかな(笑)。
- わかるわかる。下手したら僕なんて、録画してたことすら忘れることがあるから(笑)。でもMV100があれば、レコーダーに録画してある番組が寝ている間に自動で転送されるんだよ。
- それはすごい。だって覚えてたとしても、録画したものを家で見返すのって、めんどくさかったりしますし。これがあれば「もういっか」にならない(笑)。
- っていうことであれば、京田さんって、普段はワンセグでテレビを見ることもないですか?
- いや。サッカーが好きなので、代表戦がある日に始まる時間に帰れないってときは、電車の中で見たりすることはありますよ。
- サッカーね。そういえば前回対談した豊崎愛生ちゃんも言ってましたけど…僕、サッカー見ないからな(笑)。でもさ、こないだ地方に行ったときにすっごいワンセグって便利だなあと思ったのね。そのシチュエーションっていうのが…コインランドリー。あそこで待つ間って、すごいヒマだからワンセグでテレビを見たんだけどさ、あれは本当ありがたかった。
- コインランドリーでワンセグのありがたみに気づくってのが、みうらさんらしいですね(笑)。それと思ったんですけど、このMV100って画像がきれいですよね。昔はケータイで見ると映像がカクカクしてるし、音と映像の届く時間差もありましたから。そういう意味でも、外で映像を見るのにすごい適してますね。
- その上、MV100って動画を連続して12時間も見られるんですよ。1回の充電だけで。
- それはなんにしろ、ケータイではまずムリですね(笑)。ってことは…僕、映画で気に入った作品は何回も見返したりするタイプなんで、入れといて移動時間に1本見るなんことは余裕でできちゃうわけですね。
- もちろんもちろん。ちなみに、もし仮に12時間ぶっ続けで見るなら何がいいですか? 僕は前回も言ったけど『ウルトラQ』がベストかなと思って。『ウルトラセブン』はできないけど、12時間なら『ウルトラQ』をちょうど最初から最後まで全部見られる。
- あ、それいいですね。『〜セブン』とか『帰ってきたウルトラマン』だと、なにを持ち出そうか考えるだけで一日経っちゃいますもんね。しかも悩んで入れた末に「あ、メトロン星人の回を入れ忘れた」ってことになったら、自己嫌悪になってしまいますし(笑)。
- さすが京田さん、話がわかる(笑)。でもね、その心配は無用なんですよ。本体の内蔵16GBメモリーに加え、大容量のSDカードに対応しているから、 64GBならならなんと最大約350時間もの映像を持ち運べるんです。だから『〜セブン』も『帰ってきた〜』も、全話を入れてしまって持ち出せるんですよね。
- そしたら、いつでもどの回でも見られるってことじゃないですか。なんかすごいことになってますねえ(笑)。僕、職業柄のせいで最新機器とかにめちゃくちゃ詳しいように思われるんですけど、全然そんなことないんですよ。スマートフォンとか持ったのも後の方ですし。だから素直に驚いてしまってますけど(笑)。

- いや、僕も基本そうだから。一緒に驚きましょう(笑)。だからMV100だと、京田さんの監督された『エウレカ』でいえば、もちろん全話持っていけるし、12時間連続だとぶっ通しで半分を見られる計算になるのかな。
- ですね。『エウレカ』って、アニメとしてはめずらしく1年間の放送だったんですけど、僕が初めてシリーズ監督を務めたということもあって、すごい苦労した作品だったんですよ。それがいっぺんに半分見られるっていうのは…いやぁ、本当にすごいですね。
- 今回『エウレカセブン』をちょっと見させていただいたんですけど、今のアニメってすごいよね。長らく見なかったところへ、いきなり最新型を見ちゃったから映像のクオリティに驚いちゃって(笑)。でもさ、それとは別にちらっと見たかぎりで思ったことなんですけど…あのアニメって“仏教”ですよね。
- あ、そうですそうです。さすがみうらさん。そもそも『エウレカ』は、ロボットアニメではあるんですが、大きなテーマとして“仏教とコンピューター”というのがあったんです。
- そうなんだ? それはグッとくる話ですねえ。
- とはいえ、がっつり仏教的な話をお坊さんの説教みたいにしてしまうのではなく、アイコンを散りばめたり全体の雰囲気として描いていった感じなんです。善と悪が単純に戦うというキリスト教的な考えじゃなくて、世界がごちゃごちゃっとなってるときに、それらを包括するような仏教の考え方もあるんだよってところを、提示できるといいなあと思ったんですよね。
- ああ、それはすごくいいことですよ。仏教的な考え方って昔はじいさんとかばあさんから聞いたんだけど、今はそんなことはないし、かといって勉強して学んだりするのもねえ。それをアニメという形で感覚として提示してるんだから、若いコにとってはいいですよ。もうどんどん植え付けてやってください!
- ありがとうございます(笑)。僕、みうらさんのお仕事の中で『見仏記』シリーズが一番好きなんで、みうらさんにそう言っていただけるのはうれしいです。

- あとMV100は音楽も聴けるし、インターネットもできる。だから無線LANでYouTubeも見られるのはもちろんだし、PodcastやFMラジオも聴けるんですよね。
- 思ったんですけど、このMV100の画面が、“世界と繋がる窓”なんじゃないかなっていう気がしてきますね。小さい画面なのにというか、小さい画面だからこそ、向こうにより大きな広がりがあるっていう。なんかCMみたいな表現かもしれないですけど(笑)。
- いやいや。一緒に驚いてる“同志”ですからね。おっしゃりたいことはわかりますよ(笑)。
- それにこうやって、動画を持ち出すことが当たり前のように定着していくことで、僕たちアニメを作る側の意識も変わっていくだろうし、変わっていかざるをえないんだろうなと思うんですよね。
- ほう。見る側のライフスタイルだけじゃなくて、作り手も変わるというのは興味深いですね。
- 映像を視聴する形というのは、現在もそうですけど、どんどん2極化する傾向にあります。ひとつは、3D映画に代表されるような、劇場とか大きい画面で見るようなもの。そしてあとひとつは、こういう小さな画面で持ち運んだり、みんなと共有しながら見るようなもの。この二つの大きな流れがあるんですよね。
- ああ。あまり考えたことなかったですけど、たしかにそうなってます。
- でも大画面で見るものって、自宅だったり劇場だったり、その場で自分が体感する“パーソナル”なものなんですよ。実はそこで完結してしまっている。反対に、MV100のように映像を外に持ち出すというのは、小さいからこその広がりが出てくる。たとえば友達に見せたりすることもあるだろうし、動画をもとにして、インターネットで話したり繋がったりっていうことをするようにもなっていく。そしてそれって実は、見た感じ以上に大きな違いだと思うんですよ。
- 映画館では見ながら隣の人と話さないもんね。そんなことしたら、どうしたって叱られるから(笑)。
- アメリカ人は映画見ながら「ヒャッホー」とか言ってますけどね(笑)。なのでそういう意味では、僕らが今後テレビでアニメを作っていく際にも、自宅だけではなく、こういう形態で見ることもあるんだってことを想定する必要があると思うんです。抽象的にいえば、小さい画面の向こうに世界が広がっている感覚を、映像にどう落とし込んでいくのかってことですね。
- 具体的には、どんなところが変わっていくんでしょうね? リリー(・フランキー)の『おでんくん』みたいに、僕の描いたキャラってシリーズもののアニメになったことないからよくわかんなくて(笑)。
- カメラワークやカット割りが変えたり、見せ方自体が大きく変わるかもしれないです。その辺は僕ら作る側の課題でもありますけど、今後はこういうハードを作るメーカーとも連携していかなくてはいけないんじゃないかなとは思いますね。って、なんだかすっごく真面目な話しちゃいましたけど(笑)。
- いや、すごく面白いというか、まさに作り手ならではの話でいいですよ。今だけじゃなくて“その先”を見てることもよくわかりました。だって話題がムサビとか特撮とか仏教だけで「そうそう、そういえばさ…」なんて話してたら、ただ同じサークルの先輩後輩が居酒屋で飲んでるみたいでしょ(笑)。
- それはそれでアリですけどね(笑)。
- ま、なんせ同じ“系”だからねえ(笑)。