――昔から音楽家や映画監督、作家といった人たちが、ひとつになろうと言い続けているわけですけど、それで世の中が平和になった過去は一度もないですよね。
「そりゃ無理ですよ。まず、世界の平和ってなんだろう、っていうのがあるわけですよ。みんなが豊かになるっていうのはとても難しい。なんだかんだいいながら、腕力のあるほうが勝ってしまう。ちっちゃいときに、いい子でいなさいと育てられて、大人になっていい子でいると外されるっていう矛盾した現実がある。みんなどこかで、なにかをつねに背負わされて生きているので、世界平和といわれても、なにが世界平和なのかは答えられない。“のようなもの”っていう感覚ならあるかもしれない。この歌(『UNI-VERSE』)もそう。最後はロマンで打ち消すしかない」
――“自分で哀しくなってる”という歌詞は、ひとつになろうと訴えながらもそうならない、現実の矛盾に対するものですか?
「地球には、60億もの人がいるんだよ? そこで相手に自分の気持ちを表現するときは、喜怒哀楽の4つしかない。そのどこかを潜るってことになっていくでしょ。だから気の持ちようっていうか。たとえば、内に秘める負のものはすごく大きいかもしれない。それを単に発散させないよう、喜びや楽しみで挟んでいるんじゃないかって思うんですよね」
――イメージすることの重要性ですよね。
「歳をとるとね、簡単なことを、ちゃんと含みを持って受け止めるようになるので。若いときには鋭さってものがあるけど、歳とるといろんな部分が幅広く見えてくるから、そこで最後に使うのは、シンプルさってことなんだよね。ぼくはまだそこには行っていない。わかりやすく聴かせる、童謡が持つよさの域にはまだ行っていないかな……」
――どういう曲調なのか、歌詞なのかってことは、ソロであろうとCHAGE & ASKAであろうと関係ない?
「これはなんとかのフレーズを思わせるよね、ってことになれば、ぼくはすぐに変えますから。そういう意味では、ぼくは強情かもしれない。そうならないように作っていきたいし作っていかないと」
――CHAGE & ASKAの作品とは線を引いておきたいと?
「程度の問題。たとえば、1曲完成するでしょ。このコード進行で違う曲を作れといったら、いくらでも作れますよ。それがまたおもしろいわけです。自分でやっている、作っている意識を忘れないでやっていくことが重要なんですね」
――そういえば、今年で最初のソロを出してから(1987年のシングル『MY Mr.LONELY HEART』)20年ですね。
「そうみたいですね」
――本人、憶えてないですよね。
「憶えてない、憶えてない(笑)」
――最初にソロをやるきっかけって、なんだったんですか?
「CHAGE & ASKAでデビューして4年目、5年目くらいからやりたいと思ってた。だってもともとソロだもん。コンテストのお付き合いとして、出てみたら意外におもしろかったのと、その大会の賞に落ちちゃって、妙な結束感が生まれただけの話であって。だからデビューしてからすぐソロ・アルバム作りたいっていう話は何度もあったんですよ」
――CHAGEさんにとっても、ソロで作品を出すことは自然なことだと?
「そうそう。もともとソロでやってたふたりだもん、コンテストに出るためにハモってみたら、なかなかいい感じに聴こえるなあっていう(笑)」
――CHAGE & ASKAは小さいときから仲良しだったとか、音楽を愛するふたりの気があって一緒になったとか、そういうことじゃないんですね。
「つねに彼は彼でバンドを持っていて、ぼくはぼくでやっていて」
――デビュー当時はフォーク、のちにニュー・ミュージックと呼ばれるようになって、そしてより間口の広いポップスへと変遷していったのはどういう流れだったんですか?
「デビュー当時のフォークは……あれで賞を狙うと獲りやすいだろうと(笑)。本来、自分たちがやってきたものじゃない感じの曲でコンテストに出て、それで結局デビューして。でも、もともとポップスやってたわけだし、ポップスっていうのがエリアが一番広いんで、そこでやるのが自然かなと」
――CHAGEさんがいると相手に頼ったり、なんらかのマジックが生まれたりすると思うんですけど、ソロのときは……。
「(遮るように)5倍、6倍ですよ!」
――わはははっ!
「そのくらいの意識でやってますよ(笑)」
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