群雄割拠の戦国時代。天下取りを目指した武将たちは壮絶な戦いを繰り広げた。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康……。その生きざまは皆、エネルギッシュ。彼らが身に着けた鎧兜などは、戦いの道具であるばかりでなく、威勢を示したり、敗北の際は死装束となるかもしれぬ……という様々な意味を持っていた。
本展はそんな戦国武将のファッションに光をあてたものだ。会場に並ぶ服飾類は、いずれも個性的で大胆な色目や奇抜なデザインだ。それらを眺めていると、彼らが戦国時代のファッション・リーダーであったこともわかる。戦国時代、当時の人々が今風にアレンジした甲冑「当世具足」を見てみよう。徳川家康所用の「熊毛植黒糸威具足」は大きな水牛の角を象ったデザインが一際目を引く。また加藤清正の長烏帽子など、その風変わりなデザインが猛将ぶりを偲ばせるものや、豊臣秀吉より伊達政宗へと伝えられ重厚な歴史を感じさせるものなど、多彩に並ぶ。このほか、戦国武将が陣中で防寒や防雨のために鎧の上から着用した陣羽織も、デザインや色使いなど多彩だ。さらに、武将の日常着だった小袖や袴に目を向けると、織田信長は、ここでも独特の美学やダンディズムを感じさせる。また南蛮文化を取り入れたものや、この時代に咲いた“辻ヶ花”と称される優美で格調高い染物が施されたものなど、当時の華麗なファッションに触れられる。
会場には、徳川美術館が所蔵する逸品はもちろん、北は仙台や山形、南は福岡に至るまで、各美術館や博物館、寺院などが所蔵する、重要文化財31件を含む115件を展示。これらを通し彼らの美意識を探る。