TOP > 今週のこの人 > 小池修一郎

――6月から宝塚月組で、『ロミオとジュリエット』が再演されます。今回は龍真咲さんと愛希れいかさんのトップコンビ、明日海りおさんの準トップスターお披露目公演ですが、主役のロミオと敵役ティボルトを、かなり個性の違う龍さんと明日海さんが役替りするのも話題です。

「基本的に演出は変えません。フォーマットが一緒だからこそ、それぞれの持ち味の違い、個性の違いを見比べて、楽しめると思うんですよ。違う演出にしてしまうと、それはまた別物になってしまいます。宝塚は、最初からそれぞれが違うことを売りにしようとして、逆に、遠くから引いて見ると同じように見える物になりがちだと思うので、むしろ同じ役を演ることで、違いがくっきりしてくるんじゃないかな。『ベルサイユのばら』で、いろいろな人が同じオスカルを演った時に、はっきりとした特質の違いがわかりましたけど、今回もその面白さがあると思います」

――トップスターがティボルト役を演じるということで、演出が変わることは?

「このジェラール・プレスギュルヴィックのバージョンでは、ティボルトがジュリエットに対して片思いをしていて、彼から見た恋敵がロミオなんです。その意味で、敵対する役として大きな存在ですから、トップが演ってもいい役かなと思います。2幕の途中でいなくなるので負担もそれほどないでしょうし。前回の雪組公演の時、ティボルトのナンバーを1曲減らしましたが、それは星組版に戻すつもりです」

――龍さんと明日海さんの、その特質の違いとは?

「まだ実際にやってみないとはっきりは言えませんが、龍真咲は一生懸命ひたむきにやる子で、マラソンよりも1万メートルとか中距離選手のイメージがあります。役替りを既に3回経験している明日海りお(※編集部注※『ミー&マイ・ガール』『エリザベート』『スカーレット・ピンパーネル』のこと。バウホール公演『ホフマン物語』を合わせると4回)は、逆に長距離ランナー系に見えますね。単純に言うと、沸点に達するのが早いのが龍で、遅い方が明日海という感じです。あのふたりは、2008年の博多座の『ミー&マイガール』で、ジャッキーとジェラルドを役替りしていますが、これはお互い大変だったと思います。敵対する者同士ならまだしも、愛し合う男女を入れ替わって演るわけですから。でもそれを乗り切れたのだから、今度も大丈夫かもしれません」

――ふたりのロミオを相手にする愛希れいかさんはいかがですか?

「男役出身で、キュートでお茶目な感じがありますね。でも宝塚のヒロインは端正な所も必要なので、だんだん経験を積んでいい娘役に育って欲しいと思います。ひとりでふたりの男役を相手にするのは大変でしょうけど、ふたりに愛されて幸せと思うか、旦那がふたりもいたら面倒くさいと思うか(笑)。気を遣って、普通の子なら逃げ出したくなるぐらい、大変な立場ですが、彼女はいい意味で鈍感力があると言うか、そこが面白いと思いますね」

――現在、5組の内、花組を除いた4組のトップお披露目公演が、小池先生が手がけられ、しかも4作すべてが違う作品でした。

「友達にはさんざんネタづまりだと言われていますけどね(笑)。どうしても似てくるんですよ。宝塚というひとつのパターンの中で、20数人の演出家がいたら、みんな他人との違いを作ろうと思って一生懸命やるわけです。でも、結局自分の癖やパターンを誇張することになるので、題材をどう選ぶかですね。今、宝塚のひとつの流れで、映画ネタの物を演るようになっていますが、なかなか権利が下りず、できなかった物が多かった。『カサブランカ』も30年ぐらい、折に触れて候補に上がって来たそうです。この映画の価値観をリアルタイムに持っていたお客様、つまり、昭和20年代に映画を見て感激されたであろう方たちの年齢層からすると、ちょっと遅かったなとは思います。もっと前なら、さぞや歓呼の声と共に迎えられたと思うんですよ。でも今の若い人たちは『カサブランカ』を知らず、花の名前だと思ってます(笑)。ハンフリー・ボガートやイングリッド・バーグマンと言っても、答えられない人が多いんじゃないですか。40歳以上なら、テレビで映画の放映を見た人も多いでしょうけど、若者は映画マニアでないとわからないと思います」

――その点、映画が2001年公開で、シリーズ最新作は2007年という『オーシャンズ11』は、記憶にも新しいところです。

「確かに『オーシャンズ11』は、『カサブランカ』の縁でワーナーさんからご提示があった中で、もっとも最近の作品でした。映画を見ていなくても、TSUTAYAに行けば全シリーズ置いてありますしね。タイトルが全部カタカナで読めることも強みで、例えば『凱旋門』が読めなくて、“なんとか門って中国の話なの?”と言ってくる若い子もいますから(笑)。この作品もいろいろ作る上で大変でした」

――やはり版権の問題ですか?

「そうです。ブロードウェイなど舞台作品の場合は、権利関係を扱う会社があって、売る体制ができていますけど、それがなくて、“舞台にしたいの? 女だけで? 何それ?”みたいな(笑)、そういう所から入ったんです。なにしろ相手はハリウッドの頂上の人たちで、現役バリバリのプロデューサー、(ジェリー・)ワイントローブさんは、初日に、(スティーブン・)ソダーバーグ監督と一緒に宝塚まで観にいらっしゃいましたけど、そこまで話が行くのに、ワーナーというものすごく大きな会社を経なければならなくて、なかなか話のディテールが進まなかったんです。最終的には日本のワーナーのオフィスが頑張ってくださって、そこまで辿り着いてご快諾いただきましたけど、逆にこちらが半信半疑で、どこまでやっていいのかすごく気になりました。殊にベラージオというラスベガスの実在のホテルが出て来るんですけど、舞台に出てくるホテルも、ベラージオじゃなきゃいけないのか、ベラージオではいけないのかがわからなくて、それが一番心配でした。勝手に真似していると言われて、後で訴えられでもしたらね(笑)。さまざまな答え待ちをしていて、初日に間に合うかどうかという状況だったのですが、今の柚希中心の星組の団結力が強かったので、うまくまとまりました。こういうのは時の運ですね。柚希というスターが持っている運が、危ない要素をいっぱい持っていた企画でも、乗り越える力になったんじゃないでしょうか」

小池修一郎

――結末も、映画版と変えてありますね。

「それも答えがなかなか来なかったんです。結局、向こうは大して儲けも期待してないから、“別にいいよ”って(笑)。でも突然、初日に監督がプロデューサーと観に来ると聞いて、焦りました。実際は『コンテイジョン』という映画のプロモーションのために来日したんですけど、それを言わないんですよ(笑)。だから、“舞台稽古を観て、上演差し止め請求が出されたらどうしよう”って。本当にこればっかりは、観る前にOKだと言われていても、何が引っかかるかわからないじゃないですか。ここを替えろと言われても、日本ではプレビューがないので間に合いませんからね。ソダーバーグ監督は大変硬派で、アテンドする人たちはものすごく気を遣っていましたけど、初日に観劇なさったら、ご夫婦でとても喜んでくれたんです。同じ生徒が早替りして出ているとは思わなかったみたいで、延べ人数が300人ぐらいいると思って、“すごいすごい”って(笑)。一方でプロデューサーからは、“これ何回演るんだ。何席あって単価がいくらか”とか、質問されましたけど」

――次は『オーシャンズ12』も観たいですが、続編の予定は?

「まず、そういう声が上がらないと演らないんじゃないですかね。それに、世間ではひとつ当たると、同じ人にシリーズで演らせますけど、宝塚の場合は、『ベルサイユのばら』のように、全組にまんべんなく当たるように、組を替えて演ることが多いですから。でも、宝塚を観たことのない新しいお客様に来ていただくためには、やっぱり作品のタイトルとテーマは大きいですね。『逆転裁判』の時にゲームファンが結構来てくださったり、『相棒』にもドラマのファンがたくさん観にいらっしゃった。その人たちがそのまま宝塚を観てくださるようになったらありがたいのですが……。宝塚は長い歴史の中で飽和状態に達した部分から、更に踏み出して行くのが大変なんですよね。でもその時代のメディアに何らかの形でアピールしていかないと、知らない人たちに観ていただけない。それは、私たち創り手にとっては辛いことだし、出演者にとっても寂しいことですから」

Text●原田順子 Photo●源賀津己

PROFILE

こいけ・しゅういちろう 1955年生まれ、東京都出身。1977年、宝塚歌劇団入団。1986年、バウホール公演『ヴァレンチノ』の作・演出でデビュー。1996年、ウィーン発のミュージカル『エリザベート』の日本初演にあたり、潤色・訳詞・演出を担当。ほかの主な演出作品に、『華麗なるギャツビー』『PUCK』『NEVER SAY GOODBYE』『THE SCARLET PIMPERNEL』『カサブランカ』(以上宝塚歌劇団)、『モーツァルト!』『キャバレー』『MISTSUKO〜愛は国境を越えて〜』『ロミオとジュリエット』(以上外部公演)など。菊田一夫演劇賞、千田是也賞、読売演劇賞など受賞多数。


TICKET

『エリザベート』
 5月9日(水)〜6月27日(水) 帝国劇場(東京)
 7月5日(木)〜26日(木) 博多座(福岡)
 8月3日(金)〜26日(日) 中日劇場(愛知)
 9月1日(土)〜28(金) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)

 

公演・チケット情報



宝塚歌劇月組『ロミオとジュリエット』
 6月22日(金)〜7月23日(月) 宝塚大劇場(兵庫)
 8月10日(金)〜9月9日(日) 東京宝塚劇場(東京)

公演・チケット情報



INFORMATION

宝塚歌劇宙組『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』
 8月31日(金)〜10月8日(月) 宝塚大劇場(兵庫)
 10月19日(金)〜11月18日(日) 東京宝塚劇場(東京)
 ※宝塚大劇場公演は7/28(土)一般発売、東京宝塚劇場公演は9/9(日)一般発売



2012.04.17更新

今週のこの人 ラインアップ

  • 山田和樹
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  • さまぁ〜ず
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  • 遠藤保仁(ガンバ大阪)
    10年連続Jリーグベストイレブンにも、代表最多出場記録にも歩みを止めない。稀代のMFの飽くなき向上心に迫る
  • 堀北真希
    あくまでも、自然体。 2度目の舞台に挑戦する“国民的女優”の素顔
  • 藤原竜也
    舞台で演じ続けてきた実体験を、 「人生の蓄積」と呼んで胸に刻む。若き天才の次なる挑戦とは…。

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