ホピ族、マヤ族、ユピック族…、自然と共生し現在の環境破壊や国際紛争などで病んだ地球を憂える各国の先住民族の女性指導者(グランマザー)13人による、次世代に伝え残したいメッセージをまとめた知恵袋本「世界を救う13人のおばあちゃんの言葉」が先頃出版され、そのグランマザーの一人、クララ・シノブ・イウラが来日した。
一方、時を同じくしてリリースした約3年ぶりとなるアルバムに、あらゆる困難を乗り越える存在の象徴でありホピ族の言い伝えで聖なる存在といわれる「COYOTE」というタイトルを付し、21世紀という荒地を旅する“COYOTE男”の目に映る風景、心に浮かぶ思いを音楽作品に投影した佐野元春。この本の存在をたまたま知り興味を抱いたことから、常に時代と向き合い新たな表現を模索し続けるアーティストと、ブラジル・アマゾンに暮らし癒しを施すスピリチュアル・マザーとの出会いが実現した。
佐野 「僕はかつて米国・ボストンに住んでいる頃に、コヨーテに会ったことがあるんです。コヨーテはネイティブ・アメリカンのホピ族の間では力のシンボルだということを本で読んでいましたし、山の中に住んでいるものだと思っていたので、街の中で会った時にはすごく嬉しかった。ブラジル・アマゾンにはコヨーテもしくは力のシンボルのような動物はいますか?」
クララ 「残念ながらいませんね。あえて言うならヘビがもっとも近い存在でしょうか。もともとはネイティブ・インディアンの間での健康のシンボルであり、ファーマシーとして、または光がくる、悟りがくるとして、大事にされていますが、その教えが私たちのところにも入ってきていますから」
佐野 「そうですか。僕はクララさんや他のいろんなトライブ(=部族)のおばあちゃんたちがこのような(世の中を少しでもよい方向へ導こうとする)活動をしていることは知りませんでしたし、実際に活動の資料や本を拝見してとても感動しました。クララさんは、他の部族たとえばホピ族のおばあちゃんと話はよくするんですか?」
クララ 「しますよ。会議(13人が一堂に会する国際評議会)がある時にはずっと一緒ですし、家に招いてもらったりしていろんな話をして、理解し合いながらどんどん仲良くなります」
佐野 「その中で自分たちと似ているところや違うなと思うところはありますか?」
クララ 「いっぱいありますよ(笑)。でも心は一つですからね。言葉や手段は違っても、光を見つけにいこうとしていることは共通しています。みんな地球のため、平和のため、人々のために…という思いでつながり合っています」
佐野 「素晴らしいことですね」
クララ 「目的はひとつですから、同じ気持ちが湧き出てくるんです。そこに血の違いも肌の色の差もないんですね。人としての心は同じ。だから一緒によく泣きもします」
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