(続き)
――確実にむいてると思います(笑)。さて、アルバムには様々なタイプの曲がありますが、柱になる曲はありましたか。
「『価値ある形』かな。これは言葉が好きですね。ハスキンを解散した頃、10年やったことを終わらして、思った言葉が『価値ある形』だったんです。で、その言葉についていろいろ考えたんです。流した涙も汗も怒りも悲しさもいろいろ踏まえたことが『価値ある形』なのかな。別れることも『価値ある形』なのかな、それは『WALK』で歌ってるなとか。こんな解決のない言葉なら、いっそ曲を作ってしまおう。それが次のバンドのキモになるんじゃないかなって。答えは、いつ か見つかるかもしれないし、見つからないかもしれないし。そうやって悩む感じが、新しいバンドを前進させるに違いないって。あと、またいつかマーク・トロンビーノ(プロデューサー)とやれるような体勢を整えたいって思いも『価値ある形』だって、友達には話してましたね。 で、そうこうするうちに、去年の秋くらいに曲が一気にできたんです」
――何かきっかけがあったわけですね。
「ちょうどハスキン・トリビュートの話が来て、僕にバンドを選んでほしいといわれたんです。考えて始めたら、まずは(YOKOYAMA)KEN君だなって。それで電話をしたら「イッソンからかかってきてうれしいよ。『WALK』良いね。やっちゃおうかな」って。そういう流れがあると、もの凄く心境が沸くわけですよ。無念の解散でしたけど、それにしてもひとつ物事を終わらせて、再スタートを切る今、自分のやってきたことで、こうやって後押しを受けるんだなって気がしたん です。「イッソンお疲れ」って。これはやってきて良かったなって思いましたね。それで歌詞ができたんです」
――ある意味『価値ある形』が、MARS EURYTHMICSの最初の所信表明って感じですね。
「いろんな人に感謝、自分のやってきたことにも感謝。いろいろあったけど、ものを作ってきて良かったなって。曲を歌ったり作ったりすると、こういうことになるんだなと思うと、今後がますます楽しみですね」
――なるほど。では、タイトルの『Range over hill and dale』に込めた意味は?
「いろいろ家で調べていたら、これが引っかかって、言いやすいし、その時の自分の訳では“丘と谷の向う側”って感じが好きでつけたんです。あとで分かったんですけど、わざわざちゃんと丘を越えた向う側って意味だったんです。そしたら、結局何事も、丘と谷じゃないのって思 えたんです。やれやれ越えたと思っても、そこが山だったり谷だったりするかもしれない。バンドでも人生でも、こうやっていくってことなんだろうなって。今までもそうだったし、これからもそうだろうし。『ヒロイシマ』って曲にしても、山越え谷越え帰って来たぞって、歌いたいんだろうし。しばらく(地元の)広島でライブやってないですからね。それにやっぱり、新しい4人の旅の始まりですから、山あり谷ありで行きましょうって気持ちもありますし」
――では、新たなバンドの第一歩目となるアルバムを聴いてくれる人へメッセージを。
「みなさんも、ちょっと日常で上手くいかないな、困ったなってことがあると思うんです。自分と同じように、人に説明できないようないろんなことに巻き込まれ、最終的に辞めなきゃいけないってこともあるかもしれない。そういう経験したことのない人は、何のこっちゃ?って思う かもしれないけど、痛いほど分かる人もいるかもしれない。もちろん、そういった曲だけじゃなく、いろんなシチュエーションの曲もあるし。いろんな人に聴いてもらえるように、バラエティに曲を作ることを心がけたんです。なので、ご自由に聴いてくださいと。できれば彼氏彼女と 聴いてほしいですね」
――そのこころは?
「そこに愛があるから(ニヤリ)」
――おあとがよろしいようで……じゃないですよ(笑)。
「全然、愛って言葉が歌詞に無いですね(笑)。とにかく、アルバムを聴いてくれたあとのライブを早くやりたいですねー。イントロだけでお客さんが「来たー!」ってなる光景を、早く見たいなぁ」
★1stアルバム 『Range over hill and dale』 5月23日(水)リリース
★MARS EURYTHMICSの公演情報はこちら
|