GLAYは8月中旬、初となるアメリカ・ツアーを敢行した(その直前にこのインタビューは行った)。これはもちろん、バンドが成長したことで生まれた自信によるアクションでもあるが、自信から生まれた遊び心からでもある。
「アメリカでライブをやることを、進出といったキャッチコピーでなく、パリで歌舞伎を、ロンドンで相撲をやるようにオレたちもできるんじゃないかなと。GLAYを磨くことに集中してきた結果、ライブというパッケージをどの国に持っていっても平気だろうなって思ったんですね。来年は15周年ですし、自分たちへのご褒美として、昔からやりたかったことだから、ちょっと行ってちょっとやってくる、みたいなこともありまして(笑)。日本へ帰って来て、いい思い出だったねって、写真でも見ながら思えたら楽しいよねっていうのがもともとの発想だったから」
だから、よくあるファンクラブ会員へのチケット販売も、ツアーを企画して日本人をアメリカへ連れて行くことも今回のツアーでGLAYはしなかったのだ。そう、遊びだからこそ真剣なのである。
「人はいつの間にかぬるま湯に浸っていることさえわからなくなることがある。向こうのお客さんは正直だからブーイングがあるかもしれないけど、痛い目に遭うことも作っていかないと(笑)」
GLAYのライブにおける動員力は破格で、1999年に千葉県の幕張メッセ屋外有料駐車場で結成10周年を記念し、20万人を集めて行われた『MAKUHARI MESSE 10TH A-NNIVERSARY GLAY EXPO99 S-URVIVAL』はとくに有名だ。また、これまでにリリースされてきたシングルやアルバムも数多くのミリオン・セラーを生んでいる。そういったキャリアに甘えない、バンドの新しい挑戦がこの夏のアメリカ・ツアーでもある。しかしTAKUROは「とんでもない、甘えてますよ!」と否定した。
「ヒット曲というものがなかったら、本来自分たちが楽しみたいライブにおいて、ファンとの関係性や自分たちのスタイルを築けなかったとも思うんです。過去の遺産を食い潰しているかもしれないし、もしかしたら良い銀行に預けられたおかげで預金が増えているかもしれない。それはわからないけれども、今までしてきたことは否定したくない。意味がない。だから甘えてもいい。シビアになっているだけじゃ、誰も幸せになれない」
この発言にも、単に音楽性にこだわらないTAKUROの、そしてGLAYというバンドのスタンスを垣間見ることができる。
「失恋にこだわって愛情そのものを疑っても意味がない」
GLAYは間もなく、ニュー・シングル『紅と黒のMATADORA/I LOVE YOUをさがしてる』を発表する。いわゆる、ダブルAサイドシングルで、今のバンドの勢いがそのまま音に乗ったロック・チューンと、美しいメロディが印象的なバラードと、対象的な2曲となっている。ちなみに前作の『VERB』はチャート1位を見事に獲得。今回も、といいたいところだが、TAKUROは強く数字にはこだわっていないようだ。
「1位はもちろん嬉しい。関わっているスタッフ、ファンのみなさん、オレらにとってもご褒美になりますから。ただ、楽曲の良さだけでそういう結果になるのではないということは、長い活動の中で学んできた。だから半径2メートルの範囲をまず大事にしたい。オピニオン・リーダーになりたいわけではないので」
なにを、どうやって伝えるのか。聴き手とのコミュニケーションもGLAYにとっては作品と同じくらい重要なのだ。デビューから15周年を迎える来年はおそらく、これまでのアニバーサリー・イヤー同様に、自らの進化と対等に向き合った何かをGLAYは届けてくれるだろう。もちろん、それがなんなのかは現時点ではわからない。ただ、4人のコミュニケーションから生まれてくる、あたたかい“なにか”であることは間違いないだろう。
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