@ぴあ
藤井フミヤ
アーティストであり続けること
藤井フミヤのあたり前
「藤井フミヤ」写真
Text●唐澤和也 Photo●中川有紀子
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――チェッカーズ時代から数えて25年。四半世紀の長きに渡って第一線を張り続けている理由を、フミヤさん自身はどう分析していますか?
「根がマジメなんですよ、こう見えて。25年間で遅刻はあまりしてないし、作品の締め切りに遅れたことだってほぼないと言える。『タイムリミットがすべての作品を作る』と、よく言っているんだけど、そこかな。約束は守り続けてきた気がする。あとは……長く続けるためには、やっぱり努力が必要だよね」
――努力? チェッカーズ時代も、ソロになってからも軽やかなイメージがあったので意外な言葉です。
「いや、努力はしないとダメだと思う。なぜかというと、努力をしないと技術が進歩していかないから。ずっと同じことを続けていくのなら別だけど、なにか新しいことに挑戦しようと思ったら、新しい技術をひとつでも得ないといけない。で、ひとつの技術を得ると5つぐらい可能性が広がるから。だから今も、音楽制作に関わるソフトウェアを1個完璧にマスターしたいと思ってる。それって、ある種の努力でしょ?」
――なるほど。フミヤさんはチェッカーズ解散後、ソロになった1曲目の『TRUE LOVE』で初めて作曲に挑戦し、200万枚以上の大ヒットを記録しました。あの結果も、努力のひとつだったんですね。
「ううん。あれはね、運」
――え? 運ですか?
「完全に運。まずね、チェッカーズが解散して、ファンの人たちが難民化していたのね。彼女たちが支持してたチェッカーズという王国が突然崩れ去った。そんな時期に俺がソロで曲を出したから熱烈に応援してくれた。つまり、タイミングが良かったんです。さらに、主題歌にさせてもらったドラマ『あすなろ白書』が抜群におもしろかった。しかも、ノリちゃん(木梨憲武)が結婚した時に船上パーティであの曲を歌ったことで、結婚式の定番ソングにもなった。ヒットを生む流れみたいなものが少なくとも3つもあった。そんなの自分ではコントールできないでしょ? だからね、運」
――でも、「いい曲を作る」というのが根底にはあったわけですよね?
「もちろん。やっぱり、ソロになって1曲目だったからいい曲を作りたいと思ったし、売れたいとも願った。ただ、俺が思うに、ヒット曲と売れる曲って違うんだよね」
――どういうことでしょう?
「CDを出すと毎回売れるアーティストっているじゃん。でも俺は、コアなファンの人たち以外に『どれが歌える?』と聞いて、みんなが歌えるものがヒット曲だと思うんだ。美空ひばりさんだってそうだよね。名曲をいっぱい歌ってきた人だけど、やっぱり『川の流れのように』は特別で、みんなが歌えるじゃん」
――そういう意味で言うと、フミヤさんが目指してきたのは「ヒット曲」だったんですか? それとも「売れる曲」だったんでしょうか?
「ヒット曲がいいよね」
――「いいよね」って人ごとみたいに言わないでください(笑)。
「だってさ、ヒット曲のなにがいいかってね、みんながニコニコするのよ。レコード会社、スタッフ、そしてファンの人たち。一度でもヒット曲を経験したことある人なら、あのみんなが笑ってる感覚が特別なものだとわかってくれると思うな」
――この25年を振り返って「ライバル」はいましたか?
「いやぁ、考えたことないなぁ。『TRUE LOVE』が妙な売れ方をしてしまったおかげで、あの時期はバカみたいに天狗になっていたから。『俺以上にカッコイイ男はいない』ぐらいに思っていたから(笑)」
――天狗っぷりは、近年で言うとホリエモン級のそれだったのですか?
「ホリエモンはすごかったね(笑)。でも、俺の天狗はちょっと違って、経済力とかではなくて、ある種の根拠のない全能感だと思うんだけど、俺にできないことはない、みたいな感じだった(笑)」
――天狗だったと自ら語られるということは、ある時期に鼻を折られたということですよね?
「そうそうそう。天狗になってる頃は、友達と飲んでても説教ばっかりしてたらしいんだよね。そんな酒の席、誰も楽しくないじゃん? で、ある友達に『説教ばっかりしてるあんたとなんて誰も飲みたくないんだよ』とハッキリ言われて。それでパッと目が覚めた」
――なるほど。では、「ポップスターの条件とは?」という質問はどうでしょう。天狗期の話も含めて、やっぱりフミヤさんはポップスターだと思うのですが。
「俺は……ポップスターだよね」
――あ、言い切っちゃいましたね。
「いや、これは天狗になった発言じゃなくて、たとえば『俺はロックスターだ』なんておこがましくて言えないから。ロックってカリスマ性が求められるでしょ? よく言われるけど、ロックって生き方じゃん? たとえば、常夏のハワイでも革パンはいてるぐらいの気合いがほしいじゃない? 実際、THE MODSのボーカルの森山さんが、『俺もハワイで短パン履いてのんびりしてみたい』なんて、しみじみと言ってくれたことがあって。ということは、森山さんはハワイに行っても革パンで通していたと思うんだよね。そういうのって、男が男に惚れるじゃないけど、無骨で不器用で高倉健さん的なカッコ良さがあるじゃん。でも、俺はそういうタイプではない」
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1962年7月11日、福岡県生まれ。1983年に「チェッカーズ」のボーカリストとしてデビュー。数々のヒット曲を世に送り出し大スターの座に上り詰めたが、1992年末に解散。1993年、1stソロシングル『TRUE LOVE』を発表。200万枚を超えるセールスを記録。また、他アーティストへの楽曲提供やドラマ出演、アートなど多岐に渡り活躍。今年、デビュー25周年、ソロデビュー15周年というアニバーサリー・イヤーを迎える。

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