酒井雄二
――ここで改めて、5人のメンバーのキャラクターについて掘り下げてみたいのですが。まず酒井さんは、どんな人ですか?
村上「まず、独特のステートメント(発言)ですよね。みんなが“おっ!”と思うようなこと、意表を突く感じ、逆を突く感じっていうのかな。その意外性が曲作りにも表れてるのが、酒井のパワーだと思いますね。“ほかのメンバーがそっちの方向で曲を書いてるんだったら、俺は違う角度の光を当てよう”みたいな」
安岡「そう、切り口が違うんだよね」
北山「しかも、メンバーのなかでいちばん天才肌だと思います。自分が作ったものを、たまに自分でコントロールできていないことがあるんですよ。“こんなものが出来てしまった、どうしよう?”っていう。想定した範囲のなかで作っていれば、そんなことは起きないわけですよ。自分の世界を超えるものを作ってしまうのがおもしろいし、すごいなって」
北山陽一
――(笑)。では、北山さん。
黒沢「たとえ話が独特ですね。すごく簡単な話をしてるのに、いきなり“座標軸で考えると”なんて言い出したり。あと、“要するに”って言ってからの話が長い(笑)」
村上「ハーモニーの部分では、(低音部を支える)大きな仕事を負っていて。だからこそハモリに対するこだわりはすごいですよ。ほとんどフェチが入ってる」
安岡「理論派に見えるかもしれないけど、じつは感覚でやってるところもあるんじゃないかな。作詩をする立場からいうと、メロディやコード進行にいちばん物語があるのが、北山の曲なんです。“ここで失恋して、ここでよりを戻して…”っていうのが、曲のなかに存在してるんですよね。ただ、ときどき場面転換が多すぎることもあって…」
黒沢「Aメロ、Bメロ、Cメロ――Gメロまであるじゃん! っていう(笑)」
村上「逆に“あ、もう終わり?”っていう短い曲があったり」
安岡「そう、主題が来ないまま終わってしまうこともあるよね。そういう場合は、すごく歌詩が書きづらいです(笑)」
安岡優
――安岡さんは?
北山「(なぜか小声で)……とにかくマジメ。こんなマジメな人、見たことない」
村上「制球力は高いですよね。ただ、酒を飲んでるときは、その制球力が著しく下がってしまう(笑)」
酒井「グローブをつけてないほうの手でボールをつかもうとするぐらいの」
北山「(笑)。デビューしたころ、“あなたのモットーは?”みたいなことをよく聞かれてたんですけど、安岡は“いい仕事のためにはいい準備”って答えてたんです。まさにそのとおりの人ですね」
黒沢「歌詩の締め切りも、絶対に守るし」
村上「俺が尊敬する野村克也監督も、同じことを言ってるんですよね。“いい準備なくして、いい結果はない”っていう。だから安岡は、俺の尊敬する人です(笑)」
黒沢薫
――では、黒沢さん。
酒井「ジャンルでいうと、カレー歌手(笑)」
安岡「(笑)。“こういう楽曲がほしい”っていうとき、ストライクゾーンにビシッと投げ込んできてくれるんですよね。それはグループとして、すごく助かってる」
北山「ライブで、歌手としての安定感に改めて驚いたことがあるんですよ。すごい人がいるんだな、うちのグループにはって。黒沢のボーカルを軸にして“ゴスペラーズはここまでやれる”っていう計算が出来るというか」
村上「ムードメーカーでもあるんですよね。“がんばろうぜ!”っていうだけじゃ、がんばれないときってあるじゃないですか? そういうときにスッと立ち上がって、“じゃあ、やろうか”みたいなことを言うんですよね、彼は」
安岡「そうだね。ただ、眠いときの黒沢さんに電話するのだけは、やめたほうがいい。声が2オクターブくらい低くて、超コワいから(笑)」
村上てつや
――では最後。リーダー・村上てつやさんはどんな人でしょう?
黒沢「とにかくリハーサルが好きです。“今日はリハーサルが良かったから、もうこれでいい”って言ったことありますから(笑)」
北山「誕生日辞典でリーダーのことを調べると、4月24日生まれの人は“物事を書き出すのが好き”って書いてあるんですけど、まさにその通りなんですよ。ネタ帳があって、それをコピーしてメンバー全員に見せてましたからね、結成当初は」
酒井「いまもお気に入りのアプリケーションは“メモ帳”だし」
安岡「ただね、字が読みづらいんですよ」
北山「で、“俺は本気出せば上手いんだ”って」
酒井「エピソード多いなあ」
黒沢「(笑)。まあ、このメンバーをまとめてるのはすごいことですよね」
北山「たぶん、僕らが思っている以上に要求を突きつけてると思うんですよ。それを受け止めながら活動してるわけだから、これまでには血ヘドを吐くようなこともあったと思うんですよね」
黒沢「ちょっと変わった人とでも、それをおもしろがって付き合えるんですよね、リーダーは。人が好きっていうか、寂しがり屋なのかも」
酒井「寂しさを紛らわせるためにグループを作って、その結果、組織論が発達していく(笑)」
黒沢「(笑)でも、だからこそゴスペラーズはやっていけるんだと思いますよ」