180万部の大ヒットとなったケータイ小説『赤い糸』が、「ドラマ×映画の完全連動」という異例の形式で映像化。敦史を演じた溝端淳平が『赤い糸』での演技について語ってくれた。
Text●森朋之 Photo●三浦孝明
――溝端さん演じる“敦史”は母子家庭で育ち、しかも母親が薬物依存症という境遇。演じる面で難しさはなかったですか?
「ストーリー自体もシリアスだし、すごく繊細な役ですからね。自分とはまったく性格が違って、まったく経験のないことを表現するのは、かなり大変でした。敦史はいろんな感情を抱えてるんですけど、それをギュッと抑えてるところがあるんですよ。口数も少ないタイプだから、表情ひとつで内面を伝えていくっていう――やっぱり、プレッシャーがありましたね。でも、途中からは“自分が確信を持ってやれば、それが敦史になる”って思えるようになりました」
――敦史が芽衣に告白する、長崎・グラバー園でのシーンはどうでした? 映画の中でも、いちばん幸せな場面だと思うのですが。
「緊張しすぎて歯を磨くのを忘れちゃったんですよ(笑)。セリフも長かったし、自分からキスするシーンもあったので“失敗したら申し訳ない”っていう気持ちもあって。でも、監督がひとつひとつ教えてくれたし、練習にも付き合ってくれたので、なんとか頑張りました」
――“映画とドラマ”が同時に公開されるというプロジェクトも話題を呼んでます。
「ドラマでは、映画では描けなかったこともかなり出てくるんです。たとえば映画の中に敦史が芽衣に別れを切り出すシーンがあるんですけど、ドラマにはそこに至るまでの経緯も細かく表現されてるんですよね。特に(ドラマの)5、6話は敦史の気持ちの動き、母親との関係もわかってきて、映画を見てくれた方も“なるほど”って思ってもらえるんじゃないかなって。だから、映画を2回くらい見てもらいたいんですよね、個人的には。1+1が3にも4にもなって、いろんな楽しみ方ができると思います」
――溝端さん自身、役者として得たものも大きいのでは?
「大きいですね。『ダイブ!!』(熊沢尚人監督)もそうだったんですけど、いままでは自分に似たキャラだったり、イメージがはっきり決まってる役が多かったんですよ。でも敦史は自分とはまったく違うタイプだし、演じる役者によって、お客さんの印象も大きく変わると思うんです。撮影に入ったばかりのときは上手くいかないことも多かったし、かなり落ち込んだりもしました。でも、こういう大きな役をいただけることは光栄だし、“壁にぶつかったときにどうするか?”っていうのがその人の真骨頂だとも思うので。『赤い糸』に出演できたこと自体が運命だったんだなって思ってます、今は」
――撮影中、絆や運命というテーマについて考えることもあった?
「ありました。“運命の人と出会いたい”なんて男はあまり考えないかもしれないけど(笑)、恋愛だけではなくて、いろんな出会いの中で今の自分があるんじゃないかなって。映画の中に出てくる『意味のない出会いなんてない』っていうセリフがとても印象に残ってるんですけど、ホントにそうだなって思うんですよ。もちろん“ちょっと苦手だな”という人もいたけど、“この人とは会わなければよかった”っていうことはないし、すべての出会いに感謝しなくちゃいけないって考えるようになりましたね」
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