180万部の大ヒットとなったケータイ小説『赤い糸』が、「ドラマ×映画の完全連動」という異例の形式で映像化。まさにすべてが“赤い糸”でつながっているかのようなこのプロジェクトの裏側には、一体何が起こっていたのだろうか。主題歌『366日』の作詞・作曲を担当した仲宗根泉に話を聞いた。
Text●森朋之
――『赤い糸』原作者のメイさんとは、2、3年前から交流があるとか。
「『Fortune』(仲宗根泉の初詩集『あなたへ』に封入されたバラード曲)を『赤い糸』のCMソングに使ってもらったり、私がメイの小説の帯にコメントを書かせてもらったり。プライベートでも仲が良くて、沖縄を案内したり、ライブにも来てもらってるんですよ。『赤い糸』と『Fortune』って、どちらも“運命”をテーマにしてるんですよね。同じ時期に同じようなテーマで作ってたっていうのも、何かつながりがあるんじゃないかなって」
――『赤い糸』を読んだときの印象は? やっぱり良かったですか?
「良い、悪いっていう評価みたいなものではなくて、“これは自分の恋愛だ”っていうのが第一印象でしたね。いろんな恋愛の形が描かれてるんだけど、“これ、私のことじゃない?”って。“私のときはこうしたけど、芽衣はどうするんだろう?”っていう感じで読んでたんですよ。そういう経験は初めてだったし、それこそ運命的なものを感じてしまって。ふたりで“また機会があれば、何か一緒にやりたいね”って話してましたね、前から」
――『赤い糸』の映像化に際して、泉さんが作詞・作曲した『366日』(HY)が主題歌になるのは必然だったのかもしれないですね。“うるう年の2月29日生まれのふたりが出会う”という設定ともピッタリだし。
「私も鳥肌が立ちましたよ、“こんなことがあるの?”って」
――映画の設定を知らないで書いた曲なんですよね?
「そうです。私は“1年中思っても、まだ足りない”っていう気持ちを込めて『366日』というタイトルを付けたから、『赤い糸』とはちょっと違うんです。でも、テーマには共通してるところが多いし、“ここまで寄り添うのか?”っていう感じですね。こういう取材とかでは“たまたまテーマが似ていて”って説明するんですけど、それを言うのも、もどかしいくらいで(笑)」
――では「映画の主題歌をやってみたい」という気持ちはあった?
「いや、それもないですね。どちらかというと、なるべく沖縄でゆっくりしていたい派ですから(笑)。今回の場合は、メイとのつながりがあったから実現したことだと思いますね」
――プロデュースを手がけたフジテレビの関谷正征氏とも以前からの知り合いだったとか?
「そうなんですよ。ずっと前からHYのことを応援してくれてて、ライブにもよく来てくれて。アルバム『HeartY』のライナーノーツも書いてもらったんですよ。メンバーよりもHYのことを語るのが好きな人ですね。よく“あの曲のコードが……”っていう話をしてくれるんですけど、私たちは直感で作ってるところもあるので、実はよくわかってないっていう(笑)」
――映画を観て、エンディングで『366日』が流れて。そのとき、どんなことを感じました?
「『366日』という曲が主人公のふたりの思いを代弁してるというか――すごく不思議な感じでしたね。もちろん何回も聴いてるし、何度も歌ってきた曲なんですけど、映像が加わることで自分の曲じゃないような感じになるというか。また違った聴こえ方になる、と言ったほうがいいのか」
――関谷さんが手がけたミュージック・ビデオも素晴らしいですね。芽衣(南沢奈央)、敦史(溝端淳平)も出演、『赤い糸』の世界観ともうまく重なってて。新たなエピソードも加えられてるし、10分のショートムービーを見ている感覚でした。
「PVの撮影にも出演していただいたんですが、奈央ちゃんが泣くところで、私まで泣いちゃったんですよ。“お前かよ!? 泣くのはそっちじゃなくて、奈央ちゃんだろう!”っていう話なんだけど(笑)、なんだか圧倒されちゃったんですよね。いろんな思いがこみ上げてきちゃって……。自分で作った曲なんですけどね(笑)」
――『赤い糸』の大きなテーマである“運命の出会い”については、どんなふうに感じてますか?
「出会うこと自体に大きな意味があるんですよね。その人に会えたことで何かを得たり、ありがとうっていう感謝の気持ちが生まれたり。それだけでも“赤い糸”だと思うんです、たとえ結ばれなかったとしても。だから、赤い糸って何本もあるのかもしれないなって(笑)。ただ、それを探せる人と探せない人がいると思うんですよ。いままで生きてきたこと、いろんな人に支えられてきたっていう思いが小さい人は、もしかしたら赤い糸を見つけられないんじゃないかなって」
――利己的というか、自分のことだけ考えていると……。
「ダメでしょうね。だからHYのメンバーとは、完全に“赤い糸”ですよ。メンバーの誰かと結ばれることはないけど(笑)、絆はすごく強いので」
――そうですね。メイさんとつながりも続いていくだろうし。
「はい、そうなるといいなって。小説と音楽というジャンルの違いはあるけど、モノを作るときの葛藤や悩みっていうのは、共通してるところも多いし……。“お互い、妥協はしないようにしようね”ってよく話してますね」
芽衣役・南沢奈央のインタビュー
敦史役・溝端淳平のインタビュー
特集「ケータイ小説『赤い糸』ブームの理由」
