@ぴあTOP > インタビュー > 田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)
――やっぱり、一番楽しいのは攻撃している時ですか?
「僕は守っているって、一回も思ったことがないんですよね。基本的にボールを獲りに行くイメージしかない。守備というよりも、ボールを持っていない時はまず第一歩の攻撃であり、ゴールを奪うために何をするかしか考えていない。そこで引いてしまってミスするよりは、ボールを奪いにいって失敗した方が、まだ自分の中では納得できるんです」
――では、自分がDFっていう意識もない?
「意識はないですね。ゴールを守ってディフェンスしている感覚ではやってないですね」
――闘莉王選手は性格がFWなのに、DFをやっている理由は何なんですか。
「ははは。そうですね、僕もよくわからないですね(笑)。昔はFWをやったりもしてたんです。でもゲームの組み立てであったり、1本のパスで点を取れたり、そういうところに関しても達成感や満足感がある。面白いんですよね」
――味方に点を取らせるのも楽しい。
「そうですね、自分が取ることも大事ですけど、いいアシストをした時には、『サッカーって楽しいな、サッカーをやっててよかったな』って思います。人を喜ばせることは、すごくいいことだと思っていますから。自分が何かの形で人を喜ばせていることで、いい気持ちになりますね」
――いまプロとしてサッカーをしている理由のひとつには、人を喜ばせたいといった部分もあるわけですか。
「それもありますね。観に来ているサポーターの人たちやお客さんが笑顔になる。それはお金では買えないようなものなんでね。そういったところも含めて、達成感というか、楽しさというか。サッカーをやっててよかったなって思いにはなりますね」
――では、いまプロとしてサッカーをやっている一番の理由というのは?
「いやあ、何ですかね。僕はずっとプロになりたかったんでね。必ずサッカーで人生を支えていく、サッカーあっての人生っていうことをずっと思っていた。勝負に対する気持ちというのは今でも、サッカーを始めた時と変わりません。いま、プロである自分にとって、何が支えになっているかっていったら、勝ちたいから。優勝したいから。絶対に一番になれるってずっと思いながらやっているからこそ、やり続けていると思う。自分の中では、いつかそれがなくなったら、サッカーやめる時期だと思っています」
――自分の人生を捧げていると。
「そうですね。自分の人生があってサッカーがあるわけじゃない。サッカーがあって自分の人生がある。自分の人生は基本的にサッカーを軸に動いているような感じです」
――だからこそ、試合中にあれだけの感情が出てくるわけですね。
「そうですねえ。だからこそ負けた試合の後はなかなか寝られなかったり、ずーっと考えたりするんですよね」
――今季は所属チームも名古屋グランパスに移籍して、こちらでも勝負のシーズンになりますね。
「浦和でずっとお世話になっていて、いろんな状況で必要とされなくなった。そこでホントにありがたく、名古屋からオファーを頂いてね。海外のことも考えてたんですけど、今年は非常に大切な年になると思っていた。(環境が)慣れているところ(国)でやりたかった。そして名古屋ならいい準備ができるんじゃないかってずっと思ってきて、今は多少バタバタしている状況かもしれないですけど(笑)、これが逆に自分に刺激を与えてくれている。常に自分をピリピリとさせてくれる状況にはなってるんで、そっちの方がサッカーに対する気持ちが沸いてくるんじゃないかって思っています。マイナスには考えてないですね」
――グランパスを絶対に優勝させてやる、という気持ちで来たわけですか。
「それはそうですよ。名古屋は一回も優勝してないというところも含めて、それだけの期待はされていると思う。それだけの選手も揃っている。ここで優勝できるって思ったからこそ来たので、このチームをもっともっと機能させられるようにしなきゃいけない。それも含めて自分の役割だと思っています」
――その責任を負うというのは、相当の覚悟がいると思うのですが。
「まあ、今まで自分の人生で簡単に進んできたことはひとつもないんでね。リーグ2節のホーム開幕戦でも負けてしまった。やっぱりそんな簡単にね、(結果は)手に入るものじゃない。今までも自分の人生は全部そうだったんです。必ず苦労したあとに、非常に大きな喜びを感じてこられた。その苦労を乗り越えられるからこそ、与えられているものだと思っていますから。いろんな困難がある中で、乗り越えてやってくしかないです」