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「バルセロナのようなサッカーは理想だけどできない」

北澤豪

――では、出場クラブについて伺います。一番の注目はなんと言ってもバルセロナだと思いますが。

「それは間違いないでしょう」

――では、そのバルセロナの魅力は?

「良すぎちゃって、なんて説明して良いのか分からないなぁ(笑)。まぁ、見たい選手はバルセロナを見ればある程度見られるってところはありますね。常に時代は動いているし、サッカーのトレンドも色々移り変わる中で、最先端のサッカーを見られますからね」

――そうですね。あれほど面白いサッカーをしているのはバルセロナだけですよね?

「そうそう。理想だけど、バルセロナのようなサッカーはできないですよ。それに出場するチームにとってもバルセロナとできるというのはモチベーションも大きいと思いますよ。逆に言うと、バルセロナがタイプの違う相手に対して、やり方をそう変えるわけではないと思うけど、(自分たちのサッカーを)やり切れるのかというのも見たいところですよね。特に去年は三つのタイトルを取っているわけだから、まさしく世界の王者。彼らがこの大会を取れのかというところも見どころです」

――大絶賛のバルセロナですが、では注目の選手は?

「イニエスタかな」

――その理由を教えてください。

「イブラヒモヴィッチ(ズラタン・イブラヒモヴィッチ)というひとつの新戦力が加わって、チームに新しい戦略が増えました。イブラヒモヴィッチはやっぱり大きくて早い。それは怪物的ですごいんだけど、それってちょっと当たり前っぽいというか…。本当は当たり前じゃないんですけどね。でもね、イニエスタなんかは、見た目は普通の感じだし、その辺りをウロウロしていても判らないと思うんです」

――確かにそうですね。

「でも、プレーを見ると全く違うし、ボール技術がすごい。たとえば足からボールが離れていかない持ち方だったり、ドリブルにしても、ドリブル突破と言うとメッシ(リオネル・メッシ)のほうが象徴っぽい感じですけど、イニエスタの場合は『スルスルスル』って抜けてしまう。でもそれは相当のものがないとできないと思うんです。そんなに恵まれた何かを持ってるわけじゃないし、スピードも、パワーもそれほどあるわけじゃない。なのに『それってどうやってやればできるの?』っていう不思議のほうが先に来ますね」

――では、南米代表エストゥディアンテスについて伺います。注目選手と言えば、やっぱりベロン(ファン・セバスティアン・ベロン)ですかね?

「そうでしょうね。ピークは確かに過ぎていると思うんですけど、そもそもピークっていうのは1回だけではないと思います。ヨーロッパで活躍しそのまま引退してしまう選手も多い中で、ベロンはアルゼンチンに戻ってきたし、本当にサッカーが好きなんだって感じますね。ああいう選手って自分が中心じゃなければやりきれないところもあるんだけど、ベロンの場合はやるところをやるし、自分を潰してチームメイトを活かす場面も多かったりするので、今回はかなり幅が広がった姿を見られる気がしますね」

――浦項スティーラーズはいかがでしょう?

「これまで韓国のサッカー界にはチームを研究して挑むというのがないように感じていましたが、浦項の場合はACLを見ても相手を良く研究していると感じます。(相手の)何が強くて弱いのかっていうことを、監督の力なのかもしれないけど、戦い方をよく考えてから試合に挑んでいると思います。彼らが採用している3トップは、組織も大事なんだけど、個人の能力を引き出せるっていうシステムでもある。日本に比べて個人の能力で言ったら、韓国のほうが若干上だと思うんです。だから中盤3人でも活動量は多いし、それに必要な正確な技術を持っています。4-3-3はヒディンク(フース・ヒディンク/現ロシア代表監督)の頃から採用していたシステムですが、やっぱり彼らに合うんだなと思いますね」

北澤豪

――確かにあれだけ運動量があると、何でもできそうな気がします。

「そのとおりだと思いますよ。何かで埋めていかないと絶対スペースができちゃうから大変なんだけど、やっぱり個人能力のある韓国だからあのスタイルで戦えるんだなって思います」

――アフリカ代表は初出場のマゼンベ(コンゴ民主共和国)です。

「マゼンベはアフリカらしいチームですね。どの選手も能力は高い。チームとしての完成度はそれほど高くはないけど、びっくりするくらいの個人能力を持ったプレーの連続が見られることもあるので衝撃を受けます。その一方で『なんでそんなミスをするの? もっと落ち着けばいいじゃん』というような予想外なこともありますけど。今まで北アフリカのチームが出場してきて、ある程度どこか似てるというか、トレンドを持ったチームだったから予想できましたが、今回は『違うかも』と思ってます。例えるなら、1990年代に躍進したカメルーンのような衝撃があるかもしれない。コンゴのクラブが優勝するとは誰も予想できなかったと思いますよ」

――今大会も個性豊かなチームが揃ったということですね。では、大会のどんなところを楽しめば良いですか?

「サッカーの流れはすごく変わるし、去年そうだったから今年もそうかって言うと、そんなことはありません。だからこそ、バルセロナも3つのタイトルを取りながらもイブラヒモヴィッチを獲得し、より何か進化をさせようとしたんだと思います。時代も急速に動く中、サッカーの流れもすごく変わります。そうやって違いを見ることは色んなことを知っておく上で必要なことだと思いますね。この大会は年に1回しかない。決勝戦だから見るというわけではなく、逆にレベルがそれほど高くはない(1回戦の)オークランド・シティ(ニュージーランド)から見ていくと面白いかもしれません。高いレベルのチームはそれほど大きく変わらないけど、そうではないチームは劇的に変わる可能性がありますからね。ワールドカップ予選を見ても結構混戦でしたし、オークランド・シティだって去年のような状況にはならないと思いますからね」

特集「TOYOTA プレゼンツ FIFAクラブワールドカップ UAE 2009」

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PROFILE

きたざわ・つよし
1968年8月10日生まれ、東京出身。修徳高校卒業後、本田技研工業サッカー部(現Honda FC)を経て、91年に読売クラブ(現東京ヴェルディ)へ移籍。三浦知良(現横浜FC)、ラモス瑠偉(現ビーチサッカー日本代表監督)らとともに黄金時代を築き、93、94年とJリーグ連覇を達成するなど数々のタイトルを獲得した。日本代表としても国際Aマッチ59試合に出場し3得点を記録している。2003年に現役引退後は、サッカー中継の解説をはじめ、日本サッカー協会特任理事兼国際委員、JICA(国際協力機構)オフィシャルサポーターをとおしてサッカーの更なる発展・普及に向けて活動を行っている。
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