@ぴあTOP > インタビュー >前編:福西崇史(サッカー解説者)
2010年南アフリカ・W杯出場を決めた日本代表は、10月にキリンチャレンジカップを戦う。対戦するのはスコットランドとトーゴ。日本代表は異なるタイプの強豪チームにどういった戦いを挑むのか? 前回のドイツ・W杯に日本代表戦士として出場した福西崇史氏に、キリンチャレンジカップの展望をお願いした。前編となる今回は、元日本代表として、代表戦の観戦術をレクチャーしてくれた。選手ならではの、新たな観戦法を提案する!
TEXT●原田大輔 Photo●佐野美樹
――2010年南アフリカ・W出場を決め、本大会まで1年を切りました。前回のドイツ・W杯に出場した福西さんから見て、これから本大会までの限られた期間で、日本代表が取り組むべきこととはどのような部分なのでしょうか?
「まず個々の技術を高めていくことですね。これは日本代表として活動するときの話だけではなく、日々の練習、Jリーグの試合で、どれだけ選手個々が突き詰めていけるか。個の能力というのは、急激に伸びるものじゃない。子どもではないので、急にヘディングが強くなったり、ドリブルがうまくなったりするわけじゃない。成長するには日々の積み重ねが大事なんです。選手たちが、いかに1日1日を大切にしていけるか。これがW杯本大会までの重要なポイントになります。ひとりひとりが高い意識を持たなければ、日本代表のスキルアップは望めません。日々の練習、Jリーグの試合、そしてそれを最大限に発揮する日本代表の試合で、緊張感と高い意識を持って選手個々がプレーできるか。これからは、それが重要になってくる。1日も無駄にはできない」
――確かに日本代表として集まれる時間は限られています。その中でチームとしてやれることとは?
「限られた練習と試合の中では、チームとしての連係、精度を高めていくことが優先事項になる。だからこそ、(先日の)オランダやガーナとの強化試合、そして今回のキリンチャレンジカップでスコットランド、トーゴといった強豪と対戦することは大きな意味を持っているんです」
――本大会へ向けてチームの強化を進めている日本代表を今後はどのように見ていけばよいでしょうか?
「本大会出場を決めた次のステップとしては、いかに本番を想定して戦っていけるかということになります。スコットランド、トーゴとの試合は、まさに来年の本大会を見据えた戦いなんです。強化試合やキリンチャレンジカップでいかにW杯本番を想定し、イメージしながら戦っていけるかが大事になる。観戦する人も、日本代表が本番でこういったタイプの相手と対戦する可能性があるということを考えながら、見てくれればと思います」
――実は選手はこういうプレーを見てもらいたいという、福西さんがオススメする観戦法はありますか?
「スタジアムはテレビとはまた違って、ボールがないところの動きを見ることができます。選手としては、そういうところでの貢献度って言ったらおかしいですけど、ボールがないところでの動きを見てもらいたいはず(笑)。この選手、ボールを持ってないところで、こんなに動いていたんだとか。僕もそういったところで貢献しているタイプの選手だったので、分かってもらえるとうれしいですよね(笑)。でも、スタジアムでは自分の好きなように観戦すればいいと思うんです。何もボールを持っている選手だけを見なきゃいけないっていうルールはないので。もし、個人的に応援している選手がいるなら、その選手だけをずっと見ているのもいいと思う」
――サッカーのルールや戦術などを知らなくてもスタジアムでは楽しめると?
「そうですね。好きな選手を応援しにスタジアムへ足を運ぶのもありだと思います。その選手が一生懸命走っている姿を追うのも楽しみの一つ。例えば、ウォーミングアップのとき、誰と誰が話していたから仲が良いんだとか、ハーフタイムに誰と誰が話しながらロッカールームに戻っていったなぁとか。それこそJリーグでは、いつも激しくぶつかり合っているのに、意外にこの2人は楽しそうに話しているなぁとか。好きな選手の応援をきっかけにして、サッカーに興味を持ってもらえたらうれしい。それに、せっかくスタジアムで観戦するなら、試合はもちろんだけど、テレビ画面には映らない部分も楽しんでもらいたい」
福西崇史インタビュー後編「チームとしての飛躍に期待してほしい」
特集「キリンチャレンジカップ2009」