『ラムのキャプテン』
ラマダン期間中にもかかわらず、コーラのびんを手にした男に話し掛けられた。「ハイ! マイネイム イズ キャプテン バーナー」中世のイスラム世界そのままのラム島に到着してすぐのことだ。キャプテンジョン、キャプテンジャマイカ、この島にはたくさんのキャプテンがいる。キャプテンスズキアグリは数人いた。彼らはダウ船の船長だと言うけど、いつもメインストリート付近をブラブラしている。女性ツーリストと遊ぶのが目的だ。
翌日、再びバーナーに会い、彼の家へついて行った。三家族が住むアパート式の建物で、屋上からはラムの街並と、その向こうに広がる海が見える。彼は私に特製ドリンクをくれ、自分は煙草に火をつけた。
翌々日も会った。その日誕生日だった私に音楽テープをくれた。
次の日もまた偶然会った。狭い島だ。また彼の家の屋上へ。彼は写真を大切にしていた。どれもこの島に来たツーリストが後で送ってくれたものらしいが、日付けは全て一、二年前。写っているのはキャプテンたちと女性ツーリストだけ。数ページの空白の後、アルバムの最後には、中年白人女性との写真が数枚。抱き合ってるのも、キスしてるのもある。「これは?」「ワイフだ」日付けは約三年前だった。
彼は十九歳で元ツーリストの三十六歳英国人女性と結婚。彼女は島と英国を数カ月ごとに行き来する生活。ある時、いきなり帰ってこなくなった。「彼女はクレイジーだ」彼は言う。
彼は他の写真の説明も始めた。ツーリストと結婚してオーストラリアに行ったキャプテン、フランスに行ったキャプテン、日本に行ったキャプテンもいた。中にはドラックでクレイジーになったキャプテンもいる。写真のバーナーは今よりずっと生き生きしてて若々しい。決定的に違うのは目。彼も多分ドラックをやっている。
「キャプテンたちには近づかないほうがいい」島内のホテル従業員にまで言われていた。けど、キャプテンたちって悪い奴? 島から出ない彼らにとって、ツーリストとの出合いが自分の世界を広げる手段なんじゃないかな、、、。ツーリストも同じように時を楽しむ、けど彼女らは帰りたくなったら、いつでも島を出られる。残されるのはキャプテンたち。バーナーの本名はシャリ ムンダラ、二十四歳。なんでドラックはじめたんだろう。
音楽好きらしいバーナーは、いつか日本の音楽テープを送ってくれ、って言ってた。
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