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押井守が語る 「戦場のヴァルキュリア」の世界観をめぐって
このゲームには僕らがやっていることと同じ意志を感じるね
たぶん、アニメはこういう形式にはかなわない
たぶん、アニメは こういう形式にはかなわない
「最近のアニメは『エヴァンゲリオン』がそのもっとも顕著な例だけど、本編以外の部分で大量の補完情報を必要とする。映画はもはや映画だけでは成立しない。今のアニメファンは感覚として物語を捉えるだけじゃなく、情報として理解したいという欲求がある。そうすると、僕らがやっている一本の映画を作るとかビデオを何本か作るという行為より、このゲームのような形式――たとえばメインストーリーで語られる部分とはべつに、新聞でサブストーリーを語ったり、各キャラクターの補完情報がテキストで閲覧できるとか――の方が扱える情報量が桁違い。映像と音響のクオリティや暗い映画館で同時体験する良さという点では、まだ僕らの方に優位性はあるけど、それ以外のことで言うと、たぶん、アニメはこういう形式にはかなわない。僕はアニメーションって、一本の映画で見たいものじゃなく、本当は、こういう形式で見たいものなんじゃないかっていうのはかねがね思っていた」
 押井氏がパソコンゲーム初期の頃からRPGフリークだったのは有名な話。それが次第にRPGから離れていったきっかけのひとつはゲームの難易度の低下にあったという。
アクションゲームのようなダイレクトな操作感とシミュレーションのもつ戦略性が融合し、新感覚でプレイができる。キャラクターには膨大な背景となるデータが蓄積されている。
「端的に言えばRPGの歴史って言うのはぬるくなっていく歴史だった。僕はオーバーキルなゲームが好き。初期の『ウィザードリー』とかはロストはロストで本当に死ぬ。それをかわす方法は唯一リセットだけ。そうすることで、リセットという行為がひとつのドラマとして成立する。それを題材にして作ったのが『アヴァロン』という映画。ゲームというのは映画と違って、苦労することでキャラに対する感情移入も成立する。このゲームも最近のゲームには珍しく、キャラクターの“死”というものをかなりシビアに設定している。頭部を撃たれたら一発で相当なダメージを喰らうとか、怪我をした仲間を助けるために別の仲間が運ばなければならないとか。そういう意味で今どき硬派なゲームで好感が持てる。ただ、僕だったらやっぱり、一発撃たれたら即死っていう超タイトなゲームにする(笑)。そんなもの誰もやりたくないとは思うけど、可能性として売れなくてもやっちゃうことに未来への投機がある、というのが僕のテーマだから」
 押井氏の眼から見て、『戦場のヴァルキュリア』にはアニメーションの歴史の中で淘汰されてきた要素がきわめて洗練されたカタチで結実しているという。
「舞台が架空のヨーロッパという設定もそうだけど、ヴァルキュリアという特殊能力を持った少女の存在もアニメーションの歴史の成果物を見事に取り入れている。戦車をロボットに置き換えたら、まさに王道的アニメの世界。僕個人の感想として言えば、映画の『ナウシカ』じゃなくマンガの『ナウシカ』に近い印象を持った。これを映画にしたいっていう人間が出てきてもおかしくない。普通で考えれば本末転倒だけど、今はあり得るよね。映画にすることで情感の部分で濃密な体験を付加することは可能だから。今のところ映画のアドバンテージはそこくらいしかない。もちろん、僕らはそこで負けるわけにはいかないけどね(笑)」
「アニメーションって、本当はこのゲームのような形で見たい。マンガの『ナウシカ』に近い印象を持ちましたね」
『戦場のヴァルキュリア』
征暦1930年代、架空のヨーロッパ大陸。国家の興亡、戦友たちとの友情、そして、愛。
戦争の中で描かれる人間ドラマ。必見のアクション要素を盛り込んだ新感覚シミュレーションRPG。
セガが満を持して放つ、壮大なオリジナル・タイトル。
4月24日発売 7,980円(通常版)9,980円(リミテッドボックス)
『戦場のヴァルキュリア』の公式サイトはこちら
SEGAの公式サイトはこちら
PROFILE
おしい まもる Mamoru Oshii
1951年生まれ。テレビ作品の演出を経て、1983年『うる星やつら オンリー・ユー』で劇場アニメーションを初監督。
2作目の『ビューティフル・ドリーマー』は熱狂をもって迎えられる。以降に『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、『イノセンス』などがある。新作は8月2日(土)より公開の『スカイ・クロラ』。
このゲームには僕らがやっていることと同じ意志を感じるね たぶん、アニメはこういう形式にはかなわない
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