――代表の活躍と言えば、3月26日に行なわれたヨルダン戦でのPKはゴールキーパーに阻まれはしましたが、決めている方が多いと思います。プレッシャーのかかる場面でも動じずに決める、強い気持ちというのはどうやって培われたのですか?
「強い気持ちと言うか、練習通り蹴ればいいって思うだけです。練習はお客さんが入っていないけど、なんのために練習するのかっていったら決めるために練習するわけで。練習でうまくいったことを試合で出すためには、練習と同じ感覚だったり、メンタルでやれればいいと思う。人によっては緊張したり、プレッシャーを感じることもあるでしょうけど、それはその人の性格なので緊張してもいいと思いますし、プレッシャーも感じていいと思います。PK以外もそうですけど、僕自身は普段やっていることを出したいという気持ちだけなので。あのPKの場面もただ決めたいっていう思いで自信を持って蹴ったので、それで外したっていうのはしょうがないですし、これだけPKを蹴っていたら外すことも必ずある。ただ、次また蹴る可能性もあるので、その時はしっかり決めなきゃいけないっていう思いしかないです」
――遠藤選手の切り替えの早さ、ポジティブなメンタルはもともとの性格なのですか?
「もともと持っていたものもあるとは思いますけど、経験の積み重ねでそうなった部分もあると思います。ただ、自分では意識していないところなので、うまく説明はできないですけど……。そもそも、クヨクヨしてもいいことないですし、ミスを引きずってもその映像が自分の頭の中にあるだけなので。反省は試合が終わったあとにすればいいので、ピッチ上にいる限りは常にいいことをイメージしながら、その状況をいかに打開していくかっていうことしか考えていないので、過ぎ去った時間はピッチの上では忘れています」
――それでも、へこんだり、心が揺れることはないですか?
「ないっすよ。へこんで得することは何もないと思いますし。プロである以上はミスを慰められても評価が上がるわけじゃないので、それなら自分の力で打開していくしかない。それしか考えてないですね」
――もし、一般の人が遠藤選手のようになろうと思ったら、経験を積み重ねるしかないのでしょうか?
「本当に緊張感のある中で仕事をしているか、していないのかの差だと思うので。例えば、毎回何十億も動くビジネスを任されているのであれば、多少のミスとか気にはするでしょうけど、そのビジネスを成功させるためには何をしなきゃいけないかっていうことになると思う。いかに自分が背負っているものが大きいか、大きくないかなどで変わってくると思います」
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――背負っているものの大きさですか。代表として日の丸を背負っている遠藤選手ですが、10年後はどうなっていたいですか?
「普通に健康であればいいです。サッカーをしているかしていないか分からないですし、サッカーをやっている期間よりもやっていない期間の方がこれから遥かに長くなっていくと思うので。健康であればそれでいいっすね。楽しくやっているとは思います」
――カズ(三浦知良)さんは46歳のいまでも現役ですが、ああいう風には……。
「ならないっすよ(笑)。可能性がゼロとは言い切れないですけど、ならないでしょうね。カズさんはカズさんで尊敬できますし、あの年齢になっても向上心を持ってやるっていうのはなかなかできないですし、過去にもいないですからね。すごいなと思います。自分自身は強くなりたいとか、うまくなりたいって思っている間はまだプレーしたいなと思っているので、もちろん受け入れ先がなければ終わりですけど、そういう気持ちがある限りはプレーしているんじゃないかなと思います。自分の気持ちが途切れない限りは」
――代表に関しても呼ばれ続ける限り……という意識ですよね?
「そうですね。自分から代表を引退したいとは全く思わないですし、代表が一番注目されますし、レベルが高い試合が続くので。呼んでもらえるのであれば、何歳になっても行きたいなと思っています」
――まだまだJ2リーグ戦は始まったばかりですし、6月にはW杯最終予選・コンフェデレーションズカップが待っています。最後にメッセージをお願いします。
「チームはようやくって言ったら変ですけど、ケンタさん(長谷川監督)の考えているサッカーといままで自分たちが持っていたものがうまく絡み合うようになりました。やっぱり一番の目標は1年でJ1に戻ること。今年いい結果を出してJ1へ戻るっていうのが大事なことなので。それを達成しつつチームの完成度を高めていきたいなと思います。代表の方も次のオーストラリア戦でしっかりW杯出場を決めたいと思いますし、その先にコンフェデ杯だったり色んな試合があるので、代表の方もより成長していいチームを作っていきたいなと思います」
――勝てばワールドカップ出場が決まるオーストラリア戦は、ホームゲームになります。大一番、さらにホームということもあって戦いづらさとかはありませんか?
「オーストラリアの方が窮地に立たされていますし、向こうも勝ち点3が欲しいと思っているでしょうから、今回に関してはそんなにやりづらいっていうのはないのかなとは思います。ただ、どうしても点を獲るところをみんな観たいと思うので、それに応えるためにリスクを冒しすぎて前に行くっていうのが一番危険なことだと思う。それはみんな十分分かっていると思うので、そうならないように気をつけなきゃいけないと思います。日本でW杯出場が決まることを誰もが望んでいると思いますし、僕らも1試合でも早く決めたいなっていう思いもあるので。いい準備をして、いい結果で決められれば一番いいなと思います」
Text●金子裕希 Photo●長谷波ロビン
えんどう・やすひと 1980年、鹿児島県生まれ。ポジションMF。1998年、横浜フリューゲルスに入団しプロとしてのキャリアをスタートさせるが、クラブ消滅により1999年に京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)に移籍。2001年にガンバ大阪へ。類まれな戦術眼と高い技術でチームの主軸として活躍し、数々のタイトル獲得に貢献。2003年からJリーグベストイレブンに10年連続で選出される。今シーズンはプロ生活初のキャプテンに就任した。2002年11月にA代表デビュー。2006年ドイツワールドカップではフィールドプレイヤーで唯一出場なしの憂き目にあうが、以降、“日本の心臓”と称されるまでに。昨年10月には日本代表Aマッチ最多出場記録を更新した。
ガンバ大阪 J2リーグ戦ホームゲーム
4月28日(日)16:00 vsガイナーレ鳥取
5月3日(金・祝)19:00 vsFC岐阜
5月19日(日)16:00 vsザスパクサツ群馬
6月1日(土)16:00 vs栃木SC
6月22日(土)18:00 vsファジアーノ岡山
6月29日(土)19:00 vs徳島ヴォルティス
万博記念競技場
キリンチャレンジカップ2013
5月30日(木)19:20 日本代表vsブルガリア代表 豊田スタジアム