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――趣味での撮影は景色中心ですか?

「もともと景色ばかりを撮っていたんですが、写真集や写真展で人を写した写真に触れて、『この表情がいいな』と思うことも多くあって、最近は子どもや親子連れを撮ることにもチャレンジしています。初対面の人に声をかけて撮るのは難しいですけど」

――街で声をかけたとき、「玉木宏だ!」と逆に撮られたりしませんか?

「大丈夫そうな人に声をかけているので、今のところはないですね。もしかしたら、“撮るなよオーラ”を出しているのかもしれませんけど(笑)」

――今回、澤田さんという人を演じるにあたって特別になにか準備をしていることはありますか?

「今のところは現時点での脚本を読んだり、文献や資料を読んでいるくらいですね。実在の人物を演じるときはいつもそうなんですが、可能であれば近しい方に直接お会いして話を聞いています。今回も番組の撮影で澤田さんの奥様にお話を伺えるので、それが楽しみです」

――近しい方のお話を聞いて、演じるときに直接使えることというのは、それほど多くはないですよね? それでも聞くのは本人の思いに触れることが何か役づくりの助けになるということでしょうか?

「それもあるし、最終的には自分の気持ちを追い込むという部分が大きいですね。ご遺族の方が見てくださっているんだから、ちゃんとやり遂げなくてはいけないという思いが芽生えるんです」

――役に挑む姿勢に影響があるということですね。では、この舞台に限らず、ふだんはどんなプロセスで役づくりをされるんですか?

「基本的には脚本を読んで“こんな人なのかな”と想像したりはしますが、実際に相手役の方々と芝居をやってみないとわからないですね。僕はいつも撮影に臨むとき、だいたい6割くらい自分のやりたいこと、やれると思っていることを用意していくんです。4割くらいを空けておかないと、監督やスタッフに言われたことにすぐ対応できなくなってしまうので。今回の舞台もそんな形で臨もうと思っています」

――映像は稽古期間がない分、自分でつくりあげる部分が大きいというわけではないんですね。

「やっぱり相手の方の出方もありますし、演出によっても印象は全く変わってくる。それはひとりでは想像しきれない部分なんです。たとえば最近まで撮影していた『結婚しない』というドラマでは、役の情けない性格を強調するために下からのアングルが多い。上からだと上目使いで強い印象になってしまうので。そんなアングルによっても演技は変わってくるんです」

――それは現場で対応していくわけですね。

「そうです。演出家の方に言われたことに瞬時に対応するというのは、もしかしたら舞台で活かせる部分かもしれないですね」

――こうやってお話を伺っていると、初舞台に対する緊張や不安があまり感じられなくて、すごくタフな印象を受けます。それは映像で品を重ねてきた自信からくるんでしょうか?

「自信はね、あまりないです、ずっと。今までこれをやってきたから大丈夫、という思いもない。ただ、頭で考えるより体が覚えていたりするので、不安はそんなにないんです。いつも、新しいものに対しては新しい気持ちで取り組んでいければという思いです。

――舞台では、東京公演のほか大阪と地元の名古屋にも行かれますね。

「昔、『ウォーターボーイズ』の舞台挨拶で名古屋に行ったら、一番前の列が全員親戚だったんです。今回の舞台では、それだけは避けたいなと思っています(笑)」

――それはやりにくそうですね(笑)。新しいといえば、玉木さんは最近、次々と新たなチャレンジをされている印象を受けます。今回の舞台もそうですが、料理番組『アイアンシェフ』の主宰に就任されたのには驚きました。

「かつての人気番組である『料理の鉄人』が『アイアンシェフ』としてリメイクされると聞いて、鹿賀丈史さんがなさっていた主宰は誰がやるんだろう? と思っていたら声をかけていただいたんです。びっくりしましたが、リメイクでありつつも新たな番組としてやっていくという意気込みをスタッフの方から聞いて、ぜひやりたいと思いました。ライブっぽい空気に最初は戸惑いましたけど、だんだん楽しくなってきていますね。大晦日に生放送が控えているんです。長時間の生放送を進行するのは大きなチャレンジですが、きっとこの経験は舞台にも生きるんじゃないかなと思います」

――大きなチャレンジが続きますが、玉木さんは作品ごとに目標を設定するタイプですか?

「考えなくはないですが、あまり考えすぎても独りよがりになってしまう。基本的にはいつも今までのイメージを壊したいという思いを頭のどこかに持っている、くらいの感じです」

――大きいヒット作品に出ると、その印象を世間が引きずってしまうということがありますよね。

「それは最近感じますね。役で見られるというのはすごくうれしいことなんです。それを望んで一生懸命演じているわけですから。でも、その作品はいつか終わってしまう。もう別の作品をやっていてもたとえば街で『千秋先輩だ!』と声をかけられると、うれしい反面複雑な思いもあります。だからこそイメージを常に壊していかなくちゃならない。その繰り返しです。そういう意識をもってさえいれば、自然に変わっていくものだと信じています」

――俳優として、最終的に目指す方向性は?

「生涯現役というのが、美しい形だと僕は思っているんです。男の美学というか。定年のない仕事ですから、日々いろんな経験を重ねて、人としての年輪が自然に演技に表れるようになればいいなと思います」

――今回舞台で演じる澤田さんは、34歳の若さで亡くなっていますね。

「そうなんですよね。でも『安全への逃避』という写真は世に残っていまだにたくさんの人に知られていますが、僕も将来『この作品がよかったね』といっていただけるものを、一生をかけて少しでも残せたらなと思います」

スタイリスト:上野健太郎
ヘアメイク:渡部幸也(ELLA)

【衣裳協力】
NEPENTHES:03-3400-7227

Text●釣木文恵 Photo●源賀津己

PROFILE

たまき・ひろし 1980年、愛知県生まれ。高校卒業と同時に上京し、俳優としてデビュー。映画『ウォーターボーイズ』、朝の連続テレビ小説『こころ』などで広く知られるように。以降ドラマ、映画と幅広く活躍。映画『ROCKERS』をきっかけに音楽活動も行っている。主な近作に『聯合艦隊司令長官 山本五十六』『平清盛』『結婚しない』など。主宰をつとめる『アイアンシェフ』は12月31日に5時間45分の生放送が予定されている。2013年3月より初舞台にして初主演舞台『ホテル マジェスティック〜戦場カメラマン澤田教一 その人生と愛〜』が東京・大阪・名古屋で上演される。


TICKET

「ホテル マジェスティック 〜戦場カメラマン澤田教一 その人生と愛〜」
 東京・新国立劇場 中劇場
 3月7日(木) 〜 3月17日(日)
 大阪・森ノ宮ピロティホール
 3月20日(水・祝) 〜 3月24日(日)

公演・チケット情報





2012.12.21更新

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