――これほど忙しいのにも関わらず、単独ライブをやり続けるのはなぜなんでしょう?
大竹「俺ら、いつも何て言ってます?(笑)」
――「現役であり続けるためだ」とおっしゃってます。やはりそこに尽きるんでしょうか?
大竹「まぁ、本職ですからねぇ。あと、もはやこういう場でしかネタをやる機会がないんで。やるしかないっていうか、待ってるだけじゃ何も始まりませんからね」
三村「俺なんかは、何年も空いちゃうと、あのときみたいなツッコミできんのかな、とか不安になってきちゃうんですよ。まぁたぶんできるんでしょうけど、なんか恥ずかしくなっちゃったりもして」
――おふたりには、自分たちの笑いのセンスが古びてしまうんじゃないか、みたいな恐怖感ってあるんですか?
三村「正直ありますよ。だからライブをやめられないっていうのもあるかもしれませんね。あと、お客さんの前でトークする番組をやってるんですけど(テレビ朝日系『さまぁ〜ず×さまぁ〜ず』)、これもやめたくないですし。今から10代のファンをつけたいっていうとぜいたくですけど(笑)、それぐらいの意気込みでやってますから」
大竹「そうですねぇ。結局ね、好きなんですよ、お笑いが。ふたりとも。それがいちばん大きいですかね。ライブを続けてる理由は」
――逆に、年齢を重ねていくことで面白くなっていく部分もあるんでしょうね。
三村「あ〜、あると思いますよ」
大竹「それは見た目で言ったら、いい歳した奴が転んだほうが、若い奴が転ぶよりも面白いですから。20歳の芸人が転んでもそんなにですけど、50歳の出川(哲朗)さんが転んだら面白いですもんね、やっぱり(笑)。まぁ、心配されるっていうよけいな要素も入ってきちゃうんでしょうけど(笑)」
三村「だから俺らも、もうちょっと歳とったら、逆に、子供の役をやってみようかなって思ったりもしますね。きっと面白いと思うんですよ、気持ち悪くて(笑)」
――実際、おふたりの笑いの感覚は、年齢とともに変わってきていますか?
三村「うーん、客観的には見れないんですけど、俺に関して言えば、過去のライブは一切見たくないっていうぐらい、若いときの自分はダメですね。コントの内容自体は、けっこうちゃんとしてるはずなんですけども、自分の演技がね、『全然できてないわ』っていう。最近の2、3回ぐらいですかね、昔のライブの映像を見返せるようになったのって。……いや、まだ見れないかな(笑)」
大竹「それ、成長してるってことじゃないの(笑)?でも俺も、昔のライブは見れないですね。たとえば昔、『サラダで白飯食えねえよ』ってタイトルのライブをやったことがあるんですけど……」
三村「バカルディの頃ですね」
大竹「当時は、本気で言ってたんですよ、『サラダをおかずにして白飯食ってんだよ、うちのおふくろ。ありえねえだろ』とか。だけど、今の年齢になるとわかるんですよね、その気持ち」
三村「ハハハ。そうそう、『食おうと思えば食えるか』みたいな」
大竹「大人になるにつれて、いろんな経験をして、結果『サラダで白飯食える人もいるし、食えない人もいる』みたいな、なんか優しい感覚が身について(笑)。で、その感覚からは笑いって生まれにくいんですよ、やっぱり。引っかかりが何もなくなっちゃうから。だから、そういう人間的な丸みは、もしかしたら邪魔なのかもしれないです、お笑いにとっては。でも、その分、そこをわかった上での面白さみたいなものはあるのかなっていう」
三村「とりあえず、ネタを作るのが大変になってきてるのは確かですね。ツッコミどころをどんどん排除していっちゃうわけだから」
――そうですね、産みの苦しみは年々増していきますよね。
三村「いや本当、そうですよ。ネタ作りの会議でも、今日は8時間余裕があるから、いっぱい考えられるなって思ってても、結局、収穫ゼロ、みたいな日がけっこうありますからね」
大竹「ここ何年かは、ほぼそんな感じですね」
三村「で、手伝ってくれてる作家とか、みんなパソコン使ってるから、『なんかエロい画像ねえのか?』とか、ついそっちに意識がいっちゃうんですよ。そういう誘惑とも戦いつつ(笑)」
――ところで昨今、お笑い芸人の単独ライブという公演形態はちょっと減ってきているのかなという気もするんですが……。
大竹「あ、そうですか?」
三村「まぁ、テレビのネタ番組もちょっと少ないですしね。何年か前と比べると、ブームはちょっと落ち着いちゃったんですかね」
――今のお笑い界について、何か思うことはありますか? たとえば、今の若い芸人さんを見て思うこととか……。
三村「ネタ自体は、クオリティは下がってないと思うんですよね。ただ最近は、ネタだけで売れるのってなかなか難しいじゃないですか。ほかにいろんな武器を持たなきゃいけないから、なんか可哀想だなとは思いますよね」
大竹「ネタだけじゃ、テレビで使ってもらえないですもんね。頭がいいとか、歌が上手いとか、何かひとつ特徴を持ってないといけないから大変ですよね。その点、俺らはネタだけを武器に、出られたのでラッキーでしたね」
三村「それでも一時期、変な時代がありましたけどね。ヘコんだ時代が(笑)」
大竹「そういう意味ではけっこうしぶといんですよ、俺らも。まぁでも、そこをつないだのもライブだと思うんで」
――「ヘコんでいた時代」も、ライブだけは続けてきた。
大竹「ちゃんとお客さんが来てくれてましたから。それが自信になってましたよね」
三村「後輩から『どうしたら売れるんですか?』と聞かれることがあるんですけど、『とにかくネタやれよ』って言いますね。『文句はネタやってから言えよ』って」
――おふたりにとって、ライブはライフワークであり、自分たちの存在を証明する場なんですね。
三村「そうですね、今後、何年おきになるかわからないけど、『10』『11』『12』と続いていくんでしょうね。死なない限り(笑)」
――『さまぁ〜ずライブ』では毎回、「前回を越えること」を目標に掲げていますね。
大竹「そうなんですよ、25年目にして、過去いちばん面白いライブを目指します。期待していただきたいなと。あっ、あとひとつ(と今回公演のチラシを見て)ここに写っている人は、たぶん本編には出てこないんで」
三村「ハハハ。毎回そうなんですよね。チラシと本編、まったく関係ないっていう」
大竹「だから、そこは期待しないでください」
Text●泉 英一 Photo●源 賀津己
【プロフィール】
大竹一樹(おおたけ・かずき/写真左)、三村マサカズ(みむら・まさかず/写真右)。ともに1967年、東京都生まれ。1988年「バカルディ」としてデビュー。2000年、テレビ番組の企画で「さまぁ〜ず」に改名。現在、テレビ朝日系『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』、『さまぁ〜ず×さまぁ〜ず』、テレビ東京系『モヤモヤさまぁ〜ず2』、TBS系『リンカーン』などレギュラー番組多数。前回、2011年のライブの模様を収録した『さまぁ〜ずライブ8』(ポニーキャニオン)も好評発売中。
