TOP > 今週のこの人 > 椎名慶治

−−うわ。それはちょっとヤラしい(笑)。

「別にK-POPじゃなくても、日本人でもできるんだよって言いたい気持ちもちょっとあって、やってみました。だからこの曲はすごく新鮮な響きがあるし、もしかしたら“こういう椎名さんが好き”と言ってくれちゃう人もいるかもしれない」

−−ちょっとわき道にそれますけど、椎名さん、もともとそっち系なんですか。ソウルやブラックミュージックがルーツになっている?

「僕が高校の時に聴いてたのはマイケル・ジャクソンばっかりです。で、元相方の永谷喬夫がマイケル・ジャクソンを全然知らなくて、知り合って一緒に音楽を始めた時に僕がマイケル・ジャクソンのCDを全部貸したんですよ。逆に向こうはロック好きで、エアロスミスを貸してくれて、そこから僕はロックを好きになったんです。それまではマイケル・ジャクソンとか、日本人だったらICEがすごい好きで」

−−ああ〜。はい。

「もう亡くなっちゃいましたけど、宮内さんがすごい好きで、あのレスポールのカッティングが。それでICEを聴かせたら永谷も好きになって、お互いの共通項が日本人ではICEだったんですよ。二人組だからB’zっぽいとよく言われたんですけど、二人ともB’zは好きですけど、ルーツにあるのは打ち込みでギターだけが生で、ということをデビューするまではずっとやってたんですよ。まさにICEですね。で、デビューする時に武部聡志さんにアレンジしてもらって、全部生演奏でホーンがプカプカいってる曲をやったら、“生演奏でロックで元気ハツラツな二人組”になっちゃった(笑)」

−−あららら。

「それは二人で驚いてたんですよ。“そんなキャラで見られるの? やっぱりデビュー曲って怖いな”と思って、だから「I Love Youのうた」では“オレはどうやって見られたいんだ?”ということをすごく考えたんですよ」

−−ああ〜。

「だから生演奏じゃないんですよ。ギターとベースは生だけど、ドラムは打ち込みだし、いろんなデジタルの音がピコピコ鳴ってるし、その融合が好きなんですというところを出したくて、それで迷っちゃって。でもアレンジャーのオダクラユウという人間がすごい頑張ってくれたから、“椎名慶治はこれからこういうサウンドでやっていくよ”というものをうまく出してくれたんですね。意外と生っぽいけど実は生じゃないというところを」

−−なるほど。腑に落ちました。

「この中で言うと「お節介焼きの天使と悪魔と僕」「I Love Youのうた」「Giant Step」「byte×bite」が打ち込みですね。それ以外は生演奏が主ですけど、だから二つの顔があって、どっちもオレだと受け入れてもらえばいいなと思って、布石は打ってあるつもりなんですけどね。「I Love Youのうた」のカップリングに「Pussy Cat」という曲があって、それはもともとライブでは生演奏だったんですけど、それを壊してほしくて、AKIRAのアレンジでK-POPっぽいサウンドでやったんですよ。僕はそれがすごく好きで、もう1曲そういうのを入れたいなと思って作ったのが「byte×bite」です。全部つながってるんですよね」

−−歌詞についても聞きたいんですけど、去年『RABBIT-MAN』を出す時に「今は“頑張れ”と言う言葉を歌いたくない」という意味の発言をしてましたよね。それでも椎名さんの書く歌詞はすごく饒舌で情熱的で、こっちの背中を押してくれるような熱いものだと思うんですけど、今回の歌詞については自分でどんなふうに思ってますか。

「“椎名くんと言えば応援歌だよね”とか言われた時期もありましたけど、人に対して頑張れというのはもともと好きじゃなくて、でも自分に対して“僕だって頑張ってんだ”と言うのは全然かまわないんですよ。「I’m aサラリーマン」では“それなりに頑張ってるんです”って言ってるし、あと「年齢不showtime」にしても、年齢とか関係ないじゃんって歌っていて、“私なんかもうトシだから”なんてただの言い訳だから、“行こうよ次のステージへ”っていう曲だし。応援歌と言えばそうだと思うんですけど、ただ“頑張れ”と歌うのはいまだに好きじゃないんですよね。震災についてもそうだし、それについてわかったようなふりをして“頑張れ”なんて僕は言えないです。「I Love Youのうた」の“いつか離れ離れになる日が来て”というのは、一つには震災のことがあるわけですよ。でもそれを大々的に押し出してしまうと、震災ソングになるじゃないですか。それは売名行為だし、そういうことは絶対したくないんですよ。でも僕の頭の片隅には震災のことがずっとあって、亡くなった人にはもう会えないわけで、そういう時に普遍的なラブソングとして、ああいうメッセージが出てきたので。でもそれを感じた人がいて、シングルのオビに書いたんですよ、僕が知らないうちに。“僕が居なくても君は笑っていますか”という歌詞を使っていて、やっぱりそういうメッセージは身内にも伝わるんだなと思って、オレはあの歌詞を書いて良かったなと今も思うし、普通にラブソングと受け取ってもらってもかまわないし、隠しメッセージに気づいてもらってもいいし。だって、いつ離れ離れになるかわからないじゃないですか? だから僕も自分に何が起きてもいいように、覚悟を決めて生きていきたいと思ったら、気持ちがリセットされてさらに強くなれたと思うし、自分のために生きたいと思うようになったんですよね。人のために生きたいという気持ちがSURFACEの時は強くて、ファンがいるから歌ってるみたいな恩着せがましいところがあったんですけど、今はなくなっちゃいましたね。まず自分が自己満足しなくちゃ、自分が楽しまなきゃ駄目ですよね?って言ってソロが始まったので。すべて楽しんだ上で、“どうですかみなさん?”という、そこが変わりましたね」

−−いや。ほんと、頼もしいです。

「あの頃そこに気づいていれば、解散してなかったんでしょうけど。でもすごい反省したし、ファンに対しては解散という形ですごい裏切りをしてしまったけど、“オレはもう二度と裏切らないよ”ということを伝えたいです。ソロは解散できないし、僕は音楽をやめないから、それでもついてきてくれますか?という感じでやってきたら、おかげさまでついてきてくれる人がいて、そういう人たちのことはこれからも大事にしていきたいし、その人たちをベースに楽しませつつ、いかにグレーゾーンの人たちを呼び込めるか。『仮面ライダー』の歌も、『しろくまカフェ』の作詞も全部それで、最終的に自分に返って来るので、どんどん外仕事もやらせてくれと言ってるんですけど。今は抵抗なく何でもやっていい時期だと思ってるし、それは本当にみなさんに感謝してます」

−−そうやって縁がつながっていく、と。

「『I&keyEN』(あいえんきえん)というタイトルをつけた理由もそこにあります。これ、7曲入りでジャケットに7人の僕がいるんですよ。それぞれ見てる方向が違うんですけど、そういうふうに音楽が広がっていけばいいなと思ってます。僕が“I”で、聴いてくれる人が“key”で、その二つがうまく“EN”(縁)としてつながっていけばいいなということで、『I&keyEN』にしたんですけど。それがきれいごとにならずに、“私もそう思う”と言ってくれれば本当の“あいえんきえん”になるし、そうなってくれればいいなと思います。このタイトルは自分でもすごくよくできてると思いますよ。すごく満足してるので、これが自己満足だけじゃなくて、聴いてくれた人が気に入ってくれればいいなと思います」

Text●宮本英夫 Photo●吉田圭子

PROFILE

1975年12月30日生まれ。 2人組ユニットSURFACEのボーカリストとして’98年5月にシングル『それじゃあバイバイ』でデビュー。’10年6月に惜しまれつつも解散を発表。そして同年11月にミニアルバム『I』でソロデビューを果たした。
オフィシャルホームページ


TICKET

『椎名慶治 LIVE #2「I & key EN」』
⇒6月22日(金)愛知・名古屋ボトムライン
⇒6月23日(土)大阪・梅田CLUB QUATTRO
⇒6月25日(月)福岡・DRUM Be-1
⇒6月30日(土)東京・赤坂BLITZ
⇒7月05日(木)宮城・仙台darwin

公演・チケット情報



RELEASE

ミニアルバム
『I&key EN』
4月11日(水)リリース
1890円
BEATSISTA
BSCL-0006
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INFORMATION

今ツアーの「メモカ」実施します!
(6/22〜受付開始予定)

メモカぴあ



2012.04.03更新

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