TOP > 今週のこの人 > OGRE YOU ASSHOLE
――メロディとか展開だけじゃない音楽もある、音の質感で聴かせるポップスもある、というような価値観を提示している、ということですか?
「まあ、そうですね。あ、でも、ポップスとは言えないかも…(笑)」
――ポップスと言われたらそれは違うと?
「う〜ん、自分としてはポップスを作ってるという意識はないんですよね」
――8曲40分程度のカジュアルさ、1曲が短くてコンパクトという点においては、ポップ・ミュージックをある側面で継承している印象があるのですが…。
「ああ、なるほど。今の自分が好きな音楽が一般的なポップとは違うような感じがするのでピンとこないですけど、そうなのかもしれないですね。バンドの資質としてそこまでポップな感じもないから自分たちではわからないですけどね。ただ、昨日ユーストで僕がかけたような音楽…ノイ!とかをポップと言うのであれば僕らの音楽もポップなのかもしれないですね。僕としては自分の好きな音楽を作ってるだけなんですけど、今の日本のシーンの中で自分たちの音楽はどうなのかな?って思ったりはしますね」
出戸学(vo&g)
――なるほど。そういう点だと例えば『100年後』ってタイトルも示唆的な感じがしますね。今の時代に何かを問うている感じもするし、ある種の終末感もある。
「そうです、終末感…。『100年後』っていうタイトルは最初はなかったんですけど、“何かが終わって行く感じ”というのをテーマとして考えていて。もともとそういう終末感に対する安心感があったんですよね。無限にものごとが進んで行くってちょっと怖いというか。終わりがある方が安心感もあるし、美しくもあると思えるんです。で、そういう作品があったら自分でも聴きたいなと思ったし、それを感じてる自分もいるから、じゃあ、作ろうかってことになって。昔の人も無限に続いていくことに対する恐れを感じていたと思うんですよ。海の水平線を見ても、どこまで海が続いていくのかわからなかっただろうし。地球は丸いってことがわかった時、みんな安心したと思うんですけど、今はそれと同じで僕には宇宙ってすごく怖いんです。いつか終わるっていう方が僕には安心できるんですよね」
――終わりがない方がファンタジーを感じるという人、多いですよね。
「そうですね。だから僕はリアリストなのかもしれないです(笑)。宇宙は丸であってほしいと思うし。銀河系がどこまで続くのか、考えただけで怖いですよ(笑)」
――でも、それに対して、OGREの曲はいつまで続くかわからない反復系のビートが中心で、起承転結や着地点がハッキリしないものが多いですよね。
「(笑)。今回のアルバムの曲はフェイド・アウトが多いですしね。着地点、確かに作ってる時点でもないんですよ。でも、終わった後に物事ってそこから続く感じがあるじゃないですか。そこから新たな道が出て来るっていうか。着地しない感じっていうのは、着地した時の安心感がわかってるからできることなのかもしれないです。始まって終わっていくことのひとつの流れみたいなものを描きたかったというか。だから、今回のタイトルも、今生きてる人たちのほとんどが100年後にはもういないわけですよね。でも、それは人類滅亡とかそういうのではなく、未来のことを歌ってるわけでもなく、ひとつのことが始まって終わる単位を100年というタームで綴ったって感じなんですよね。あくまで単位ですね」
――なるほど。だから、アルバムの中には泡沫的な美しさ、シニカルなユーモアなどがこめられているわけですね。
「そうですね。僕の中でポジティブで明るいっていうのは、追いつめられてどうしようもなくなって笑ってしまうような感じなんです(笑)。追いつめられて気が狂って笑っちゃうような感じというか。アルバムの最後の『泡になって』という曲では、僕にはなにもない、というような明るい雰囲気を醸し出してるわけですけど、それはやっぱり追いつめられておかしくなって笑ってしまった、というような曲なんですよね。笑うしかないというか」
――でも、そういう追いつめられて笑ってしまうような感覚をあくまでミニマルなダンス・ミュージックに仕立ててあるのが面白いですね。
「ダンス・ミュージックであることは割と意識していますね。ギター・ロック的な音楽がよく持ってる、プレイヤーとしてのエゴというのが僕も含めてメンバーみんなどんどんなくなってきているんですよ。僕自身、曲が求めているならギターを弾かなくてもいいやって思えるし、それで曲が面白くなればいいって思えますね。そのくらい、今僕らがやっていることって開かれてるとは思うんです。その分、どこにも属していない感じにはなっているかと思いますね」
出戸学(vo&g)
――実際、そういう意識が強くある?
「ありますね。今の音楽シーン自体、どこにいくのかわからない感じっていうのがあると思うし。ただ、少しでも気を抜くと、大きくとりあげてもらった雑誌の影響だとか“●●効果で売れた”みたいに言われるので(笑)、そう言われないように常に自覚していたいなとは思っていますね。常に何かにトライしていたいとか…」
――そのために具体的に挑戦したことなど、今回のアルバム作りにおいてありますか?
「例えば『黒い窓』とか、馬渕が弾いたギターに対する石原さんと中村さんのアドバイスがすごかったんですね。“ジャン!”という最初の一音の音の質感で続きがどんどん変わっていくものだから、そういうところを強く意識して演奏してください、と言われていて。ジャズの即興みたいな感覚だと思うんですよ。そうやって曲を仕上げていったのは初めてでしたね。今後もそうやって色んなプロセスで曲を作ったりしていきたいと思っています。例えば、ドラムの勝浦(隆嗣)さんがアルバム1曲目からいきなり歌う、みたいなこともやっていきたいです(笑)」
Text●岡村詩野 Photo●吉田圭子
2001年に結成。メンバーは、出戸学(vo&g)、馬渕啓(g)、勝浦隆嗣(ds)。バンド名は、モデスト・マウスのメンバー、エリック・ジュディがOGRE YOU ASSHOLEの元メンバーである西の腕へ「OGRE YOU ASSHOLE」(この言葉は映画『ナーズの復讐』に出てくる台詞でもある)といたずら書きをしたことに由来。2011年、ベースの平出の規人が脱退し現在の編成に。2009年3月シングル『ピンホール』よりVAPに移籍。これまでに4枚のオリジナル・アルバムをリリース。今作が、5枚目のアルバムとなる。2008年にリリースした『しらないあいずしらせる子』から現在に至るまで、プロデューサーの石原洋とエンジニアの中村宗一郎がレコーディングを手がけている。
オフィシャルホームページ
「100年後」リリースツアー
10月13日(土) 松本ALECX(ワンマン)
10月19日(金) 新代田FEVER(ゲスト有)
10月21日(日) 横浜F.A.D(ゲスト有)
10月27日(土) 札幌cube garden(ゲスト有)
11月03日(土) 新潟CLUB RIVERST(ゲスト有)
11月04日(日) 仙台MA.CA.NA(ゲスト有)
11月09日(金) 福岡DRUM Be-1(ゲスト有)
11月10日(土) 広島ナミキジャンクション(ゲスト有)
11月17日(土) 名古屋CLUB QUATTRO(ゲスト有)
11月18日(日) 大阪BIGCAT(ゲスト有)
11月24日(土) 東京 SHIBUYA-AX(ワンマン)
「AOMORI ROCK FESTIVAL’12〜夏の魔物〜」
9月22日(土) 青森県東津軽郡平内町夜越山スキー場
「石橋英子『imitation of life』発売記念ツアー」
9月30日(日) 名古屋CLUB UPSET