TOP > 今週のこの人 > OGRE YOU ASSHOLE

OGRE YOU ASSHOLEの進化のスピードが恐ろしいほど早い。彼らの作品を最初に聴いたのは7年ほど前のことだが、バンド名の由来にも現れている当時のUSインディー然とした趣味は今やすっかり影を潜め…というより、どんどん指向が裾野が広がっており、今やミニマルなビートを軸にストイックに展開されるサイケデリックな音作りを聴かせるようなバンドに成長した。その間、出身地である長野に拠点を戻したし、メンバーが脱退し3人組になったりもしたが、リスナーとしても作り手としても広く音楽に対峙するようになったことで、彼らの音楽は彼らが想定している以上の可能性を見せ始めている。8曲40分というコンパクトながらも壮大な空間的広がりを持つニュー・アルバム『100年後』は、プロデューサーの石原洋、エンジニアの中村宗一郎という彼らをずっと支えている鉄壁コンビによってサポートされて完成された大傑作だ。東京に出てきても、自由な時間があれば中古レコード屋に行くことを欠かさないというヴィニール・ジャンキーの出戸学に、そうした近年のバンドの変化と新作についてたずねてみた。

――昨晩都内某所から中継していたUstream(出戸学が好きなアナログ・レコードをかけて解説するという企画)を見ていて、単純に出戸くんの音楽指向というか趣味がずいぶん変わったなあと思っていました。デビューした頃はアメリカのインディー好きという印象でしたが、昨夜はフリートウッド・マックからノイ!まで…といった選曲でしたね。

「やっぱり聴く音楽がかなり変わりましたね。初期の頃とかはUSインディーと呼ばれる音楽が好きだったんですけど、60年代や70年代の音楽をどんどん聴くようになったんです。そういう昔の音楽は自分の両親とかが聴いていたものだというイメージがあって、自分も好きになっていいのか?ってところがあったんですよね。でも、結局グルッと回ってそこに辿り着きました。今はどんどん他にも聴くようになって広がりが出てきましたね」

出戸学(vo&g)

出戸学(vo&g)

――親世代が聴いているものだという事実に対する反抗があったと。

「反抗…とまではいかないですけど、“いい音楽だな”って感じてはいたし、体に染み付いてもいたんですけど、何かちょっと自分のものじゃないって感じが最初はあったんですよね。でも、時間が経って距離を置いてみたら、やっぱり自分のものなんだって思えるようになったんです。実際、好きで聴いていたUSインディーのバンドのルーツを辿っていくと、60年代や70年代の音楽に行き着いてしまって。現在進行形のUSインディーばかり聴いていると狭い感じがするというか、窮屈な感じがしてきたんですよね。ちょうど、曲を作っていてもその中だけで表現し切れなくなってきていて、自分でも曲作りがつまらなくなってきていた時期だったんです。そういう時だったから、余計に色々な音楽を聴きたくなってきていたんだと思います。時期でいうと、『フォグランプ』('09年リリースの3rdアルバム)くらいの時ですかね…実際に曲を作るのが大変な感じでした。色々聴き始めて、こういう感じの曲を作れたらいいなと思っても、その時の僕らのカラーにまだ合わないし、技術面でもどうやってその音を出せばいいかわからない…という状態で…」

――リスナーとして、USインディーものから視野が広がるきっかけとなった作品やアーティストなどは何でしたか?

「特にコレというのはないんですけど、プロデューサーの石原(洋)さんや、エンジニアの中村(宗一郎)さんに“これいいよ”“聴いた方がいいよ”って勧められたものを聴いているうちにどんどん増えていって…(笑)。ロックだけじゃなくてジャズとかラウンジっぽいものとかもどんどん。そうなるとこっちの耳も肥えてきて。石原さんは今でも月に一度くらいミックスCDをくれるんですよ。そういうのが楽しみで参考になったりするんですよね。こないだもくれました。“End Of Summer”ってタイトルの(笑)。そういう中でも、最も印象に残ったのがアレックス・チルトンのソロとかシティ・ボーイとか…。しかも、そういうののほとんどがアナログ・レコードなんですね。だから、自然と中古レコード屋さんに行くことが増えました。CDで聴いていて“音悪いな”と感じていた作品も、レコードで聴き直してみると“こんなに良かったんだ!”って驚くこともありましたね」

――レコードで音楽を曲の良さ単位だけじゃなく、音の良さ、音の作りや質感などでも楽しめるようになったということですね。

「そうですね。レコードで聴くというのがひとつの基準みたいになってきたから、今回の僕らのアルバムも8曲入りなんですけど、5曲目がB面の1曲目というような感覚で作っていました。曲順も意識すると変わってくるんですよね。だから…そうですね…本当に『フォグランプ』を出した後、3年くらい前から、耳も意識も変わっていったと思います」

――長野に帰ったのもちょうどその頃?

「そうですね。長野に戻ったのは『フォグランプ』を出した翌年でしたから。ただ、まあ、長野に戻ったのは本当にたまたまだったんです。自分たちのスタジオがあって、そこで自由に好きな時に音を出せるってことがやっぱり魅力的だったからそれで戻ったんですけど、ちょうどその頃から石原さんや中村さんからそういう感じで音楽を勧められることが多くなったという感じで…まあ、同じくらいの時期に色んなことが重なって変わったっていうのはありますね」

――バンドが所有しているその長野のスタジオは具体的にはどういうところに音の特徴があるのですか?

「やっぱり機材とかにこだわりがあって。レコーディングの時に中村さんに“こういうエフェクターを使ってみたらどう?”って勧めてもらって使ったら本当に質感が違う!というようなものを同じように揃えたりしました。あと、長野で音を出せるようにした理由のひとつとして、例えばテープエコーをウチのバンドの馬渕(啓)は3台くらい使ってるんですけど、あれ、結構重くて、それを東京まで運ぶのが大変なんですね。デジタルのディレイで代用すればいいだけなんですけど、でも、それをしちゃうと音の質感が出ない。だから、長野なら置きっぱなしにして音を出せるってことでスタジオの環境を整えていったんです」

――そうやって聴く音楽が変わり、環境も変えることによって、曲作りはどのように変化しましたか?

「前はスタジオでみんなで何となくセッションしながらそれを録音しておいて、後からいいなと思えた部分を曲にしていく、みたいな感じだったんですけど、今は僕と馬渕が各々曲を作ってきてバンド・アレンジしてもっと解体して、レコーディングで再構築するような感じになりましたね。前の『homely』くらいからアレンジをレコーディング・スタジオでするようになりました」

――確かにリズム・パターンが大幅に変わりましたよね。ディスコ・ソウル調に広がっていく感覚の曲などは、もはやロックというよりブラック・ミュージックからの影響の方が圧倒的に強い印象です。

「自分で作る曲はベース・ラインもドラムでのリズムも今は全部自分で作ってきているんです。それをレコーディング・スタジオで曲によっては全くパターンを変えたりしてますけど、頭の中でまずはイメージしているリズムとかを先に決めてしまうからなのかもしれないですね。あと、今は踊れる音楽というのをある程度意識していますね」

――でも、踊れるけど決してアッパーではない。どちらかと言うとミニマルで淡々とした仕上がりになっています。それこそ、クラウト・ロックからの影響のような感じですが、こうした反復系ビートが今の自分たちにリアルなのはどういうところに惹かれているからなのでしょうか?

「今、自分たちでPVを録ってるんですけど、糸ノコを使ってるんですね。糸ノコが振動するのを見ているんですけど、その振動を何分でも見られる自分がいて(笑)。ただの反復運動を見ているだけでもこんなに面白いんだ!って気づくんですよね。例えば、そこに怖さとかエロスを感じたりするんです。無表情なものが、繰り返されているうちに、急に変わる瞬間というのがあって。音楽も同じで、そういうところに魅力を感じますね」

出戸学(vo&g)

出戸学(vo&g)

――そこに想像力がないと得られない感覚ですね。想像力をかきたてられる隙間みたいなものというのか…。

「そうですね。隙間みたいなものがあると、そうやって想像できることができると思うんですよ。実際、僕らが作ってきたものも、徐々にそういう隙間のある作品が増えていると思うんですよね。糸ノコの振動でも、そう見えてくる何か…そうこちらに思わせる隙間がその反復の中にあるから、怖さとかエロスを感じるんじゃないかと思うんです。そういった意味で、僕らの音楽も反復していて無表情に見えるけど、急に表情が変わって聴こえてくる可能性もありますよね。曲展開とかも無意味にはさせなくないし、今回は音数も『homely』よりさらに少ないですから、1音1音の音色でどれだけ聴かせられるかを考えました。ちょっと前までだったら、隙間があったら音で埋めたくなっていたんですけど、今は音の質感が良ければどれだけでも聴けるというような感覚なんですね。実際、今回はそのくらいいい音の質感で録音できたと思いましたね」

Text●岡村詩野 Photo●吉田圭子

PROFILE

2001年に結成。メンバーは、出戸学(vo&g)、馬渕啓(g)、勝浦隆嗣(ds)。バンド名は、モデスト・マウスのメンバー、エリック・ジュディがOGRE YOU ASSHOLEの元メンバーである西の腕へ「OGRE YOU ASSHOLE」(この言葉は映画『ナーズの復讐』に出てくる台詞でもある)といたずら書きをしたことに由来。2011年、ベースの平出の規人が脱退し現在の編成に。2009年3月シングル『ピンホール』よりVAPに移籍。これまでに4枚のオリジナル・アルバムをリリース。今作が、5枚目のアルバムとなる。2008年にリリースした『しらないあいずしらせる子』から現在に至るまで、プロデューサーの石原洋とエンジニアの中村宗一郎がレコーディングを手がけている。


オフィシャルホームページ


TICKET

「100年後」リリースツアー
10月13日(土) 松本ALECX(ワンマン)
10月19日(金) 新代田FEVER(ゲスト有)
10月21日(日) 横浜F.A.D(ゲスト有)
10月27日(土) 札幌cube garden(ゲスト有)
11月03日(土) 新潟CLUB RIVERST(ゲスト有)
11月04日(日) 仙台MA.CA.NA(ゲスト有)
11月09日(金) 福岡DRUM Be-1(ゲスト有)
11月10日(土) 広島ナミキジャンクション(ゲスト有)
11月17日(土) 名古屋CLUB QUATTRO(ゲスト有)
11月18日(日) 大阪BIGCAT(ゲスト有)
11月24日(土) 東京 SHIBUYA-AX(ワンマン)

「AOMORI ROCK FESTIVAL’12〜夏の魔物〜」
9月22日(土) 青森県東津軽郡平内町夜越山スキー場
「石橋英子『imitation of life』発売記念ツアー」
9月30日(日) 名古屋CLUB UPSET

公演・チケット情報



RELEASE

5th Album
『100年後』
9月19日(水)リリース
2500円
VAP
VACC-81747
Amazonでのご購入はこちら


2012.09.18更新

今週のこの人 ラインアップ

  • 山田和樹
    小澤征爾も実力を認める注目の指揮者。クラシック音楽界が熱い視線を注ぐホープの“今”に迫る!
  • さまぁ〜ず
    2年ぶり、9回目の 『さまぁ〜ずライブ』開催。 稀代のコント芸人が、ライブにこだわり続けるそのワケは?
  • 遠藤保仁(ガンバ大阪)
    10年連続Jリーグベストイレブンにも、代表最多出場記録にも歩みを止めない。稀代のMFの飽くなき向上心に迫る
  • 堀北真希
    あくまでも、自然体。 2度目の舞台に挑戦する“国民的女優”の素顔
  • 藤原竜也
    舞台で演じ続けてきた実体験を、 「人生の蓄積」と呼んで胸に刻む。若き天才の次なる挑戦とは…。

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