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野田秀樹

――野田さんがロンドンの仲間と作った傑作が『THE BEE』。2006年にロンドンで初演され、今回、待望の再演が決りました。

「脚本を書いている時に、『絶対おもしろくなる!』という手応えを感じた作品が、これまでに何作かあって、『THE BEE』もそんな手応えを感じた1本でした。でも、それは自分だけの手柄じゃなくて、筒井康隆さんの原作の素晴らしさとロンドンで重ねたワークショップの賜物だと思う。『THE BEE』はロンドンが初演だったから、まったく自信がなくて、だからこそディスカッションすることが重要だった。筒井さんの原作には、被害者の心象風景が描かれていなくて、そこがポイントになる予感があった。たとえば、戦場にいる人間というのはとても非日常的なことが日常となる。いままで隣りでふつうに生活していた人が、突然死んでしまう。だからといって、警察に通報するわけでもなく……。そんな感情をみんなで徹底的に語り合った。だから、『THE BEE』は、脚本だけでなく、ワークショップも含めて、『おもしろくなる!』という手応えが続いた作品だったんだけど、結局、そこなんだろうね」

――そこがどの点をさすのかが気になります。

「役者サイドではなく、脚本家としての話をするとさ。作家なんてものは、作品を書き終えるまではたいがいが暗いもの。でも、なんでそんな暗い作業と向き合えるかっていったら、おもしろがってるかどうかが重要となる。自分の思いつきを信じられていなかったり、おもしがっていられない時に書いていると、仕事化していってしまう。俺、こういった取材とかを『仕事』と言うことはあっても演劇に関しては仕事だなんて思ったことがない。"人間とは遊ぶ動物である"という言葉を信じている古いタイプとしては、仕事=ネガティブワードなわけ。そんな男がさ、脚本を書く際に仕事化しちゃったら最悪でしょ? 実際、仕事化して書いた脚本は絶対におもしろくならない。つまり、俺の場合は絶対に仕事化しちゃダメだぞって」

――『THE BEE』を見て一番感じたのは、「あぁ、人間にはこういう部分があるよなぁ」という感想でした。今回の取材のため、本作の背景には911以降の世界が描かれているとの事前情報を知りつつも、そんなことより、いまそこに立っている役者たちのやりとりが気になって仕方がなかったのです。

「それはいい。いや、そういうことですよ。実は『THE BEE』はアメリカにとってのテロリストを描いているだとか、そんなことを観客に思わせたらダメだと俺は思っているから。観ている人がその場にいることを忘れて、いつの間にか舞台との境が解けていく瞬間。そういう瞬間こそが俺の思う演劇だから。とくに『THE BEE』はそういう作品だと思う。たとえば、人質の指を鉛筆に見立てているんだけど、その家に押し入った男がその鉛筆を折ると。その時、舞台上で折られているのは鉛筆だよね? でも、観てくれている人が実際に人間の指が折られているように感じてくれたなら……。そういうところまでいけた時って、作品としてすごくいいことだと思う」

――日本での再演が楽しみでなりません。最後にNHKのような質問を。算数の数式で、野田秀樹-演劇。=の右側にはなにが残りますか?

「……そういう計算式って成り立つのかなぁ。ゼロって答えると俺=演劇であり、俺にとってのすべてが演劇ってことになるんだろうけど、そういう思考じゃない気がする。だって、俺という存在よりも、演劇という世界のほうが断然大きいと思うから。自分だけのものじゃないからね、演劇って。たとえば、歌舞伎の舞台でも、お囃子などの表舞台を支えている人数分×彼らが子どもの頃から費やした時間×歴史だから。そこから聞こえてくる音に叶うわけねぇよなと感じる瞬間もある。それぐらい演劇という世界は、とてつもなく大きいと思う。俺ひとりなんかじゃまったくかなわないほどに、ね」

野田秀樹

Text●唐澤和也 Photo●源賀津己

PROFILE

のだ・ひでき●1955年生まれ、長崎県出身。劇作家/演出家/役者。1976年に劇団夢の遊眠社を結成。1992年に劇団を解散し、ロンドン留学を経て、1993年にNODA・MAPを設立。2009年からは東京芸術劇場の芸術監督を務めている。
NODA・MAP 公式HP
東京芸術劇場 公式HP


TICKET

『THE BEE』English Version ワールドツアー 日本公演
 2月24日(金)〜3月11日(日) 水天宮ピット 大スタジオ(東京)当日券販売方法

公演・チケット情報



『THE BEE』Japanese Version ジャパンツアー
 4月25日(水)〜5月20日(日) 水天宮ピット 大スタジオ(東京)
 5月25日(金)〜6月3日(日) 大阪ビジネスパーク円形ホール(大阪)
 6月 7日(木)〜10日(日) 北九州芸術劇場 中劇場(福岡)
 6月15日(金)〜17日(日) まつもと市民芸術館 実験劇場(長野)
 6月22日(金)〜24日(日) 静岡芸術劇場(静岡)
 ※チケットは2月25日(土)一般発売開始

公演・チケット情報





2012.02.21更新

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