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宮本亜門

――そして現在取り組んでいるのが、演出家デビュー作『アイ・ガット・マーマン』の10年ぶりの再演ですね。

「この時期にこの作品をやらせてもらえる意味は大きいです。自分も初心に戻れますし、震災後の日本に、一段とパワーアップしたステージで客席に少しでもエネルギーを届けられたらうれしいです。中途半端なのは絶対に見せたくない。だから稽古にはいっそう熱が入りました。フレッド・アステアが寝ないで稽古したのと同じように、最高のエンタテインメントを届けるには、徹底的にやらなければいけないと思っているので。“こんなに熱い『マーマン』は初めてだ”というスタッフもいるぐらいの舞台になってます」

――今回はトリプル・キャストということで、3人×3組=9人が登場します。

「ブロードウェイの伝説の女王エセル・マーマンを描いた作品ですけど、それをキャスト3人が“私こそがマーマンよ!”と競い合いながら演じていく趣向なので、彼女たちのナマの個性が重要なんです。観客に異常なまでの愛情を注いだマーマンのように、誰が最大の愛情を観客に贈れるかが勝負という」

――製作発表でも9人の女性のエネルギッシュなパフォーマンスに圧倒されました。

「ビジネスにおける男女の格差についての統計で、日本が98位って聞いたんですけど、先進国では最下位です。日本の保守的な面が今露骨にいろいろと見えてきたから、もう少しそのへんも意識して。ショービジネスで頑張っている女性たちの姿を通して、世の女性たちをチアアップすることができればいいですね」

――同時に、チャリティー・オークション“うれしいプロジェクト”を立ち上げました。出品予定者を50音順に紹介すると、彩吹真央さん、石丸幹二さん、市村正親さん、井上芳雄さん、浦井健治さん、大竹しのぶさん、木村佳乃さん、佐藤隆太さん、城田優さん、ソニンさん、成宮寛貴さん、藤原紀香さん、別所哲也さん、松田美由紀さん、南果歩さん、森山未來さん、そして亜門さんと『アイ・ガット・マーマン』のキャストの方々など他にもおられますね。

「被災者の自立支援を促す『ふんばろう東日本支援プロジェクト』の一環で始めたものです。オークションの落札金は、被災地への支援金として全額寄付させていただきます。まさに舞台のライブと同じように、人と人をつなぐ、FACE TO FACEのプロジェクトを展開するために、事務所、プロダクションを超え、人々に感動を与えることを生業とする人々が集結しました。どうぞ、皆さんの力をお貸しください。“生きてうれしい”と思える絆が、大きく広がっていくことを心から願います」

うれしいプロジェクト

右が『ふんばろう東日本支援プロジェクト』代表の西條剛央さん

――そして目前には『金閣寺』の凱旋公演が迫っています。

「キャスト全員、『金閣寺』への愛情がとても深いです。単に作品として好きというより、稽古への打ち込み方をみていると、自分の人生の何か大きなきっかけと関わっているんじゃないかなと思えます。それに向き合うのは、僕にとってもうれしいことですね。このキャストは今回最後になるかもしれません。ぜひ観てほしいです」

――さらにその後も上演作品が続きます。5月に新国立劇場で開幕するのが、オスカー・ワイルド原作の『サロメ』。多部未華子さん、成河さん、麻実れいさん、奥田瑛二さんらが出演します。

「キャスティングには時間をかけました。『農業少女』の多部さん、すごく良かったでしょう。その彼女がサロメをやるのは意外に思えるかもしれませんけど。今までのサロメって、妖艶というかファム・ファタールのイメージが多い。でも、原作を読めば読むほど、それでは、本質と離れると思えてきたんです。かつて三島由紀夫も『サロメ』を演出しています。三島自身も出演した映画の『憂國』を観ると、主人公の軍人が切腹した後、どす黒い血の海の上を妻が花嫁衣裳を引きずりながら歩いていくという場面があるんですが、なんて恐ろしくも美しいんだろう!と思って。それが、血の上を滑るように踊る女というサロメ像につながるんですね。ヘロデが作る政治的で男性的な世界に、純粋無垢なサロメが生身で対抗していく。少女にとっての生理の問題というか、女性が女性としていきていくための通過儀礼だと思うんです。今までの妖艶なサロメよりも、もっと強く、人間の根源に迫れるような舞台にしたいと思います。平野啓一郎さんが手がけた新訳もとてもいいんです」

――ほかに上演予定の作品は?

「あとオペラもあるし、ミュージカルもやろうと思っています。エンタテインメントというか、若い子たちがウワーッと楽しめ、未来に希望が持てそうなものを、今風のやり方で」

――2012年をどういう年にしたいですか?

「常にアンテナを張って、この時代を共に、存分に生きたいっていうことぐらいしか言えません。というのは、僕は色んなことがまだ起こると思ってるから。2012年。そのためにも、乗り越えられるだけのエネルギーを常に貯めておいて、そして、起きるかもしれない問題の根源に自らのクリエイションで切り込んでいかなければならないなと。その意味では、自分にとって一生忘れない年になるだろうな、という思いでいます」

Photo●熊谷仁男

PROFILE

みやもと・あもん 1958年生まれ、東京都出身。出演者、振付師を経て、2年間ロンドン、ニューヨークに留学。 帰国後の1987年にオリジナルミュージカル『アイ・ガット・マーマン』で演出家としてデビュー。2004年、東洋人の演出家としては初登場となるニューヨークのオン・ブロードウェイにて『太平洋序曲』を上演し、同作は2005年のトニー賞で4部門にノミネートされる。2010年にはロンドンのウエストエンドに進出し、ミュージカル『ファンタスティックス』を上演した。2011年1月にオープンしたKAAT 神奈川芸術劇場の初代芸術監督。


TICKET

『アイ・ガット・マーマン』
1月3日(火)〜19日(木) シアタークリエ(東京)
1月22日(日) サンケイホールブリーゼ(大阪)
1月27日(金) 北國新聞赤羽ホール(石川)
2月4日(土) 日光市今市文化会館(栃木)

公演・チケット情報



『金閣寺』
1月19日(木)〜22日(日) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
1月27日(金)〜2月12日(日) 赤坂ACTシアター(東京)

公演・チケット情報



新国立劇場演劇『サロメ』
5月31日(木)〜6月17日(日) 新国立劇場 中劇場(東京)
※3月17日(土)チケット一般発売
新国立劇場HP


INFORMATION

“うれしいプロジェクト”チャリティー・オークション
ネット入札期間:2011年12月26日(月)11:00〜2012年2月22日(水)14:00
ハガキ入札申し込み期限:2012年2月21日(火)劇場到着分まで有効

東宝公式HP



2012.01.10更新

今週のこの人 ラインアップ

  • 山田和樹
    小澤征爾も実力を認める注目の指揮者。クラシック音楽界が熱い視線を注ぐホープの“今”に迫る!
  • さまぁ〜ず
    2年ぶり、9回目の 『さまぁ〜ずライブ』開催。 稀代のコント芸人が、ライブにこだわり続けるそのワケは?
  • 遠藤保仁(ガンバ大阪)
    10年連続Jリーグベストイレブンにも、代表最多出場記録にも歩みを止めない。稀代のMFの飽くなき向上心に迫る
  • 堀北真希
    あくまでも、自然体。 2度目の舞台に挑戦する“国民的女優”の素顔
  • 藤原竜也
    舞台で演じ続けてきた実体験を、 「人生の蓄積」と呼んで胸に刻む。若き天才の次なる挑戦とは…。

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