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NHKの朝ドラ『梅ちゃん先生』、映画『ALWAYS 三丁目の夕日'64』が、いずれも大ヒット。昨年末には『NHK紅白歌合戦』で紅組の司会を担当。2012年の活躍を機に、今や“国民的女優”という代名詞が相応しい存在となった堀北真希。そんな彼女が2013年の春に挑むのが、舞台『二都物語』だ。これまでも世界中で舞台化・映画化が成されてきた、C・ディケンズの同名小説を原作に、土田英生の脚本、板垣恭一の演出で大胆なアレンジを施した異色作にして、キャストに草なぎ剛、小澤征悦ら錚々たる顔ぶれを揃えたエンタテインメント大作。堀北にとって2年半ぶり、2度目の舞台にかける想いとは?

――『二都物語』は、2010年の初舞台『ジャンヌ・ダルク』に続いて2度目の舞台となりますね。オファーを受けたときの心境は?

「こんなに早く、また舞台に立てる機会をいただけるとは思ってなくて。素直に嬉しかったですね。もちろん、ドキドキした気持ちもありましたけど」

――改めてお聞きしますが、堀北さんが舞台を通じて学んだこととは何でしょうか。

「当たり前のことなんですけど、舞台って、あとから自分のお芝居を見ることができないじゃないですか。映像だったらシーンごとに自分で自分の演技をチェックできるけど、舞台ではそれができない。でもその代わり、見に来てくださったお客さんが自分を見てくれているっていうか。その視線を感じながら演じることは、すごく貴重な経験になりましたね」

――『二都物語』の原作は、フランス革命時のフランスとイギリスを舞台にふたりの男性とひとりの女性をめぐるラブストーリーですが、今回の舞台は、邪馬台国の時代の日本に置き換えたオリジナルの物語。堀北さんは台本を読んで、どんな印象を持たれましたか。

「舞台の台本は、いつも読んでる映画やドラマの台本とは違うんですよね。特に今回は、古代の日本を舞台にしたお話ですし……。なかなか難しかったです(笑)」

――それはテーマが難解だとか、物語が複雑だということではなく?

「ええ、もちろん。実は最初、(自分が演じる)サクヤという人にあまり共感できなかったんですよ。この女性はいったい何を考えて、どういう心情でこういう言動をとるのか、みたいなところが今ひとつ見えてこなくて。だから、参考に映画版の『二都物語』(1957年/イギリス)も見てみたんですけど、それでもやっぱり難しかったんですよね(笑)。人物の心情よりも、ストーリーについていくのに必死で……」

――その問題はどのように克服されたんでしょうか。

「演出の板垣(恭一)さんから客観的な視点でのアドバイスをいただいて、それを表現できるようにひたすら頑張りました。板垣さんといろいろとお話をさせていただく中で、考えをまとめていってる感じですね。もともと今回の台本はストーリーがテンポよく進んでいくので、その分、人物の内面がそこまで事細かく描かれているわけではないんです。ある場面から次の場面に展開するときに、舞台上では描かれていないけど、この間にきっとこんなことがあったんだろうな、という含みをもたせて話が進んでいく。でもだからと言って、見ているお客さんに『どうしてこうなるの?』って思わせちゃいけないわけで。だから私は、台本には書かれていない“行間”をちゃんと理解したうえで、お芝居をしなきゃいけないんだなって。そこは特に意識していることですね」

――板垣さんのおっしゃったことで印象に残っていることはありますか?

「まずサクヤは、お嬢様育ちという背景もあって、自分の気持ちだけで行動を決められないところがある人間なんだ、ということ。感情よりも“立場”を優先してしまう人、というか。『この場面では、本当は動揺してるんだけど、立場上、平然と振る舞っているんだ』みたいな、的確なアドバイスをたくさんいただきました」

――サクヤは何よりも父親の幸せをいちばんに考えて人生を歩んでいる女性です。同じ女性として、その心情は理解できますか?

「はい、そこはわかりますね。どちらかというと私も、みんなが幸せだったらそれでいいなって思うほうなので。いつも物事が丸く収まるほうを選んでしまうタイプですから。あっ、そういう意味では、そこは私と似てるのかもしれませんね(笑)」

――テーマがシンプルなだけに、俳優には高度な表現力が求められる、ということはあるかもしれませんね。

「やっぱり、今回のテーマは“愛”ですからね。男女の愛だけじゃなくて、親子愛や友情、いろんな形の愛が詰まった作品なので。だから皆さんにも、誰かを想う気持ちの大切さだったり、自分の幸せよりも愛する人の幸せを願う気持ちの尊さみたいなものが、少しでも伝わったら嬉しいですね」

――稽古場の雰囲気はいかがですか?

「すごくチームワークがよくて、明るくて楽しい稽古場です。草なぎ(剛)さんや小澤(征悦)さんとも、合間におしゃべりしたり。今回、私は高橋惠子さんとご一緒するシーンが多いんですけど、高橋さんもとても優しい方で。私が出演している映画やドラマをいろいろと見てくださったみたいで、この前、褒めていただきました(笑)」

――草なぎさん、小澤さん、堀北さんのお三方の間には、“凸凹トリオ”のような空気感が生まれているそうですね。

「あぁ、それは草なぎさんがおっしゃっていたんです(笑)。本当に3人とも、変に遠慮したり、他人行儀になるようなこともなく。もちろん、『ここの掛け合いはどうしようか』みたいな、お芝居の話もしますし。毎日、楽しくやらせていただいています」

――ところで、“映像作品における演技”と“舞台における演技”との、いちばんの違いは何だと思いますか。

「これも当たり前のことなんですけど、舞台って、近くにいるお客さんは私の表情がよく見えると思うんですけど、後ろの席のお客さんは、たぶん表情まではわかりませんよね。だから舞台では、たとえ表情がわからなくても、感情が伝わるように演じなきゃいけないと思います。そこはやっぱり大きく違いますね」

『二都物語』 サクヤ

Text●泉 英一

PROFILE

ほりきた・まき 1988年、東京都生まれ。2003年に映画デビューを果たし、2005年、ドラマ『野ブタ。をプロデュース』で注目を集める。同年の映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で第29回アカデミー賞新人女優賞、エランドール新人賞など数多くの賞を受賞。2010年、『ジャンヌ・ダルク』で初舞台を踏む。2012年には、NHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』でヒロインを務め、年末の『NHK紅白歌合戦』紅組司会を務める。人気と実力を兼ね備えた国民的女優として活躍の場を広げている。ヒロインを演じた映画『県庁おもてなし課』が2013年5月11日より公開予定。


TICKET

『二都物語』

東京・東急シアターオーブ
4月3日(水) 〜 4月30日(火)

★『二都物語』特別電話予約
受付期間:4月1日(月)昼12:00 〜 4月7日(日)23:59
受付番号:0570-02-8852
※予定枚数に達し次第、受付終了

公演・チケット情報





2013.04.01更新

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