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近藤良平

いまや日本を代表するダンスカンパニーとなったコンドルズを率いながら、振付家や俳優としても引っ張りだこの近藤良平。ワークショップも精力的に行い、コンテンポラリーダンスの垣根を越えながら精力的に動き続ける彼に、コンドルズの新作公演や、今後の展望について訊いた。

――ちょうど『にゅ〜盆踊り』(7月29日)が終わったところで。

「先週でしたね。今年で5回目。すごい人でしたね。もう多すぎて、よくわからなくなってきた(笑)。配ってるウチワの数である程度、把握できるんだけど、今年は三千人ぐらいは来てたみたい」

――かなり定着してきたんじゃないですか。

「そうそう、“今年も楽しみにしていました”って人がいてね。ホントの夏祭り的な感じですよね。もともと豊島区から声をかけてもらって、僕たちも最初はあまり馴染のない地域だったんだけど、地元の知り合いも増えてくると、豊島区の良い意味での村っぽさも見えてきて、面白いね」

――新作の稽古もあるし、相変わらずお忙しそうですね。

「特に夏は、毎年とにかく忙しいですね(笑)」

――新作公演のタイトルが『Knockin' on Heaven's Door』。これはやはりボブ・ディランで?

「はい、もろディランの曲名。ちょっと長いかなぁっていうのも思いつつ、まあ有名なタイトルだし。ただ、ディランの本来の歌詞とかはあまり考えてなくて、"天国の扉を叩いている"っていうイメージが面白いなと。“ヘブン”も“ドア”も、これまでコンドルズで使ってないキーワードなんです」

――けっこう強い響きのある言葉ですよね。

「強いですね。それに天国への扉となると"死"のイメージなんかもあって、深い。僕としてはアクションや芝居ってことだけじゃなく、ドアがあると向こう側が気になっちゃうんですよ。ちょっと奥を覗くというか、そういうことが好きなんですね。あと、これは舞台の話だけど、例えば部屋のシーンだったら、かならずっていうくらいドアは使われますよね。舞踊的な公演でも、ドアは、イスや机と並んでよく使われるアイテムだし。だから逆に、ちょっとなーっていうふうに思ってたぐらいなんです」

――ベタすぎる、と。

「そうそう。だからコンドルズではあまり使わなかったんです。それが今年の1月に彩の国さいたま芸術劇場で『十二年の怒れる男』っていう公演をしたときに初めてイスを使ってみたの。それもチェス的に8×8で64脚も出してみたんだけど、けっこうイケるぞってことがわかった。これだったら、今度はドアだっていけるんじゃないかと」

――ちなみに近藤さんが今回の公演でドアの向こう側に見ようとしているイメージはどんなものなんですか。

「いまは暗いものを見てもしょうがないから、やはり光というか、未来への希望を見たいですよね。ただ、それもお客さんの捉え方によっては全然違うものに見えるのかもしれない」

――これはプロデューサーの勝山康晴さんが書かれた文言だとは思うんですが、今回の公演案内に「より強度の高いコンテンポラリーダンス作品に挑戦して」いくとありました。コンドルズの中で、ダンスの強度を上げていくっていう方向性はあるんですか。

「それはあると思いますね。〈暁〜AKATZKI〜〉(ダンスの精鋭メンバーを集めたコンドルズの別働隊)とかも、僕は入らずに自主的に動いているし。ただ、ダンスといっても何をもって技術とするかっていうことがありますよね。どう見せるかという、そこの技術もあるわけで」

近藤良平

――そうなんですよね、コンドルズの場合、ある特定の違うジャンルのダンスを正確に踊るっていうこととは別の技術があると思いますし。

「"ダンスの身体を磨く"っていうことに対して純粋に取り組んでるのは、たぶん僕とあとひとりかふたりだと思います。ただ、おっしゃるとおりコンドルズ独特な見せ方とか、テンションを瞬間で上げたり下げたりっていうことに関しての技術は、みんなムチャクチャ高くなってると思います。いちおう昨年が15周年で、今年から16年目です。単純にいま、メンバーはがんばらざるをえないと思うんですよ。"がんばる"っていうのは、ようするに、サボればいくらでもサボれちゃうわけで、逆にここががんばりどころだぞって。そういう中で、カツ(勝山)でもいいし、誰かポーンって新しいことを始めるみたいな、そういう勢いが"強度"ってことに繋がるのかなって」

――ここ数年で新しいメンバーも増えましたしね。

「そうですね。いままではスズキ拓朗に“(NewFace)”がついてたんですけど、今回からなくなって」

――ぎたろーさんは加入してから3年ぐらいになりますけど、ずっと“(新人)”ってついたままで……(笑)。

「ま、それは冗談みたいなものだから(笑)。で、今回から“(NewFace)”ってついてるのが安田有吾で。彼は、僕が神楽坂セッションハウスでやるときに踊ってたり、パフォーマンスをしたりもしているので、新人ではないんですけど、コンドルズ的には新顔。彼は書道家でもあるんですよ。なかなかインパクトのあるヤツです」

――ちなみにコンドルズ内の年齢差でいうとどんな感じなんですか。

「それ、微妙ですねぇ(笑)。ちょうど20歳差くらいかな?」

――基本コスチュームが学生服なので、ハタからはその年齢差はあまり見えないですね(笑)。

「部活みたいな感じでしょ? セーラー服だとちょっと……だけど、男は案外イケちゃいますよね(笑)」

――とはいえ、15年以上も学生服を着続けるとは……。

「全然、思わなかった! 不思議ですよ。だって最初は大川興業とかと同時期ですもん。そのあと氣志團なんかもブレイクして。でも、ウチらは特にそこまで浮上することなく、もうずーっと着ていますからね」

――もはや学ラン界のベテラン(笑)。

「……といっても、学ランメーカーから声が掛かったこととか一回もないですよ(笑)」

――近藤さんご自身は外部の振付仕事やダンス公演も非常に多いと思うんですが、他でやるときと、コンドルズでやるときとの大きな違いはどのへんにありますか。

「いずれにせよ、コンドルズが第一優先ですよ。もともと舞台芸術に関わること自体、コンドルズから始まっているわけだし。それに、他の仕事はクライアントがいるけど、コンドルズに関しては、少なくとも僕自身の関わり方においては、まったくお金うんぬんで動いているものじゃない。そこは大きいですよね。自分が面白いと思うことを存分にやるだけで。そうやってお金にもならないことを、15年前も今も変わらず続けることに意味を見いだしちゃってますね」

――そのスタンスだからこそ続いているってことも言えるのかもしれないですね。

「その上、海外にまで行けるのもね。10年以上連続で海外公演をやってますから。今年も3月にイスラエルに行きましたし、来年はタイなど数か所に行く予定です」

――ちょっと気が早いですけど、20周年も視野に入ってきますね。

「そうね、それに関してはどこまで何を言おうか……っていう感じもあるんだけど、ミュージカル的なことなのか、映画的なことなのか、何かしら大きな仕掛けはしたいと思ってますよ」

Text●九龍ジョー Photo●熊谷仁男

PROFILE

こんどう・りょうへい 東京都出身。ペルー、チリ、アルゼンチン育ち。男性のみ学ラン姿でダンス、生演奏、人形劇、映像、コントを展開するダンスカンパニー、〈コンドルズ〉の主宰/振付家。20か国以上でコンドルズの公演を行う一方、NHK総合『サラリーマンNEO』内『サラリーマン体操』、NHK教育『からだであそぼ』内「こんどうさんちのたいそう」、『あさだ!からだ!』内『こんどうさんとたいそう』、NHK連続テレビ小説『てっぱん』オープニングダンスにて振付出演。また俳優として、NODA・MAP番外公演『THE BEE』などに出演している。
コンドルズHP


TICKET

コンドルズ日本縦断大開放ツアー2012
『Knockin'on Heaven's Door』

 8月23日(木)〜26日(日) 東京グローブ座
 8月31日(金) 焼津文化会館 小ホール(静岡県)
 9月2日(日) 高岡市民会館(富山県)
 9月7日(金) 新潟市民芸術文化会館 劇場
 9月9日(日) サンシティ越谷市民ホール 大ホール(埼玉県)
 9月13日(木) アステールプラザ 中ホール(広島県)
 9月15日(土)・16日(日) イムズホール(福岡県)
 9月22日(土)・23(日) 松下IMPホール(大阪府)

公演・チケット情報



『東京福袋』
 9月2日(日)〜9日(日)
 東京芸術劇場 シアターウエスト
 ※近藤良平は9月5日(水)に登場。

公演・チケット情報



INFORMATION

新国立劇場演劇
『音のいない世界で』

 12月23日(日)〜1月20日(日)
 新国立劇場 小劇場(東京都)
 ※チケットは10月20日(土)一般発売開始

新国立劇場HP



2012.08.14更新

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