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今週のこの人:Ken Yokoyama

今週のこの人:Ken Yokoyama

――それまでの在り方から逸脱してるという意味では、本当にそうですね。

「そうそう。3.11以前の道徳とか団結とかは絵空事だったと思うの。何もないところから道徳的でありましょう、団結しましょうって言っても、そんなもんは北朝鮮と一緒ですよ。みんな訳もわからず空洞化してしまった言葉を使ってただけで。でも、3.11をみんな等しく経験したんだったら、道徳とか団結ってことがわかるハズ。絶対。それまでと意味が違うから。だったら、それをしっかり提示しないでどうする!って思ったもん」

――<ひとつになれる>って言葉の切実さが違いますもんね。この曲自体は、制作の初期に出来たんですか?

「いや、意外と後半の方で。しかもね、大元はMinamiちゃん(g)が作ってきたの。それがまた面白いでしょ? 頭のメロディとコード進行とかをMinamiちゃんが持ってきて、使えそうかどうか聞いてくれて。で、オレ、サビ思いついたと思ってメロディをつけて。「We Are Fuckin’ One」って去年のツアータイトルで使ってたけど、もっと意味を持たせたいと思ってて。そういう曲があったらもっとわかりやすいだろうしね」

――次の「You And I,Against The World」も、横山さんなりの世界との闘い方を示すような曲で。

「元々これは、原発の議論をする中で生まれてきた曲で。オレはね、もう原発は止めたほうがいいと思うの。でも、今はだいぶそう言えるようになったけど、震災で原発事故があったすぐ直後に脱原発でしょ?って言ったら、ものすごい叩かれて。経済どうすんだ! 雇用はどうすんだ!!って。それでもオレ、考えは全然変わらなかったのね」

――曲げなかったですよね、主張は。

「うん。その時に、オレひとりになっても言うよ?って気持ちがあったの。意見を発するっていうことは、そういうことなんじゃないかと思って。でも、ひとりだけで闘うんじゃなく、俺と同じ気持ちのヤツ絶対いるはずだから、そいつに呼びかけようと思って歌詞を書いて。発想は原発だったけど、みんな議論をしなさすぎると思うの。日本の人たちは」

――議論する前に、ムードで流されてしまったり。

「そう、そう。例えば、いじめ問題だったりとか、新卒採用が少ないとかさ。だったら企業のあり方とかから考えるべきだし、いろんな人と話せば別の発想が生まれてくるかもしれないし。人に雇用されるんじゃなくて、俺が雇用してみよう!とかね。それだけじゃなくて、国会でも今さかんに取り上げられてるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のことだったり、オスプレイのことだったりとか、これだけネットが発達して個人の意見を発信しやすくなったんだから、なんでも議論して、もっと個人が主張してもいいんじゃないかと思う。政治的すぎて口出せない、とか思うのかもしれないけど、政治はそもそも生活の延長であって、“身の回りのこと=政治”だとオレは思っるから。少なくとも俺にとってはそうだしね」

――この曲しかり、「This Is Your Land」しかり、みんなで創りあげていこうぜっていう“呼びかけ”ですよね。

「そうなのよ。意見を言うことを恐れなくていいんだよ、意見が合うんだったら、そいつと組んで、闘ってみてごらんよっていう歌なのね。この「You And I,Against The World」が1曲目に出来て、「This Is Your Land」が2曲目に出来て。だから、そのふたつをすごく大きく言いたかったみたい」

Ken Yokoyama

Ken Yokoyama

――これまでも横山さん自身の在り方というか、世界との闘い方を見せることで聴いてくれる人を感化したり鼓舞されてきましたけど、今作に至っては、もっと直接的な物言いで「共に闘おう!」って呼びかけているのが印象的で。

「かもしれないね。今まではね、勝手にキャッチしてくれっていう気分があったけど、今回はもう呼びかけてるよね。でも、それくらいの事態なんだと思うよ、今も。ひとりのミュージシャンがそうやってしまうくらいの。」

――世間的には、あの頃あった危機感みたいなものが徐々に弱まっている部分もあると思いますが。

「一部の人は忘れちゃってる人もいるし、もうそんな話聞きたくもない!って耳を塞いじゃった人もいるし。でも、オレはそうしたくないし、風化もさせたくないから」

――だからこのアルバムで、改めて心をひとつにしようぜって呼びかけて。

「そうね。俺と一緒じゃなくてもいいから、俺はハジカれてもいいから、みんなはせめてひとつになってくれ!くらいの」

――そういう気持ちが剥き出しだし、本当は近しい人にだからこそ言えるような言葉を、みんなに向けて言っているし。「I Can’t Be There」なんかは、特に。

「『I Can’t Be There』は、ホントそうだね。東北にはいっぱい俺のこと好きでいてくれる人がいて、津波に流されちゃった人もいるのね。うん。1人や2人じゃないから。だから……そりゃあ、言うしかないよ」

――「Soul Survivors」って曲なんかは、いなくなってしまった人々への鎮魂歌であり。

「ん、チ●コの歌?」

――チ●コソングじゃなくて(笑)、“魂を鎮める歌”です!

「くっくくくく(笑)。いや、ホントそうね。『Soul Survivors』は、オレのこと知りもしないおじさんおばさん、おじいちゃんおばあちゃん、流されてしまった人すべてに向けて歌ってるし。例えば石巻に行くと、集団で流されちゃった小学校があったりして。横山 健の“よ”の字も知らなくても、なんか歌いたいなっていうか。あと、震災とは関係ないんだけど、オレ、2年前に実の兄を亡くしてて。実の兄が亡くなったことで、生と死に対するリアリティが変わって。なんて言うか、死を身近に感じるようになったのかな。歳も一個しか違わなかったし、その兄が病気で亡くなって、自分も歳を取ってきて、その直後に震災があって……」

――言い方を変えると、自分の終わりも感じるようになった?

「もちろん。全然ネガティブな意味じゃなく、事実として、みんな死ぬんだってことがすごくリアルに感じられて。ずっと一緒に育ってきた兄が亡くなったりするわけだから、死が怖くなくて。悲しいことではあるけど、全然怖くはないの。そこがいちばん変わったかな。死にたいとは思わないよ、でも生かされてる意味とかを、すごく考えるようになった」

――死を身近に感じるからこそ、「Soul Survivors」で歌われているように、<残された者は真剣に生きなきゃいけない>と。

「そう。震災で自分の死生観がすごい変わって、今だからこそそういうことが歌えるようになったのかなって。全部が震災の話になっちゃうけど、被災しなかったオレたちはある意味チャンスをもらったと思うの。3.11以前の価値観や方法論じゃない、簡単にいうと壁を壊すというか、そういうチャンスをもらったと思うのね。それをちゃんと詰め込めた手応えは、すごくある。だから、なんとなく曲作りを進めないでホントよかった」

Ken Yokoyama

Ken Yokoyama

――『Best Wishes』っていうタイトルだし、この想いは届いてほしいですよね。

「届いてほしいね。“Wish”っていうのは、希望とか望みとかね、そういうポジティブな響きがあるからピックアップしたんだけど。アルバムを手にとって、アートワークを見てもらえばわかるんだけど、これって“手紙”になってて。……Minamiちゃんとタイトルの話をしてる時に、最初、これは駅の伝言板だって言ってたのね。オレ、“横山 健”っていうものが世の中ではどれくらいちっぽけなものか客観的にちゃんとわかってるつもりで。で、駅にさ、みんな見てくれ!ってメッセージ書いても、みんな素通りしちゃうわけじゃない? でも伝わる人には伝わる、そういったものなんじゃないかって。でも最近は駅に伝言板ないよね、だったら“宛先不明の手紙”なんじゃないかって。そういうちょっとミステリアスなものであり、届く人には届く……それを人はデリヘルのチラシとも言うけど」

――はっははは! 『Best Wishes』改め『デリヘルのチラシ』(笑)。

「すっごいわかったでしょ?(笑) 食いつくヤツはすごい食いつく、そういうシロモノだと思うの。手紙は拝啓ではじまって敬具で終わるんだけど、その敬具は英語でいろんな種類があって、その中でもオレは“Best Wishes”って言葉をピックアップして。押し付けたくはないから一方的な手紙っていうかね」

――なるほど。「I GO ALONE」と宣言して始まった横山さんのソロ・キャリアが、ここで「We Are Fuckin' One」に辿り着いたってことは、なかなか感慨深いものがあります。

「そう。『I GO ALONE』は、あれはあれで偽りのない気持ちなんだけど、去年はアップデートされた曲がなかったからすごい歯がゆかった。やっと次の12月のツアーから『We Are Fuckin' One』って言ったうえで『I GO ALONE』って言えるし。実際、7月からライブを再開してるんだけど、すごく変わってきてて。気持ちが前に出てるっていうか」

――今の想いを込めた曲が鳴らせるから。

「うん。新曲は2分で終わるんだけど、その前に10分くらいどんな曲か説明すんだけどね(笑)」

――ははははっ。ほぼトーク・ショーじゃないですか(笑)。

「トーク・ショーですよ、あはははは! でも、次のツアーをやってくうちにまた自分も変わってくるだろうし、違う風景を見れるだろうし……すごく純粋に、音楽家としてワクワクしてます」

――なるほど。最後にお伺いしたいのですが、大成功に終わった9月の東北『AIR JAM』では、横山さんは何を得ましたか?

「東北で『AIR JAM』やって確信的になったのは……やっぱり音楽は祭りで、傷ついた場所には祭りが必要なんだってことで。被災地に行くと、依然祭りが必要で、その役割はオレたちが担えると思うの。誰かにとっては救いであって、誰かにとっては2、3時間フワッとできるものであって……。やっぱり音楽はいいもんだなって、それがいちばん感じたことかな。だから、今年東北で『AIR JAM』やれたことは、本当にうれしかった」

Text●奥村明裕 Photo●中川有紀子

PROFILE

1969年10月、東京都出身。1991年 に結成したHi-STANDARDのギター&ボーカル。2004年に、アルバム『The Cost Of My Freedom』でKen Yokoyamaと してソロ活動開始。 レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」の社長も務める。2011年9月18日に ロック・フェス『AIR JAM 2011』を横浜スタジアムにてHi-STANDARDで主催する。そこで、11年 ぶりにHi-STANDARDの活動を再開させる。2012年9月15・16日に、宮 城・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区風の草原にて「AIR JAM 2012」を開催。12月1日(土)・札幌KLUB COUNTER ACTIONより、KenYokoyama「Best Wishes Tour」をスタートさせる。


TICKET

Ken Yokoyama 「Best Wishes Tour」

2012年
12月1日(土)札幌 KLUB COUNTER ACTION
12月7日(金)長野 CLUB JUNK BOX
12月8日(土)新潟 LOTS
12月10日(月) 秋田 Club SWINDLE
12月11日(火) 青森 Quarter
12月13日(木) 盛岡 Club Change WAVE
12月14日(金) 仙台 Rensa
12月16(日) 石巻 BLUE RESISTANCE
12月17日(月) 大船渡 FREAKS
12月19日(水)宮古 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
12月20日(木)八戸 ROXX
2013年
1月11日(金)宇都宮 HEAVEN'S ROCK VJ-2
1月15日(火)清水 ark
1月16日(水)名古屋 Diamond Hall
1月18日(金)大阪 なんばHATCH
1月19日(土)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
1月21日(月)広島 Cave-Be
1月22日(火)松江 canova
1月24日(木)長崎 DRUM Be-7
1月25日(金) 福岡 DRUM LOGOS
1月27日(日)鹿児島 CAPARVO HALL
1月28日(月)熊本 DRUM Be-9
1月30日(水)大分 DRUM Be-0
1月31日(木)松山 SALONKITTY
2月2日(土)高松 DIME
2月3日(日)京都 MUSE
2月7日(木)東京 ZEPP TOKYO

公演・チケット情報



RELEASE

5th FULL ALBUM
『Best Wishes』

11月21日リリース
2300円
PZCA-59
PIZZA OF DEATH RECORDS


2012.11.27更新

今週のこの人 ラインアップ

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