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今週のこの人:Ken Yokoyama

今週のこの人:Ken Yokoyama

前作『Four』から2年半ぶりにして東日本大震災後、初となるKen Yokoyamaのフル・アルバム『Best Wishes』が遂にリリースされた。高らかに団結を呼びかける「We Are Fuckin' One」、去っていった全ての同志に捧ぐ鎮魂歌「Soul Survivors」、これぞKen Yokoyama!なPOPでPUNKなナンバー「Save Us」など、3.11後の想いを結実させた決定打たる本作――この通算5枚目のアルバムについて、存分に語ってもらった。

――震災以降の横山さんの思いの丈が凝縮された、めちゃめちゃ気持ちのこもったアルバムで。ちょっと震えながら聴かせてもらいました。

「オシッコ行きたかったんじゃなくて?(笑)」

――いや、尿意じゃくて(笑)。作り終えた率直な手応えから聞かせてもらえますか?

「俺が今、音楽家としてやりたいものはこれなんだなっていう手応えはすごいあるんだけど、そんなにやったぜ!感はなくて。今の自分の気持ちにいちばん近い、しかもいつもと違う温度を持った作品を作れたっていうのはすごいうれしいんだけど」

――達成感ではないとしたら、何感がありますか?

「これを持ってツアーに行って、この作品が見せてくれる自分の将来とか風景とか、そういったものと出会えることにワクワクしてる感じかな。パッケージはあくまでもパッケージであって、リスナーにとっては大切なものだと思うけど、作った方にすれば既に過去のものだったりするの」

――むしろ、ようやく新しいスタートが切れたという心持ちで。

「うん。去年のこと考えればね、全然曲が出来なかったし、ずいぶん苦しんだから。かなり時間かかっちゃったけど、やっと出来たぜって感じはある」

――Hi-STANDARDを再始動させて、主催した『AIR JAM』で大きな注目を浴びる中でのソロ作だから、プレッシャーは相当なものだったんじゃないかと想像するんですが。

「プレッシャーとかは全然自覚してなくて。Ken BandとHi-STANDARDはまったく別のものだと思ってるから。僕の中でもそうだし、受け止める人も、きっとそれは違うものだと思ってくれてると思うし。どんな喩えがあうかな……例えば、ちょっとふたつ同時にお店を営業しなきゃいけないってだけで。震災以前はね、そのふたつは絶対一緒にやっちゃいけないものだと思ってたの。それが震災で崩れて、自分で考えを変えて。まぁ、とりあえず倍、働きゃいいんだよなみたいな(笑)」

Ken Yokoyama

Ken Yokoyama

――むしろ震災後に発表する最初のソロ作品として、いかに自分の気持ちを詰め込むかってところに注力したと。

「そうそうそう。Hi-STANDARDだのBBQ CHICKENSをやりながら、いちばんのメインのアウトプットであるKen Bandで、最初どういうものを提示したいかが全然見えなかったの。今でこそいろいろ分析もできるんだけど、去年は本当にわからなかった。曲のメロディはいっぱい沸いてくるのね。それはギターを持てばムリヤリにでもメロディ作れちゃうし、いつもならそれをそのまま形にしていくのに、去年はどう形にしていいものかわからなくなっちゃって。でも、どうしても新しいアルバムが作りたかったから、自分にハードルを課す意味でライブとかKen Bandのツアーを止めてみようと思って。それで2年かかるか3年かかるかわからないけど、一旦ライブお休みするよって宣言して」

――2011年12月のツアーを最後に。

「うん。結果的には半年で済んだんだけどね。でも、止めたはいいけど全然バンドにも曲を持っていけず、いい加減持って来い!ってJUNさん(JUN GRAY/g)に怒られたくらい(笑)。でも、そこはKen Yokoyamaって自分の名前を冠してるから、なるべく自分のアイデアでやりたいし、メンバーもそれを尊重してくれて。まずKenをサポートするのがこのバンドだろ?って。だから、一生懸命考えるわけ。とにかく今までどおりじゃ嫌で、一個突き抜けたいなと思ってて。でも、突き抜けるなんてことは、それこそ答えのないゴールみたいなもんだから」

――まず曲作りにおける自分の基準から作り始めないといけなかったというか。

「うん。その基準を探してたんだけど、今年の1月のある日ね、アルバムの2曲目に入ってる「You And I,Against The World」っていう言葉がポンッて出てきたの」

――あっ、タイトルが先に出てきたんですか?

「そうそう。それで、言葉じゃん!と思って。メロディじゃないじゃん!って。で、「You And I,Against The World」って言葉が求めてる曲を作ろうと思って、自分の中で歌詞の世界も広がっていって」

――その言葉が生まれてきた根っこには、何があったと思いますか?

「なんだろう? 歌詞とか言いたいこととかはノートに書き留めておいたり、アイデアとしてずっと持ってたりするんだけど、これはそういったものとも違う、いつもとは違った入ってき方をして。温度が高いといか」

――決め台詞みたいなものとして。

「うん。それでまず1曲作れた。まだ探り探りだったけど、同じような形でやってみたらいいのかなって。それで歌いたい題材を見つけて、その題材が持ってる世界観にあう曲を作るってやり方をしたら、少しずつ物事が動き始めて。でも、バンドって音楽の集団でしょ? もちろん思想も共有してるけど、いちばん共有すべきものは音楽であって。だから最初、ギョッとされるの。なんで今これ?みたいな。例えば音楽的にメタルにいきたいのかな、パンクにいきたいのかなとか、いろいろあるでしょ? バンドって意外にそういう小さい世界でゴニョゴニョしてるわけで。だから最初のコード進行とメロディしかない段階では、そういう曲は今やる必要なくない? みたいな反応で。で、ここにはこういうサビが乗るからって世界観を伝えていくと、あぁ、なるほどねっていう感じでやってくれたのかな」

――その感覚は、ちょっとわかります。僕も最初音源だけ聴かせてもらって、いつもどおりいいアルバムだなって感じて、再度、歌詞を読みながら聴かせてもらうと、こりゃいつも以上にすげぇアルバムだぞ!って気付かされて。

「うん。だから、今回はホントにテーマありき、言いたいことありき、だったんだろうね。震災の影響がすごく大きくて。震災後に新しく自分の中で芽生えた価値観だったり、善悪の線引きだったり、そういうことをちゃんと伝えたかったし、希望を歌うにしても、震災前と震災後じゃ全然質が違うでしょ? そこもちゃんと捉えたかったし。俺の中では、もうおおよそすべてのことが変わってしまったというくらいの出来事だったから。紀元前、紀元後みたいに。個人的にというよりも、大人として。それくらいの出来事だったと思うの、2011年3月11日は。その後の作品だから無意識ながらに自分に正直でありたいと思ってたみたいで、それまでのやり方じゃ通用しなかったみたい……意外とシリアスに悩んでたのよ(笑)。俺ってダメだよなぁ、みたいな」

――何か救いになるようなことは……。

「(即答で)ない!(笑) そうは言っても、世の中のみなさんが抱えてる仕事の悩みとかあるでしょ? それと同じようなものなのかなとも思うし」

――とにかく音楽家としての横山さん史上においても、いちばんの難局であり、大きな転換点だったと。

「そう。いつもは圧倒的にリフとかメロディが先だったから、タイトルから発想していくっていうのは、小さなスイッチのようでいて、自分の中では案外オオゴトだったかな」

――それだけ気持ちとメッセージのこもった作品なんですが、個人的にまず強調しておきたいことは、純粋にサウンドとして、パンクロックとして心底かっこいいアルバムだということで。

「ホント? それがいちばんうれしいな」

――意味合いとかメッセージ性にフォーカスされがちな作品だと思うんですが、そこだけに特化されちゃうと勿体ないっていうか。

「いい曲、そろってるでしょ?(笑)」

――ホンットに! 冒頭の「We're Fuckin' One」しかり、「Save Us」なんかはすごくポップだし。

「うん。でも、「Save Us」なんていかにもKen Yokoyamaな曲だから、こんな曲いつでも書けるけど、恥ずかしいけど持ってくわってメンバーに言って(笑)」

Ken Yokoyama

Ken Yokoyama

――ギターリフなんて、まさに横山さんの真骨頂ですよね。

「そう、そう。サウンドに関しては急激に変わるものでもないし、もうこれが自分のサウンドだから。今回は、いろんな意味で生々しく録れたかなと思って。音質も生々しいし、いつもとレコーディングの感じも違って。メンバーチェンジがあったからかもしれないけど、みんないつもより少しだけシリアスだった。いつもはノリ重視っていうか、それいいんじゃない?みたいな感じでやってんだけど、今回はメンバーがこういうアルバムになるってことを理解してくれてたんじゃないかな」

――そのレコーディング中で、特に印象に残っていることって?

「そうだな……やっぱり歌入れの時の気分がこれまでとは違ったことかな。オレ、そんな歌うまくないし、表情豊かに歌えるわけじゃないから、キレイに歌うことをなんとなく心がけてたんだけど、今回はそういうことはどーでもいいと思って、かなり感情的に歌って」

――何より気持ちを込めることに重点を置いて。

「うん。そうしたい気分だったのかな」

――あぁ。アルバムが「We Are Fuckin’ One」から幕を開けるのも象徴的ですよね。

「やっぱこれは1曲目に持ってきたくて。曲順はいちばん最後に決めたんだけど、やっぱコレっしょ!って思って」

――<もし身勝手な振る舞いを止めれば みんなが心を開き始めれば それだけオレ達はひとつになれるんだ(和訳)>っていう、ほとんど道徳的とも言えることをパンクロックが叫んでいることに、今のこの国の状況が現れているような気がして。

「パンクロックがっていうか、オレが道徳的なこと歌うこと自体オカシイでしょ?(笑) 本来だったら。でも、3.11以降はコレが本当なんだと思うのね。それ以前は態度として、反道徳的であれ、反体制的であれっていうものがあったけど。もちろん今も反体制的な気持ちは変わらないけど、 大人として、社会の一員として、ロックンローラーであれ、サラリーマンであれ、小売店の人であれ、みんな道徳心を今まで以上にきっちり持たないといけないと思ってて。オレ、パンクロックで闇雲にアンチを叫ぶのもいいと思うけど、若い人を育てる役割があるとも思ってて。だって、オレ自身がそうやって育ったから。パンクロックもそうだしロックンロールからもいろんなことを教わって」

――まさに8曲目の「Sold My Soul To Rock’n Roll」で歌われてますね。

「うん。学校とかより、何しろロックンロールにいろいろ教わって育ってきたから。そう考えると、震災以降、自分がすごく道徳的になっているのは、ごくごく自然なことで。むしろ社会の機運は、道徳的であることはいいけれども、経済しっかりしましょうよとか、訳のわからない論調になってるでしょ? ちょっとポイントがズレてると思う。政治とは別のチャンネルで音楽家が若い人に生きる道筋を示してあげたいなって気持ちもすごくあって」

――若い人に対しては特に影響力を発揮する表現ですからね。

「そうだね。でも、道徳的なパンクって、すごくパンクでしょ?」

Text●奥村明裕 Photo●中川有紀子

PROFILE

1969年10月、東京都出身。1991年 に結成したHi-STANDARDのギター&ボーカル。2004年に、アルバム『The Cost Of My Freedom』でKen Yokoyamaと してソロ活動開始。 レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」の社長も務める。2011年9月18日に ロック・フェス『AIR JAM 2011』を横浜スタジアムにてHi-STANDARDで主催する。そこで、11年 ぶりにHi-STANDARDの活動を再開させる。2012年9月15・16日に、宮 城・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区風の草原にて「AIR JAM 2012」を開催。12月1日(土)・札幌KLUB COUNTER ACTIONより、KenYokoyama「Best Wishes Tour」をスタートさせる。


TICKET

Ken Yokoyama 「Best Wishes Tour」

2012年
12月1日(土)札幌 KLUB COUNTER ACTION
12月7日(金)長野 CLUB JUNK BOX
12月8日(土)新潟 LOTS
12月10日(月) 秋田 Club SWINDLE
12月11日(火) 青森 Quarter
12月13日(木) 盛岡 Club Change WAVE
12月14日(金) 仙台 Rensa
12月16(日) 石巻 BLUE RESISTANCE
12月17日(月) 大船渡 FREAKS
12月19日(水)宮古 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
12月20日(木)八戸 ROXX
2013年
1月11日(金)宇都宮 HEAVEN'S ROCK VJ-2
1月15日(火)清水 ark
1月16日(水)名古屋 Diamond Hall
1月18日(金)大阪 なんばHATCH
1月19日(土)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
1月21日(月)広島 Cave-Be
1月22日(火)松江 canova
1月24日(木)長崎 DRUM Be-7
1月25日(金) 福岡 DRUM LOGOS
1月27日(日)鹿児島 CAPARVO HALL
1月28日(月)熊本 DRUM Be-9
1月30日(水)大分 DRUM Be-0
1月31日(木)松山 SALONKITTY
2月2日(土)高松 DIME
2月3日(日)京都 MUSE
2月7日(木)東京 ZEPP TOKYO

公演・チケット情報



RELEASE

5th FULL ALBUM
『Best Wishes』

11月21日リリース
2300円
PZCA-59
PIZZA OF DEATH RECORDS


2012.11.27更新

今週のこの人 ラインアップ

  • 山田和樹
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