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星野 源

――2曲目の『パロディ』も“嘘”、“妄想”、“誤魔化せ”とか、『夢の外へ』とも繋がっているようなキーワードがちりばめられている気がしたんですが。

「被っちゃってますね(笑)。わりと昔っから、そういうことをずっと考えちゃってるんでしょうね」

――歌詞でこういうことを書こうって決めてるわけじゃないけど、出てきちゃうということですか。

「そうですね。作っている時は、被っているとかあんまり気付けなくて」

――さらに3曲目の『彼方』は、紙資料を見ると“群馬県のソウルミュージック”がテーマだったということで、何故群馬なのかという。

「特に意味はないんですけど。単純に、都会の匂いがしないけど田舎ってわけでもない場所って何処だろうって考えた時に、群馬だったんですよね。海もないし。海感じゃなく、土感のソウルやリズム&ブルースを自分なりにやれたらいいなって思ったんで。で、レコーディングの時に、『群馬のソウルで』ってみんなに言いながら作っていったっていう。その方が伝わるんですよね。『今のテイクは千葉だったね、じゃあこっちのテイクにしよう』とか(笑)。こういうフレーズ弾いてって細かく言うこともありますけど、どっちかっていうと漠然としたイメージの方が伝わるので。それで群馬県って言っていただけなんです(笑)」

――他の曲でも、そういうイメージで伝える場合ってあるんですか?

「ありますね。『パロディ』のサックスソロは、とにかくエロい感じでって言っていたんですけど、それだと伝わらなかったので、『愛人が5人くらいいる感じで』って言ったら『わかりました!』と(笑)。そうしたら、いいテイクが録れました(笑)」

――音楽やってる方は、想像力が豊かですから、その賜物ですね(笑)。

「僕は楽譜が書けないし読めないんです。音楽理論を知らないので、そういうふうに伝えることしかできないから、やっているっていう。ただ、やってくれる人も、ビッチビチに決められるより、こっちの方が楽しいと思うんですよね。自分が想像して演奏するんで、それだけ自分の余白ができるし、身が入ると思う」

――そして、4曲目の『電波塔』は“House ver.”と名付けられた一人自宅録音ということで。打ち込みを全く使用しない宅録って、今では新鮮ですよね。

「そうですね、みんな打ち込みをしますからね。前にやった時期があったんですけど、忘れちゃって、もう一回覚えるのが面倒臭いだけなんですけど(笑)」

――紙資料を見ると“バスドラの代わりに机を叩いた”ってありますけど、そういえば自分も、子供の頃とかになんちゃって自作曲みたいな感じで、机や缶を叩いてテープに録音していたなって思い出しました。

「そこから変わってないです。その気持ちで作るのがハウス・ヴァージョンって、いつも決めているんで。レコーディングでがっつりやるのと、家で自分だけでひっそりやるっていう、どっちも違う楽しさがあるんですよね」

――“東京タワーで使われている鉄骨の約3分の1が実は戦車からできている”というエピソードから書かれた歌詞だそうですが、今の時期に東京タワーを描くのも星野さんらしいのかな、と(笑)。

「そんなに狙ったわけじゃないんです(笑)。たまたまその曲を作っている時にスカイツリーが開業しましたけど、最初に出てきたのは“錆びた鉄が”っていうフレーズで。どう広げたらいいんだろって思っていたら、東京タワーの話を思い出して。だから、エピソードありきなんですよね。戦争中の話と今の話が行き来するイメージで作って。一行過ぎたら戦時中から今に飛ぶ、みたいなことがやりたかったんです」

――そういうことができるから音楽って面白いですよね。

「そうですね。歌詞だけだとわかりにくいけど、メロディがあって伝えやすく切り替えられたりするので」

――そして、ジャケットも爽やかで、印象的です。

「最初は青っぽくしたいっていうのからはじまって。背景にある湖みたいなものは、絵を壁に貼っているだけだし、椰子の木も植木鉢に刺さっていたりするし、そういう偽物感で夏っぽさを出せないかなって思ったんですよね。あとは細野(晴臣)さんのイメージですね、水兵さんの格好をしたのも、『泰安洋行』の裏ジャケのコスプレの影響です。コスプレ、楽しかったですね(笑)」

――また、SAKEROCKも動きだしましたね。(田中)馨さん脱退後の初ライブが9人編成ということで、驚かされました。

「アイディアとしては、2000年にバンドを組んだ時に僕がやりたかったことが元だったんです。僕、最初からマリンバがやりたかったんですけど、お金がなくてマリンバは買えないし、メンバーもいなかったんで、泣く泣く少人数でやっていたんですよね。それを、今回ちゃんとやりたいなと思って。だから、突飛なことをしている気分はないんです。わりと、地続きっていう。だから、ほんっとに最初の頃のSAKEROCK知っている人は、昔みたいだねって思うんじゃないですかね。最初はトロンボーンもいなかったし、胡弓でメロディを弾いたり、あとはサックスがいたり、いろんなヴァージョンがあったんですよ」

――あの4人でやっている時期が長かったけど、元々は自由なバンドであると。

「そうですね。だんだんバンド感を追求するのが楽しくなってきたっていうのもあったんですけど、ただバンド感は一応行く所まで行ったと思っていたので。新しいSAKEROCKも喜んでもらえて、嬉しかったですね」

――いろいろ動きだして、忙しそうですね。

「この夏はいくつかフェスも出演しますしね。今年が一番忙しいっていう年を、毎年更新している気がします(笑)。まだ行けるよねっていう」

――星野さんにとっては、それはよきことですか?

「よきことです。これがなるべく続けばいいかなって思います」

――タフですね。

「いや、欲深いだけかもしれないですよ」

――でも、表現者としてはある意味、欲深さって必要じゃないですか?

「そうですね、そうかもしれない」

星野 源 動画コメント

Text●高橋美穂 Photo●吉田圭子

PROFILE

‘81年、埼玉生まれ。俳優、文筆業、映像ディレクター、SAKEROCKのリーダーとしても活躍。俳優として近年では、ドラマ『ゲゲゲの女房』(NHK)、『去年ルノアールで』(テレビ東京)、『11人もいる!』(テレビ朝日)、映画『ノン子36歳(家事手伝い)』(08年/熊切和嘉監督)、『少年メリケンサック』(09年/宮藤官九郎監督)、舞台『サッちゃんの明日』(作・演出/松尾スズキ)などに出演。'10年6月1stアルバム『ばかのうた』をリリース。’11年9月に発売した2ndアルバム『エピソード』でCDショップ大賞準大賞を受賞。J-WAVEの深夜番組「RADIPEDIA」24:00-26:00では、月曜日のナビゲーターを担当中。時代に左右されない普遍的な歌は、世代性別を超えて多くの人に支持されている。

オフィシャルホームページ


TICKET

「JOIN ALIVE 2012」
7月22日(日) 北海道 いわみざわ公園
「FUJI ROCK FESTIVAL' 12」
7月28日(土) 湯沢町苗場スキー場
「Slow Music Slow LIVE '12 in 池上本門寺」
8月24日(金) 東京 池上本門寺 野外特設ステージ
「SWEET LOVE SHOWER 2012」
9月1日(土) 山中湖交流プラザ きらら
「ENDLESS SUMMER BREEZE 2012」
9月2日(日) 名古屋 日本ガイシホール
「OTODAMA '11-'12 〜音泉魂〜」
9月8日(土) 大阪 泉大津フェニックス

公演・チケット情報



RELEASE

NEW SINGLE
『夢の外へ』
7月4日(水)発売
1890円(初回盤)
VIZL-476
SPEEDSTAR RECORDS
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2012.07.03更新

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