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星野 源

星野源の3rdシングル『夢の外へ』が素晴らしい! 陽光が降り注ぐ世界へと、優しく手を引いて連れ出してくれるようなポップチューン。資生堂のアネッサのCMソングとしても流れているが、その爽やかなシチュエーションも似合っている。加えて、意味を反芻したくなる歌詞の魅力は相変わらずだ。SAKEROCKのリーダーや俳優としても飛躍の季節を迎えた彼の今を訊いた。

――既にCMソングとして流れている『夢の外へ』ですが、まずは化粧品と星野さんの歌っていう組み合わせが意外でした。

「曲を作るより先にCMのお話をいただいたんですけど、単純に、やりたいと思いました。2ndアルバムの『エピソード』、次の2ndシングルの『フィルム』ときて、聴いただけでぐっと惹き付けられるようなもっと明るい曲を作りたいと思っていたんです。それをやるには、15秒で判断されるCMっていい場所というか。自分がやりたいと思っていた次の曲のイメージにマッチしていたんですよね。CMの曲を作ると言うと否定的なことをいう人もいますけど、どっちかっていうと、今回のCMのオファーは、自分のやりたいことに向けて、いい感じに背中を押してもらった感じがしています」

――星野さんってパーソナルな世界観を歌われてきたイメージがあるんですけど、今回のCMだったり、これまでの作品がチャートの上位に入ったり、自分の歌が広がってきている現状については、どう思ってらっしゃいますか?

「めちゃくちゃ嬉しいです。もっといろんな人に聴いてもらいたいと思います。ただ、今回の曲調はみんなで聴いてもいいかもしれないけど、歌詞の内容は今まで通り、わりと一対一みたいなパーソナルな感じがあるので、その姿勢が変わらないまま、いろんな人に聴いてもらえればいいなって」

――理想的な広がり方ですよね。

「そうですね。そうなったらすごく嬉しいです」

――こういう状況って、ソロで歌い始めた当初は想像していましたか?

「全然してない(笑)。でも、わかってくれる人だけわかってくれればいいやっ、ていう考えではなかったんです。取り敢えず自分の全部は出すけど、いろんな人が面白がってくれれば一番いいなって。で、インディーズからやっていたんで、どういう居場所が自分にはあるかって、うろうろしていたんですけど、何処にいても居心地が悪かったんですよ。役者としてもそうなんですけど、音楽業界でもシンパシーを同世代で感じる人がいなくて。いろんな場所の中には、大衆的なものはいらないって人がいたり、大衆だけに向けてやっている人たちがいたり。でも、僕はどっちもできる場所ってないかなって思ってきて、それで今やっと自分なりの居場所ができてきた感じがしているんですよね。高校を卒業してバンドをやり始めてから12年くらい経って、やっとできてきたな、楽しいなって感じています」

――居場所がなかったから作った、っていう自負はありますか?

「んー、あんまり作るぜって思っていたわけではないんです。何処かに入る努力をしない努力をしていたら(笑)、いつの間にか自分だけの場所ができていて、これでよかったんだ、ほっとしたわっていう」

――『夢の外へ』の歌詞にも“僕は真ん中をゆく”ってありますけど、まさに星野さんのスタンスが宣言されていますね。

「そうですね。実は意識して書いたわけではないんですけど、多分そういうことなんだろうなって。単純に、僕は妄想とか夢の中が大好きで、漫画やアニメ、ドラマや映画に支えられて、現実逃避をすることで何とか楽しく生きてこれたんですよね。もちろん、現実世界の楽しさも絶対にあって。“夢の中”と“現実世界”のどっちかになるじゃないですか。でも、どちらかだけの世界ではなくて、僕は真ん中をいきたいぞっていうことを書いたんです。こうやって、取材を重ねていくうちに、自分のポジションとかに関しても繋がっていることがわかってきて、面白いなって思っています」

――『夢の外へ』はタイトルからして印象的ですよね。井上陽水さんの『夢の中へ』っていう曲もありますけど、夢の中を描く音楽って多い中で、『夢の外へ』っていう。

「そうですね。『夢で逢いましょう』もありますけど、そういう趣旨の曲は多いじゃないですか。夢の中で会えたら素敵ねっていう。そういう曲自体は好きなんですよ。大瀧詠一さんの『夢で逢えたら』とか。でも、真面目に考えて、自分に置き換えた場合、ほんとにそれで満足かなって思ったんですよ。夢の中で会えたら確かに素敵だけど、現実でも会いたくないのかと。で、外に出るみたいな歌にしたかったんです。アネッサっていうのもあったし、自分の歌に、家の中から始まって外に出ていくっていう流れがあったので。『エピソード』の中の『日常』では、家の中にいても毎日進むぞって歌っていたんですよね。で、『フィルム』は家の中から外を見て、出ても大丈夫だろって言っているっていう。その次の曲だから、実際に外に出るような歌詞にしたかったんです。そこで、さっき言ったような、いつも思っていた違和感みたいなものが解消できるというか。ただ、このタイトルにしたのは後で、もっといろいろ考えていたんですけど、これかなあって決めたくらいで、井上陽水さんの曲を思い出して(笑)。これだど、ギャグっぽく見られちゃうかなって思ったんですけど、そういうつもりじゃないから、これでもいいかって」

――曲はとにかく陽性だけど、歌詞は現実を映し出していますよね。そのギャップもいいと思いました。

「どっちかっていうと、今回はポップスにしたかったんで、あんまり言葉が入ってこない方がいいと思ったんですよ。歌全体として聴いてもらった方が、ポップスとして成立すると思ったし、その方がサウンドに引っ張られて、より多くの人が聴いてくれるんじゃないかなって。歌詞がはっきりし過ぎちゃうと、説教みたいになっちゃうと思ったんで、ぱっと聴きよくわからない、でもじっくり聴くと面白くって、たまに“僕は真ん中をゆく”とかっていう言葉がグッと入ってくるっていう、そういうバランスを考えました」

――私は“意味の外へ連れてって”っていう歌詞もグッと入ってきましたね。セオリーに縛られないぞっていう意思が表れているような気がして。

「それもありますね。あと、単純に、僕は歌詞に意味を付け過ぎちゃうので、意味を付け過ぎるなよ俺、っていう歌詞です」

――自制?(笑)。

「自制です(笑)。わからない歌詞って苦手なんですけど、わからない歌詞も認めて書こう、感覚で書いて、自分では納得いっていないけど、音的に嵌っている歌詞を許していこうって、自分に向けて書いているところもあります(笑)。あと、わからないことを悪とする人もいるけれど、それは違うんじゃないかって想いとか。だから、一個の言葉に幾つかの意味があるんですよね」

Text●高橋美穂 Photo●吉田圭子

PROFILE

‘81年、埼玉生まれ。俳優、文筆業、映像ディレクター、SAKEROCKのリーダーとしても活躍。俳優として近年では、ドラマ『ゲゲゲの女房』(NHK)、『去年ルノアールで』(テレビ東京)、『11人もいる!』(テレビ朝日)、映画『ノン子36歳(家事手伝い)』(08年/熊切和嘉監督)、『少年メリケンサック』(09年/宮藤官九郎監督)、舞台『サッちゃんの明日』(作・演出/松尾スズキ)などに出演。'10年6月1stアルバム『ばかのうた』をリリース。’11年9月に発売した2ndアルバム『エピソード』でCDショップ大賞準大賞を受賞。J-WAVEの深夜番組「RADIPEDIA」24:00-26:00では、月曜日のナビゲーターを担当中。時代に左右されない普遍的な歌は、世代性別を超えて多くの人に支持されている。

オフィシャルホームページ


TICKET

「JOIN ALIVE 2012」
7月22日(日) 北海道 いわみざわ公園
「FUJI ROCK FESTIVAL' 12」
7月28日(土) 湯沢町苗場スキー場
「Slow Music Slow LIVE '12 in 池上本門寺」
8月24日(金) 東京 池上本門寺 野外特設ステージ
「SWEET LOVE SHOWER 2012」
9月1日(土) 山中湖交流プラザ きらら
「ENDLESS SUMMER BREEZE 2012」
9月2日(日) 名古屋 日本ガイシホール
「OTODAMA '11-'12 〜音泉魂〜」
9月8日(土) 大阪 泉大津フェニックス

公演・チケット情報



RELEASE

NEW SINGLE
『夢の外へ』
7月4日(水)発売
1890円(初回盤)
VIZL-476
SPEEDSTAR RECORDS
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2012.07.03更新

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