――篠田さんも含めて、今回で最後のメンバーが4人(篠田の他に、天野史朗、大道寺梨乃、中林舞)もいると、テンション的に高まることもあるんですか?
篠田「あるに決まってるないじゃないですか!」
北川「正直、オールスターメンバーでの作品は“これで最後”みたいなのは……ありますね(笑)」
篠田「ようやく落ち着きましたけど、3、4日前までは集団トランスみたいになってましたよ」
――気持ちが高まりすぎて(笑)。
北川「それだけが原因じゃないと思うけど……」
篠田「ないけど! でもそれが原因でもあるよ!」
一同「(爆笑)」
――ブログにアップされた大道寺さんの「声明文」も熱いですね。
北川「私はあの声明文のアジテーションには反感を持っているところがあるんですが(笑)、良いところもあって一部台本に使っています」
篠田「“最後にかましたる!”みたいな気持ちがありますからね」
――2010年の『SHIBAHAMA』初演が東京芸術劇場で、今回の『りんご』がKAAT 神奈川芸術劇場と、いずれも大きい劇場での制作となりましたが。
篠田「すごくいいですね」
北川「うん、すっごくいい。いつもこういうところでやりたいくらい」
――快快というと、ライブハウスやバー、銭湯、民家などいわゆる非劇場空間もよく使ってきましたが。
篠田「いや劇場も好きですよ。ただ汚いイメージの劇場がイヤなだけなんです。今回みたいな劇場なら全然いいです」
――舞台と客席の差をできるかぎりなくして、お客さんを舞台に巻き込むパーティ的な空間づくりについてはどうですか。
篠田「それに関してはいろいろやってきましたけど、『SHIBAHAMA』のツアーでようやくカタチになったっていうのがありますね」
――お話を聞いていると、『SHIBAHAMA』で行くところまで行ったことで、むしろオーセンティックな演劇への回帰すら感じますね。
篠田「回帰というか、今回は初めて快快として“演劇”を必要とした公演と言えるかもしれないですね」
北川「演劇って言いたくてしょうがないんです」
篠田「演劇がなかったら私たちは一緒にやってなかったわけだし、“演劇は、私たちがモノをつくるときに欠かせないものだ”ってことをはっきり認識したんですよ。いまごろになってようやく(笑)」
――せっかく認識したのに、篠田さんにとっては今回が最後の新作になってしまうのはもったいないですね。
篠田「でも、まあ7年やりましたからね。最初は2年で解散しようと思ってたんで」
北川「意外に長かったよね」
――快快自体は続くんですよね?
北川「はい。でも、いままでのカタチでは難しいかもしれないですね」
――辞めていくメンバーも、今後もサポートで関わったりはするんですか。
北川「海外でツアーをするときや、昔の作品を再演するときには参加してもらうこともあると思います」
――俳優が3人も抜けてしまうのは大きいですね。
北川「俳優って意識的に増やしたことがないので、どうやって補充すればいいのかわからないんですよ」
篠田「私、さっき突然思いついたんだけどさ、いいデブがいるんだよ」
――有名な方ですか?
篠田「いや、“デブキャラがいない”って話は前々からあって、ちょうどいいデブいたんだけど……あれ、誰だっけ?」
北川「(無視して)でも、再演を一度、別の演出家にやってもらうっていう計画はあるんです」
――北川さんも、最近になって肩書に「演出家」って入れることがありますよね。
北川「入れたり、外してみたりしてますね(笑)。でも、私がっていうよりは、全然新しい人とやってみたいんですよね」
篠田「ぜったい面白いですよ。違う演出家が入ったことでこの人たちがどんなふうになるのかっていうのは、私ですら見たいですもん(笑)」
――一方、篠田さんはバンコクでイベンターとして?
篠田「それもありますけど、まずはライトノベルを書きます」
――それ、ずっと書いてますよね(笑)。出版社から依頼されたの1年以上前じゃなかったでしたっけ?
篠田「いいんです! 今年の12月に発売予定ですから」
――大道寺さんは?
北川「梨乃はイタリアの劇場で働くみたいです」
――天野さんはデザイナー?
北川「天野くんはわからない(笑)」
篠田「天野はフィリピンとかに行きたいって」
――みなさん、世界に散りますねぇ。中林さんも俳優として順調にステップアップして。
北川「ホントがんばってほしいですよ」
――しかし、自分たちで選択したこととはいえ、わかりやすく転機が訪れましたね。
篠田「みんな大学生の頃から一緒にやってるので、そろそろ違う環境に行きたいってことはあると思います。少なくとも私はそう。快快を辞めたいというよりも、バンコクでちゃんと面白いことをするには、いったん整理しないとどっちもダメになってしまうから」
――北川さん個人の展望はどうですか?
北川「いろいろ考えてますよ。ただ、まずはちゃんと毎日2時間ぐらいずつ書くとか、そういう地味なところからがんばります(笑)」
――ぼくの周りには、普段は演劇を観ないけど、快快だけは観るっていう人がけっこういるんですが、そういう非演劇ファンも惹きつけるような魅力はキープしてほしいですね。
北川「でも、なかなか難しいですよ。パーティにはパーティ好きしか来ないし、演劇にはやっぱり演劇好きしかこない。まあ、パーティをすべて楽しみつくしたような人は来てくれるので、うれしいですけど」
篠田「正直、ちょっと“アーティストズ・アーティスト”になりすぎてしまったって感じはありますよね。この前のトヨタ(『トヨタコレオグラフィーアワード』)でも思ったんですよ。振付家のコンテストでダンサー以外で唯一、決勝まで残ったわけで、面白いことをやっている人たちからは、"君たちがどう考えても一番面白いよ"って言われるんですけど、最終的に〈ダンス〉というジャンルのド真ん中には受け入れてもらえない。〈演劇〉でもそう。もう身を沁みてわかりましたね。それでイヤになったりもしたこともありましたけど、まあそういうもんかなって」
――難しいところですね。
北川「だからね、“全然、面白いものないわ〜”って人には、ぜったい観にきてほしいです」
篠田「感想が聞きたいよね」
北川「最後まで観ると、すごいものに出会えるからね」
――楽しみです。
篠田「これで私、最後なんで、ホント観にきてくださいよ!」
Text●九龍ジョー Photo●源賀津己
ふぁいふぁい 2004年、多摩美術大学映像演劇学科の学生による卒業制作として劇団を旗揚げ。当初は劇団名として小指値(こゆびち)を名乗っており、2008年に改名。集団制作という独自のスタイルで創作を続け、2009年からはドイツ、シンガポール、タイなど世界各地でも公演を行っている。
快快(FAIFAI)HP
