オリジナル・アルバムでいうと‘05年の『SCENE III』以来となる『SCRAMBLE』。つまりは7年ぶりというわけで、ただし、その時間を「膨大」という言葉で記号化し、作品のリリースを「久々」と形容して紹介すると、あまりに単純なことになってしまう。そもそも、アルバムを完成するためにどれくらい時間がかかったなんてことは基本的に作品の本質とかけ離れたものであるし、いうまでもなく、重要なのは完成するまでの時間の中でアーティストがなにを考え、結果、どのような作品を生み出したのかということである。まして、『SCRAMBLE』でASKAが歌っているのはラブ・アンド・ピースで、いまの日本においてそのことを歌うとなれば、とくに作詞面においては慎重にならざるを得ない。強い説得力を持つ言葉が必要だからである。しかし、ASKAは慎重だった。だからこそ、やさしくて、強くて、生々しい希望のアルバムを生み出すことができたといえる。
ーー最初の質問はシングルの定義についてなんですけれど、とにかくポップであるべきとか、タイトルはシンプルでキャッチーであるべきとか、シングルとはどうあるべきだとASKAさんは考えていますか?
「あんまり考えてないかな……。どの楽曲がシングルになってもいいという気持ちで作っていることが多いし、ただ、共有は重要かな。たとえば自分の生活の中で遭遇した出来事をテーマにしたとき、“わかるわかる”って共鳴してもらえるとうれしいからね」
ASKA
ーーアルバムはそういう作品が集まったものになればいいと考えているということですか?
「あんまり考えてないかな(笑)。どれも自分が納得できる楽曲であればいい」
ーー「あんまり考えてない」というのは、昔からそうなんですか?
「振り返ったらそうなのかもしれない。本人は毎回、作ることだけで必死(笑)」
ーーリスナーとしてのASKAさんはポップなものが好きで、だから意識しなくても自分の作品もポップなものになるという解釈はどうですか?
「音楽をマニアックに聴くことがないんだよね。マニアックな音楽はたしかに存在しているし、そのファンもたくさんいらっしゃいますけど、ぼくにはよくわからない。自分から生まれるものも、聴くものも、シンプルに気持ちがいいと思えるものであればいいんじゃないか、ということです」
ーー会話と同じで、相手が理解できるように伝えたいという意識はありますよね?
「デビュー当時は自分の楽曲がウケるのかどうかがわからなかった。自信もなかったし。ただ、自分好みのメロディが自然と、堂々と出せる時期になってからは意識しなくなった」
ーー具体的にいつくらいのことですか?
「デビューして7年か8年くらい経ってからかな」
ーーいまはもう十分な経験値があって、だからASKAさんはそこに甘えて制作することもできると思うんですけど。
「甘えることはないね。そもそも作品に対してはつねに疑いを持っているので」
ーー批評眼を持って臨むということですか?
「そう」
ーーその逆のときもあるわけですよね?
「アーティストってそういうものでしょ」
ーー主観的になったり客観的になったりするところが?
「そう。それに、レコーディング作業では第三者のディレクションもある。アーティスト本人が入り過ぎていることに気づかせてくれる人がいる」
ーー今回の制作はどうでしたか?
「もちろん瞬間は入り込んで主観的になってはいるよ、基本的には。ときどきハッとして引くけどね」
ーーその『SCRAMBLE』はアルバムの中でいちばん古い、’08年発表のシングル曲から始まるんですけれども。
「その『UNI-VERSE』に関していうと、世の中に広がらないわけがない、これが広がらなくてどうする、っていう自信があった楽曲なのでアルバムのアタマに持ってきたんですよ。4年も前の作品であろうと、新しいアルバムの入り口として、アルバムを好きになってもらうにはふさわしいものだと思ったからね」
ーー『UNI-VERSE』は、使い古された言葉にはなってしまうんですけど、ラブ・アンド・ピース……。
「うん、ラブ・アンド・ピース」
ーー『UNI-VERSE』はASKAさんのラブ・アンド・ピースがASKAさんの作品の中でもっともわかりやすく、やさしく表現されていて、しかも、そのあとの創作活動に不安が生じるんじゃないかというくらい、スケールの大きい作品になっていると思うんですよ。
「それはね、『心に花の咲く方へ』(‘03年発表の9thシングル)を作り上げたときと同じ。これを歌ってしまったら表現することはもうないと思って、だから、あのあとは次の作品を発表するまでかなり時間が空いてしまったんですよ。『UNI-VERSE』も同じ感覚があって、だから、できるじゃないかって思ったんです」
ーー大きな自信を持てたということですよね?
「そうです」
ーーにもかからわず、アルバムはなかなか……。
「できあがらなかった(笑)」
ーーもともと、今回のアルバムはいつくらいに出す予定のものだったんですか?
「3年くらい前かな……」
ーーその3年前に完成しなかったのはどうしてですか? 曲ができあがらなかったんですか?
「いや、曲はいっぱいあって、歌詞なんだよね。一度世に出してしまうと作品になってしまうわけだから……」
ーーこだわらないわけにはいかなかった、と?
「とはいうものの、できるときはできる、できないときはできないって、いろんなアーティストがいうことなんだけど、それを正当化しすぎていた部分はあって(笑)、もっともっと入り込めばちゃんと作品になったと思うので反省はあります」
ASKA
ーーとはいうものの、この3年間ずーっと忙しかったですよね。カバー・アルバムを出したり(‘09年発表の『STANDARD』と’11年発表の『BOOKEND』)、セルフカバー・アルバムを出したり(‘10年発表の『12』と『君の知らない君の歌』)、ツアーを展開したり、スペシャル企画のライブをしたり……。
「いつもなにかやってたよね。ただね、セルフカバー・アルバムは新しい作品が出てこそのものだった。セルフカバーが先に出ると活動が止まって見えちゃうし、気持ちの余裕を感じてもらえないし、流れとしてキレイじゃなかった。曲のストックはありすぎるくらいあったんだけどね……」
ASKAから最新のコメントが到着!
Text●島田諭 Photo●吉田圭子
‘79年、CHAGE and ASKA(当時はチャゲ&飛鳥)としてシングル『ひとり咲き』でデビュー。’87年にはシングル『MY Mr.LONELY HEART』を発表し、ソロ活動を本格的にスタート。代表曲『はじまりはいつも雨』は、ミリオンヒットを記録。7年ぶりのオリジナルアルバム『SCRAMBLE』を発表し、12月からは全国ツアーを敢行する。
オフィシャルホームページ
『ASKA CONCERT TOUR 12>>13 ROCKET』
⇒12月14日(金) 東京・オリンパスホール八王子
⇒12月19日(水) 千葉・森のホール21
⇒12月22日(土) 宮城・仙台サンプラザホール
⇒12月23日(日・祝) 宮城・仙台サンプラザホール
⇒12月25日(火)神奈川・神奈川県民ホール
⇒1月5日(土) 大阪・オリックス劇場(旧 大阪厚生年金会館)
⇒1月6日(日) 大阪・オリックス劇場(旧 大阪厚生年金会館)
⇒1月11日(金) 愛知・刈谷市総合文化センター
⇒1月13日(日) 愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
⇒1月14日(月・祝)愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
⇒1月19日(土) 北海道・ニトリ文化ホール(旧 北海道厚生年金会館)
⇒1月20日(日) 北海道・旭川市民文化会館
⇒1月25日(金) 東京・東京国際フォーラム ホールA
⇒1月26日(土) 東京・東京国際フォーラム ホールA
⇒1月31日(木)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
⇒2月1日(金)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
⇒2月3日(日)福岡・サザンクス筑後
⇒2月9日(土)広島・広島文化学園HBGホール(広島市文化交流会館)
⇒2月10日(日)広島・広島文化学園HBGホール(広島市文化交流会館)
⇒2月11日(月・祝)岡山・岡山市民会館
⇒2月15日(金)新潟・新潟県民会館
⇒2月16日(土)埼玉・さいたま市文化センター
⇒2月22日(金)群馬・桐生市市民文化会館
⇒2月23日(土)栃木・宇都宮市文化会館
⇒3月1日(金)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
⇒3月3日(日)石川・本多の森ホール(旧 石川厚生年金会館)
⇒3月15日(金)静岡・静岡市清水文化会館マリナート ホール
⇒3月17日(日)香川・アルファあなぶきホール(香川県県民ホール)
⇒3月19日(火)大阪・オリックス劇場(旧 大阪厚生年金会館)
⇒3月20日(水・祝)大阪・オリックス劇場(旧 大阪厚生年金会館)
『ASKA CONCERT 2012昭和が見ていたクリスマス!?Prelude to The Bookend』
10月17日(水)リリース
6090円
ユニバーサルシグマ
POXS-22020
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『ぴあ&ASKA』
10月16日(火)発売
1000円
A4変型
96P
シンガーソングライター・ASKA初のMOOK本が発売! ロングインタビューはもちろん、堂本剛とのスペシャル対談や、女優・天海祐希や漫画家・弘兼憲史のインタビュー、作家・万城目学によるエッセイ寄稿、CD・ギター・本などの愛用コレクション紹介、本人による映画特選、100問100答、ASKAトリビア、ファンによるアンケートの結果発表、ヒストリー&秘蔵写真など、多彩な企画がもりだくさんの1冊です。さらには情報誌「ぴあ」の名物だった読者投稿企画「はみだしYOUとPIA」も復活。投稿者は、なんとChage! ファンはもちろん、初めての人でも楽しめるMOOKです。
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