――まず、8枚目のアルバム『秘密』が完成した率直な感想から聞かせてください。 |
今回は心の中で思ってる陰な部分をちゃんと言葉にする事が出来たと思ってて。これまで言えなかった事も歌詞にして、曲にして、伝える事が出来た。自分の心のなかの、本当に隅っこを爪で引っ掻いて出してきた感じがしますね。あと、過去の事も改めて振り返ったりもしているので、学生時代の想い出も書いてて。
――シングル「二人」のインタビューでも「学生時代と今を重ねて書いた」と言ってましたね。 |
「二人」は、歌詞のなかに<観覧車>が出てくるんですけど、そのくだりのところは、私の中ではどうしても大阪のエキスポランドが出てくるんです。10代の頃も今も、好きになった瞬間にガビーン! とくる感じとか、せつなく思う気持ちは一緒なんやなって思ったんですよね。
――「学校」という題名の曲もありますね。体育祭の風景を思い起こしたりしました。 |
そうなんですよ。例えば、「ウミウサギ」は、夜中にひとりでドライブしてて、海まで行った時に出来た曲なんですけど、たまに思い切って海ほたるや江ノ島まで行っちゃったりするんですね。行くんやけど、停める場所が分からずに、どこにも降りないで帰ってきたりするんですけど(笑)、高校生や短大生の時に行った海を思い出して。だから、このアルバムは、学生時代に大切だった場所や想い出を今の自分自身と重ねて書いた曲が核になってる作品やなと思いますね。
――1曲1曲の歌詞に情景がとてもはっきり描かれているので、ストーリー性のある曲が多いなと思いました。 |
私の中では過去の記憶が写真として残ってるんですけど、今は、感情の塊を吐き出すというよりも、写真を言葉にしたいっていう気持ちが強いんですよね。しかも、本当に10年くらい経たないと古くならないし、5年くらいでは、その時の感情が強すぎて、まだ歌えないんです。そういう意味でも、今回は、自分だけの感情や、自分から見た景色だけじゃなくて、自分の心のなかに残してきた気持ちや鮮明に残ってる風景、衝撃を受けた言葉をストーリーとして歌えた作品になってるなって思います。
――過去を想い出として語れるようになったって事でしょうか? |
10年経った事で色んな場所に行ったり帰ったりする事が出来るようになった感じはしますね。昔はすごく嫌だったんですよ。過去を羨ましく感じる自分がいたらどうしようと思っていたので、過去を振り返るのが怖かったんです。でも、今は過去を愛おしいと思えるようになったし、ゆっくりと振り返る事が出来るようにもなったのが良かったと思う。ま、でも、もしも、17歳に戻れる魔法の薬が発売されたら、『ちょっと行ってみる?』って思うかもしれないんですけど(笑)、過去の事を過去形で歌っているというよりは、いま心のなかにある想い出を歌ってるなと思いますね。
――メジャーデビュー10周年を迎えた事に関しては、どんな気持ちでいますか? |
10周年としての区切りはまったくないんですけど、10年続ける事が出来たからこそできたアルバムだと思うし、ライブで感じたことも曲にしてて。
――最後の「約束」という曲ですか? <いつかまた逢える日まで元気でいてね>という歌詞が、ファンに向けたメッセージなのかなって思いました。 |
そうなんですよ。「約束」は、曲としてはラブソングなんですけど、ファンの人の事を歌ってて。ライブというのは、私の中では恋なんです。みんなマイクもないのに大声で話しかけてくれるんですけど、その瞬間、本当に一個一個に恋をしてしまう感じがあって。普段の生活のなかでは、初対面の人とすぐに近くなれる事はあんまりないので、余計にグッときてしまうんですよね。そういう風にいろんな人や場所から曲にする衝撃や感情をもらう事が出来て作れたアルバムだなって思いますね。
やっぱり絶対にいちばん後ろの人まで1対1で届くライブをしたいですね。その瞬間瞬間全て1対1で、歌ってる時も1対何千ではなく、つねに1人と1人で「二人」の関係で届けていきたいし、10周年なので、ちょっといつもよりがんばったお祭りができればいいなと思いますね。
取材・文/永堀アツオ
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