─ 『Hi&Lo』のコンセプトや一環したテーマなどはありますか?
藤原「まさにHi&Loというか、ハイエンドなものからローエンドなものまで1つのテーブルの上に置くという感じでしょうか。単純に、アートにおける僕自身の世界観ということになります。売れるかどうかは別として、一応値段を付けていますね。美術館ではなくギャラリーでの開催ということもあって」
─ 何といっても、アーティストのラインナップが凄いですし、それら作品を同列に見せること自体が画期的ですよね。ゲルハルト・リヒターなどは、今では大きな美術館でしか見られない状況ですから。そういった意味でも、他の展覧会とはまったく違った見え方がするのかなと。
藤原「もしかしたら各アーティストには失礼なことかもしれないですし、金銭的なことだけじゃなくアート的な評価でも一緒に並べていいのかなという不安はあります。とはいえ、僕の価値観や頭の中では自然な発想というか、僕個人としてやりたいアート展だと言えます。そのきっかけを村上さんが与えてくれたというか。アーティストのみなさんに嫌われちゃうかもしれませんね。もう売ってくれなかったりして(笑)」
─ 本当に凄いことです。とはいえ、今現在の日本の現代アートシーンでいえば、コレクターの数が少ないなど様々な理由から海外ほど盛り上がりづらい状況もあるのかなと感じるのですが。
藤原「日本のアーティストが海外で売れる現実はあるので、個人的には盛り上がっていないという感覚はあまりないですね。ただ、アートに関しては、まだ理解されていない部分が数多くあるかもしれない。昔からある敷居の高さ、それが邪魔しているのかも。僕は中学生の頃に、おそらく音楽などを通じてニューヨークのアーティストを知りましたが、そこに出会わなかったらいつまでもアート=ゴッホやルノワールみたいに思っていたかもしれません。アート=アカデミック、それだけじゃないことを今回の展示で知ってもらえたら嬉しいですね」
─ 音楽とアートのつながりも大きいですよね。
藤原「僕ら世代にとっては大きいですけど。昔の人たちはどうなんでしょうか」
─ 例えば、ピカソとエリック・サティの関係性とか。
藤原「エリック・サティもまた、敷居が高いというイメージがありますよね」
藤原ヒロシ、村上隆
photo/Toru Kogure
─ 今回は個人所有の作品だけでなく、このために制作されたアートピースも出展されるということですが。
藤原「写真×シルクスクリーンの作品を数点、村上さんのアトリエをお借りして作らせていただきました。村上さん自ら塗料を混ぜてくれたり、シルクスクリーンの版を押さえてくれたりして(笑)。楽しかったですね。僕の作品に村上さんがペイントが施してくれて、エディション作品(ポスター)という形で販売されますが、それは嬉しかったですね」
─ スペシャル・プロダクトとして、フラグメントデザインおよびカイカイキキと、リーバイスR・フェノム、ヘッドポーター、 カンゴール、visvimとのコラボレーション・アイテムも展開されましたね。
藤原「プロダクトに関しては、僕側から出来る提案でしたね。村上さんのフラワーのキャラクターを、僕のチャンネルに落とし込んだ試みです。ご本人からのリクエストは一切なく、自由にやらせていただきました。相手の意志に任せて出来上がったものを受け入れる、その部分は少し似ているかなと思いましたね」
─ 信頼関係が構築されているんですね。
藤原「趣味においての信頼関係があると思います。村上さんから“今後もどんどんやってください”と言ってもらえているので、アトリエを貸していただけるのならやっていきたいですね」
─ 今現在、藤原さんがアートシーンにおいておもしろいと思える点はどんな部分でしょうか?
藤原「アートシーン云々よりも、村上さんのやり方がおもしろいと感じます。GEISAIを始め、自分自身の売り方も含めたマーチャンダイズやマーケティング、今までは御法度だったことやアーティストとしてタブー視されていたことをやって成功しているのが凄いなと。それだけリスクを背負っているはずですから」
─ 逆に物足りないなと感じる点はありますか?
藤原「僕は日本人アーティストは頑張っていると思うんです。しかも、現代アートに関しては、まだマイノリティな格好良さが残っているかなと。今は何でもすぐにメジャーになっておもしろくなくなる状況が少なくないですよね。アーティスト当人たちは広まってほしいという想いがあるかもしれないですが、僕の中ではまだまだアンダーグラウンドやマイノリティな世界が残っている魅力的な分野だと思っています」