ファッション、音楽などのカルチャーにおいて絶大な影響力を持つ藤原ヒロシ。彼が、現代アート界の革命児・村上隆と組んで提示する個展「Hi&Lo」について語った。
Text:鈴木貴視、Photo:齋藤弦
─ まず、『Hi&Lo』の開催に至った経緯を教えてください。
藤原ヒロシ(以下藤原) 「村上さんとは2、3年前から親しくさせていただいているのですが“カイカイキキギャラリーで、何かやりませんか?”とお誘いを受けたのがきっかけです。実はそれ以前に、アドバイザーをやってみたらどうですか? とも言われていて。僕は知らなかったのですが、アドバイザーとは、要はクライアントに対して今買っておくべきアートを提案する人のようですね。村上さんとは、それに近いこととギャラリーで何かをやるということが一致したのが『Hi&Lo』だったのかなと思います」
─ 藤原さん自身が、アートに興味をもつきっかけは何だったのでしょうか?
藤原「明確なきっかけは分からないですが、アートに興味を持ち始めたのはアートと現代アートの違いが分かったときからです」
─ 具体的には、いつ頃の時代のどんな作品になりますか?
藤原「アンディ・ウォーホール、ジャン=ミシェル・バスキア、フランチェスコ・クレメンテ……主に80年代にニューヨークで活躍したアーティストですね」
─ 『Hi&Lo』では藤原さんはキュレーターという立場で参加され、個人で所有されている作品を展示されるということですが、最初に購入した作品は何だったのでしょうか?
藤原「ポスターやシルクスクリーンのようなエディションものを買うことから始まって、30歳を過ぎて初めてバスキアのマスターピースを購入しました」
─ 買われた理由というのは?
藤原「タイミングですね。カタログでたまたまその作品を見て。オークション・カタログが好きなんです。通常のアート作品集は作品自体を見て楽しむものですから、当然その時の世間的なバリューのような情報は掲載されていないですよね。でも、オークション・カタログは価格の相場も知ることができる。いわば、ディノスのカタログみたいなものですよね(笑)」
─ 一つ作品を購入されたことで、それ以前のアート鑑賞とは異なる変化はありましたか?
藤原「基本的には何も変わらないですね。僕自身はポスターやシルクスクリーンのようなものを買うことから始まっていますし、マスターピースのような高価な作品ばかり買っているわけではないですから」
─ 今回出展されているアーティストを拝見すると、ゲルハルト・リヒターやロバート・ラウシェンバーグといった巨匠から、フューチュラやホセ・パルラといったストリートのアイコン、奈良エナミや小村希史など新進系の日本人アーティストまで、実に幅広いラインナップですね。
藤原「それこそカタログのような感じというか」
─ 様々な作品の中で、ご自身が惹かれるような共通項があるとすれば何ですか?
藤原「個人的にはアヴァンギャルドっぽい要素が見える作品が好きです。いい出会いがあれば、まだ知られていないアーティストでも」
─ 奈良エナミさんは、GEISAIで藤原さんが審査されていましたよね。
藤原「そのときに買った1枚を出展していますよ」