壮大なロックバラードで2009年をスタートさせたレミオロメン。
映画の主題歌でもある新曲への思い、そして今年の抱負を訊いた。
Text●宮本英夫 Photo●大崎聡
――『夢の蕾』は、どんなふうに作った曲ですか。
藤巻「『風のクロマ』の曲が出揃う頃にはあった曲なんですけど、詞が書けなかったんです。スケールの大きなメロディだったので、何を乗せてもうまくいかなくて、しまっておいたんですね。それで『感染列島』のお話をいただいた時にこの曲のことを思い出して、映画を見て、それから詞が書けていったんです」
――映画の、どんなところにインスパイアされたんですか。
藤巻「日本に未知のウィルスが来て、医師の方々がその原因を突き詰めていくんですけど、それはつまり自分の愛する人と夢をつないでいくことで…というストーリーに心をうたれて、そのテーマが自分とシンクロしたんですよね。僕らはレミオロメンとして大きな夢を抱いて進んできた道があって、その時々に達成感を感じながら、いろんな人と夢をつないできたんですけど、そういった「つながり」の中に大事なものがあったのかなと思った時に、言葉が出てきたんです。『夢の蕾』の花が咲くためには、いろんな人のエッセンスがすごく作用していて、夢の蕾を介して誰かとつながっているんだなという考え方になっていって、そこから書ききっていった詞です」
――曲調は、レミオロメンらしい壮大なロックバラードです。
神宮司「徐々に感情が高まっていくのが、演奏にも表れていると思います。最初はピアノと歌だけで、そこにハイハットが入って…というふうに、段階をつけて演奏しているので、よりドラマチックになったと思います。サビの爆発力も含めて、この曲にすごく合った演奏ができたんじゃないかと思います。シンプルに、熱い感情を込めることができました」
前田「言葉がストレートに伝わる演奏やアレンジに注意して作っていきました。『粉雪』以降、わかりやすくストレートなバラードは久しぶりな感じがするので、新鮮な感じでできましたね」
――今回はカップリングにも聴きどころがたっぷりあります。2曲目『風の工場』については?
藤巻「『ether(エーテル)』を作った時にはたぶんあった曲です。その時のリアリティとか、タイミングとかがあって、当時は入らなかったんですけど、今なら面白いと思って入れました。どんどん転調してゆく自由度が高い曲だから、その中でみんながちょっとずつ壊れてゆくような感じがいいんですよね。だいたい『風の工場』って何だかよくわかんない、みたいな(笑)。右脳でやってるような感じがすごく良くて」
――サビの「恋のスキル、風の工場」とか、語呂は気持いいけれど確かに意味はよくわからないかもしれない(笑)。
藤巻「この曲は語呂だけです(笑)。でもそこに宇宙があるんです。そういう曲を、久しぶりに引っ張り出してやってみたら、おのおの楽しんで演奏できた上に、『ether(エーテル)』の頃には出せなかったスキルも加わったので、ライブでやるのがすごく楽しみですね」
前田「皆川(真人/ライブのサポート・キーボーディスト)さんとやったから、こういう曲になったんですよね。同じライブをずっと一緒に経験してきて、年も近いし、信頼関係がそのまま音に出ていると思います」
神宮司「いろんなことがいっぱい詰め込まれた、すごく華やかな曲ですね。レコーディングしていても、笑えるような瞬間がたくさんあったし。ティンパニみたいな音がほしくて、バスドラを二個外して、椅子に乗っけて叩いたりとか。すごく楽しいレコーディングでした」
――3曲目『歩調』はすごく懐かしい曲ですけど、これはインディーズの時のままの音源ですか。
藤巻「そうです。リミックスし直しただけで、僕らが20歳かそこらの音のままです。啓介が、カップリングに『歩調』を入れるのはどう?って言ったんですよ。僕も、『風のクロマ』を作ってひとつの節目を越えたあとに、この曲を出すことにすごく意味があるなと思ったんですね。すごく若い情熱のある曲で、3人だけで「何かやってやろう」という思いがあるんですよね」
――どんな気持ちで詞を書いたか、覚えてます?
藤巻「僕は大学4年生で、みんなは就職が決まっているのに自分だけバンドをやっていて、「これでいいのか?」とか思いながら、それでも前に進んで行くという。それは3人もそうだったと思うんですけど。そういう時期のヒリヒリした感情が、この曲にはすごく入っていますね」
前田「久しぶりに聴くと、恥ずかしいという気持ちもありますけど。忘れちゃいけないものがあるなと感じられて、いいかなと思ったんですよね」
神宮司「7〜8年前になるんですけど、よく覚えてます。この曲を録ったのは大学の部室で、隣の部室にブースを作って、コードを引っ張ってきて。Dメロのところのバスドラが難しくて、当時は叩けなくて、別トラックで録らせてもらったんですね。「すごいなあ、レコーディングって」と思いながらやってました(笑)。今ならたぶん、できると思います。さすがに成長しているので(笑)」
――では最後に、2009年の抱負をお願いします。
藤巻「“ひらいた作品”を、いっぱい届けていきたいなと思います。聴いてくれる人の笑顔が目に浮かぶような、そういう作品をいっぱい作りたいです。多くの人に親しんでもらえるような曲を作りたいし、そういうライブをやっていきたいですね」
角川文庫
580円〜660円
- 時空を超えた壮大なストーリー(藤巻亮太)
- 『火の鳥1〜13』手塚治虫
- 「小さい頃に映画で見た記憶があるんですけど、怖い印象しかなくて。でも今読むと、これが面白い! 輪廻や宇宙の大きな流れの中で人が生きていることとか、話が深いんです」
潮出版社
1575円
- 歴史ドラマの決定版(神宮司治)
- 『愛蔵版 三国志』横山光輝
- 「きっかけは『レッドクリフ』を見たこと(笑)。小学校の頃から読んでいたんですけど、映画をきっかけに全巻買って読み直してます。やっぱり面白いですね。長いので読み応えがあります」
