@ぴあTOP > インタビュー > The Birthday
――この新作の特徴のひとつとして、曲の構成はかなりシンプルになっていると思うんですが、そういう意識は?
チバ「セッションする中で、自然にそういう方向になっていたんだと思う。みんなで演奏していて、今のでいいんじゃない?ってことになったら、それでOKだし」
――個人的なOKの基準は?
チバ「何かを狙ったというのは特にないけど、まずロックでありたいというのは思ってた。その上でロックンロールであればいいなって」
――ロックであることとロックンロールであることが見事に両立してますよね。
チバ「そうであるならば、それはいいことだと思う」
――アルバムの先行シングル『涙がこぼれそう』はどんな時に生まれた曲なんですか?
チバ「2ndアルバムのツアーの時に札幌のライブの前にセッションしていて、思いつきでやった曲なんだよね。リハでセッションした曲をマネージャーが1枚のCDにまとめていて、『こんなのがありましたよ』って渡された。その1曲目に入っていたのが『涙がこぼれそう』。意外にいいじゃないかと思って、バンドでやってみたら、すごく良かったので、やることにした(笑)」
――夜の持っている自由で開放的な空気までもが伝わってきました。これはかなり酔っぱらっている状況での歌なのかなと思いましたが。
チバ「ドンピシャ。まんまだね。歌詞は4人でベーシックを録った後に、その日のうちに書いた。で、次の日に歌入れした」
イマイ「この曲を聴くと、40代くらいのコワモテの人でも泣いちゃうらしい。涙がこぼれそうじゃなくて、涙を流す人がいるみたい。これは実話なんだよね」
チバ「レコードになる前にも、ツアーでやってたんだけど、この曲を聴いてた友達が号泣したんですよ。歌詞が染みてきたって言われて、すごくうれしかった」
――この『涙がこぼれそう』は、アルバム全体のトーンを代表する曲でもありそうですね。
チバ「これをシングルにしようっていうのは、満場一致だった」
――1曲目の『あの娘のスーツケース』もアルバムを象徴する曲のひとつと言えそうですね。突き抜けたロックンロールですが、強烈なグルーヴにもやられました。
チバ「この曲をみんなでセッションした時のことは覚えている。その日に録る予定になっていた曲を録り終えてから、まだ歌詞もない状態でやってみたら、みんな、ドンピシャで入ってきて、これはいいなあって」
――アルバムのレコーディングで印象に残った曲というと?
クハラ「僕はアルバムでは『ビート』かな。あと、シングルのカップリングの『レイニー・レイニー』。ドラマーとして、個人的に今までにはなかった気分で演奏したんですよ。曲になりきるという意味では、この2曲はその傾向が顕著だった。こういう曲をさっくり録れたのは収穫ですね。音色も思い通りにできました」
――歌詞も深みがあって、素晴らしいですね。パーソナルであると同時に、グローバルな視点も備えた歌詞だと感じました。
チバ「この曲の歌詞はメロディーのない状態で書いていたものがもとになっている。何かが起こっているぞっていうことは書きたかった」
――イマイさんはレコーディングで印象に残っている曲というと?
イマイ「『タバルサ』は自分の中で70パーセントくらい、こうやってやろうって決めて演奏したんだけど、そこまで決めて弾いて、こんなに気持ち良かったのは初めてかもしれない。今までの自分のやり方と違うアプローチをしたけれど、それが気持ち良かった」
ヒライ「この曲は僕も印象に残っていますね。今までにない曲なんだけど、自然に演奏できたし、すごく好きですね。詞もグッと入ってきた」
――『タバルサ』、名曲ですね。
クハラ「『タバルサ』をシングルにしよう説もあったくらいで」
――チバさんは印象的だった曲は?
チバ「全部、印象的っちゃ印象的かな。形になるまでに色々とあったのは『ローリン』。この曲、最初はこんなにファンキーじゃなくて、もっとテンポが遅くて、キュウ(クハラ)がコンガを叩いて、オレがアコギを弾いていた。でも何回やっても、うまくいかなくて、テンポをあげて、少し前に行く曲にしたら、かなり良くなった。で、イマイ君が頭のリフを弾き始めたら、さらに良くなった」
――ラストの『カーニバル』は夜の持っている自由さ、気持ち良さも伝わってきました。
イマイ「この曲は終わりがない感じがする。もちろん何分かの曲なんだけど、そこでの終わりのない感じ、音楽の楽しさを感じてもらえたらいいね」
ヒライ「気持ちいい曲ですよね。でもそれだけじゃなくて、その中に緊張感があると思いますね」
――『NIGHT ON FOOL』というタイトルはどういういきさつでつけたんですか?
チバ「全部の曲が上がった時に、なんとなくこの言葉を思いついたんだよね。英語の達者な外国人の友達に電話して、文法的なことも確認した。文法的には『NIGHT ON THE FOOL』とか、『NIGHT ON A FOOL』、『NIGHT ON FOOLS』の方が正しいんだけど、最初に思いついたのがこの言葉だったし、響きもこっちの方がしっくりくるなって」
――チバさんがこのタイトルをつけた時、どう思いましたか?
ヒライ「あっ、決まったんですねっていう(笑)」
イマイ「オレは希望が感じとれるタイトルだなって思った。星の光って、明るすぎると、見えなかったりするじゃない? 星は夜だから見える。暗いからこそ、見えてくる希望があるんじゃないかなって。夜って、闇、ダークとは違うんだよね」
――ナイトとフール、このふたつの単語は同時に出てきたんですか?
チバ「「先にフールがあった。ビートルズの『フール・オン・ザ・ヒル』じゃないけど、なんとなくフールという言葉で作りたかったんだよ」
――フールというのは自分自身に対してということもあるんですか?
チバ「多分、それもあるし、自分たちが作ったレコードを聴いて、盛り上がってくれた人たちに対して、というニュアンスもある。バカだねえって(笑)」
イマイ「同じバカなら、聴かなきゃ損ということかな」
クハラ「阿波踊りと一緒ですね」
チバ「たまたまだけど、デビュー・シングルは『stupid』で、3rdアルバムは『NIGHT ON FOOL』というのもおもしろいね」
クハラ「スチューピッドからフールへということですね」
チバ「フールはスチューピッドとはまたちょっと違うんだよね」
――フールの方が自由な感じとか、イカれた感じがありますよね。
イマイ「スチューピッド、フールと来たら、次はなんだろ? クレイジーかな、アブノーマルかな(笑)」
チバ「ジーニアスでしょ(笑)」
一同「おおっ!(笑)」
