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Interview

泰葉 すべてから解放され“本業”歌手として再出発

泰葉

ワイドショーではわからない、シンガー・泰葉の心の叫び。20年間の結婚生活では音楽を遮断していたが、彼女を救ったのはやはり音楽だった。

Text●宮本英夫

許してあげよう、すべての心を

――20年ぶりの歌手活動再開ということで、もしかすると以前の泰葉さんのことを知らない人もいるかと思うんです。なので、改めて「最初に音楽を志したきっかけ」について聞かせてもらえますか。

「入口はロックやポップス、ジャズですね。クラシックの勉強もしていて、一時はマリア・カラスのようなオペラ歌手になってメトロポリタン劇場やスカラ座に出たいと思っていました。でもビートの効いた音楽のほうが好きだったので、まずジャズに行ったんです。しばたはつみさんに弟子入りして、バックバンドでキーボードを弾かせてもらったり、コーラスをやらせてもらったりして、たくさんツアーを回らせていただきました。それが18、19歳の時ですね。猛勉強しましたよ。はつみさんを通して、ライブの楽しさを教わりました」

――そして1981年に『フライディ・チャイナタウン』でデビューを果たします。

「曲もかなりたまっていたので、そろそろデビューしてみないか? と言われたんです。それで『フライディ・チャイナタウン』がちょっとヒットして、勘違いしてしまったという(笑)。音楽業界に対する心構えが甘かったんです。はっきり自分で認めますけど、お嬢様芸だったんです。世間にもまれていないから、弱いんです。ちょっとしたことで挫折して、これは駄目だと思って、体も悪くして、7年間しか活動していなくて、その頃結婚相手とばったり会ってしまい、“もう音楽はやめ!”と思ったんです」

――その頃の音楽はベスト盤などで聴けますが、洗練されたシティ・ポップスですね。

「それは井上鑑さん(アレンジャー)のおかげです。鑑さんがいなかったら、ああいう音にはならなかったと思います。最近また聴き返してみたんですけど、いいものもありますね。スカもありますけど(笑)」

――そして20年間の結婚生活にピリオドを打ち、いま再び音楽の世界に戻ってきました。

「離婚すると決めた時には、音楽は頭にありませんでした。いつかはやりたいなと思っていましたけど、音楽がすべてということではなく、ひとつの要素としてあって、何でもいいから挑戦したいと思っていました。離婚したとたんに、一応芸人の娘なので、しゃべれるからということでバラエティ番組のオファーをたくさんいただいて出まくっていたんですけど、ある日突然、“やっぱり音楽しかない”という思いが湧いてきたんです。それが今年の5月なんですけど、『バラエティはお休みさせてください』とスタッフに言って、それから書いて書いて書きまくりました。まず詞から書いたんですけど、訴えるものを持っている丸裸の言葉がどんどん出てきたんです。吐き出すような詞が多かったですね」

――再デビュー曲『お陽様よほほえんで』はどんなふうにできた曲ですか。

「いっぱい書いたんですけど、あんまり自分で納得する曲ができなくて。苦しんで苦しんで、やっとこの曲ができたのが9月22日だったんです。で、“これでデビューする”と決めたんですけど、その時私、お金が一銭もなかったんです。本当に苦しかったです。それで井上鑑さんに20年ぶりぐらいにお会いして、曲を聴いてもらったら、『やろう』と言ってくれて。『でもお金がないんです』と言ったら、『出世払いでいい』って。で、鑑さん、山木秀夫(dr)さん、今剛(g)さん、高水健司(b)さんというメンバーが揃ったんです。これだけのメンバー揃うのは“奇跡だ”と言われました。すべて一発録りで、歌も同時なんです。ぜひ聴いてください。本当に、叫びでした。これはミュージシャンの力がなかったらできませんでした。すごい録音でした。レコーディングが終わって、なかなか人のことをほめない今さんが『いい曲書いたな』って言ってくれて、もうそれだけでいいやと思いました」

――歌詞には、とても生々しい言葉を使われていますね。特にサビの“許してあげよう、すべての心を”という言葉がとても強く響きます。

「ノートにいろいろと書きなぐっていたんですけど、この間見直したら、“許してあげよう すべての心を”というところはすごく強い字で大きく書いてあったんです。そこはどうしても歌いたかったところなんでしょうね。もっとかわいい曲もいっぱい書いてるんですよ。でも、今はこれしか歌えないだろうと。それ以外は嘘になると思ったので、どうしてもこの曲で強行突破させていただきました」

――この曲がリスナーの方へどう届くか、手応えはいかがですか。

「こればっかりはわかりません。なにしろ20年間まったく音楽を遮断していて、浦島太郎子なので(笑)。違和感がある人はたくさんいると思います。でも私には信念があるので、自分の音楽だけは曲げたくないと思っているので、伝わっていただけることを願うしかないですね。かなり出しているものが強いので、拒絶されるか、受け入れていただけるか、というところの勝負ではないでしょうか。でもこれは私にとっての落とし前の曲なので、スタートへの落とし前であり、過去への落とし前でもあるので、これしかなかったんです」

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泰葉

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PROFILE

泰葉(やすは)
1961年生まれ。東京都出身。落語家の初代林家三平、海老名香葉子の次女、姉は海老名みどり、弟は9代目林家正蔵、林家いっ平(2009年春に2代目林家三平を襲名予定)。1981年に『フライディ・チャイナタウン』で歌手デビュー。アーティストへ楽曲提供したり、タレントとしても活躍。1988年に春風亭小朝と結婚し引退したが、20年間の結婚生活にピリオドを打ち、芸能活動を再開。
公式サイト

SINGLE

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