RIP SLYMEが1年7か月ぶりとなる待望のニュー・アルバム『JOURNEY』をリリース! リップならではのポップ感&サービス精神に裏打ちされたバラエティ豊かな全13トラック入り。この傑作についてPESとSUが語ってくれた。
Text●大野貴史
――昨年の夏に『太陽とビキニ』を聴いて、なんとなく予想はしていたのですが……それにしても新作『JOURNEY』はロック色&ポップス色が濃い仕上がりですね。
PES「短くてシンプルな曲がいっぱい入ってるバラエティ豊かなアルバムにしたい、というアイデアをFUMIYAが出してきて。60年代の楽曲にあった音像や雰囲気をRIP SLYMEに持ち込みたい、みたいな感じで。で、そのイメージで作っていったんですよ」
SU「完成してから何度も聴き返したんですけど、やっぱコンパクトな曲が多いからスキップとかする必要がなくて。すごくいい感じに仕上がったなあと思います」
――生音の比率も高いですよね?
PES「ですね。60年代っぽいアナログ感に、かなりこだわって作りましたから。『Do it!』と『love&hate』と『ヒッチハイクガール』は生音だけですね」
――『Do it!』と『ヒッチハイクガール』は特にロックに接近した楽曲ですね。會田茂一さんやDragon Ashの桜井誠さんなど参加メンバーもすごいことになってるし。
SU「だからロック調とかじゃなくて、もう普通にロックですよね(笑)」
PES「それ以外の曲でも音の質感は、やっぱりアナログ的な感じで揃えてて。今の時代ってエッジが効いた音が主流だと思うんですけど、それとは逆方向に行ってるというか。デジタルな機材に囲まれながらも、あえて音を汚すような感覚で作ったというかね。しっかりした手触りのある音にしたかったんで」
――アルバム・タイトルが『JOURNEY』で、しかもジャケットは旅行トランク。コンセプチュアルに作っていったんですか?
PES「いや。途中で、そういうテーマが見えてきた感じですね。今年の2月にシングルとして出した『STAIRS』が、ちょっと旅っぽい内容だったじゃないですか。前へ歩いていく、みたいな詞だから。アルバムのタイトルを決める段階で、その旅のイメージに後押しされて“それなら『JOURNEY』がいいんジャーニー?”ってことになって」
――なるほど。それでは……。
PES「いや、だから“『JOURNEY』がいいんジャーニーって”っていう話になって」
──2度も言わなくても、ちゃんと聞こえてます(笑)。取材のたびに、そのダジャレ言ってるんでしょう?
SU「言ってるね(笑)」
PES「必ず(笑)」
――やっぱり(笑)。では何曲かについて具体的に聞かせて下さい。まずは、さっきも話に出てきた『Do it!』。
PES「パンクでロックでバシッと一気にやって終わる、みたいな曲がほしいなあと思って作りました」
――“突き上げろそのコブシ”なんていうフレーズもあって。リリックもロック調。
PES「そう。本気が半分。冗談が半分。みたいなノリなんですけどね」
――続いて『ヒッチハイクガール』。この曲ではSUさんとILMARIさんのみがラップをしていますね。
SU「この2人だけっていう組み合わせは実は初めてなんですよ。常日頃、女の子に対して抱いている疑問を詞にしてみました。サウンド的にはサーフロックっぽい感じですね」
――アルバムのイメージのきっかけになったという『STAIRS』も、やはり名曲。決して押しが強い曲じゃないのに、ふと気が付くと大きな勇気を与えてくれている。
PES「ありがとうございます。この曲は、ほんと、じわじわ系ですよね。パッと聴いて、ものすごい曲だ、とは思わないかもしれないけど。でも後から効いてくるっていう」
――それからタイトル・チューン『Journey』も、ゆるやかに感動的。この曲のSUさんのバース、最高ですね。
SU「本当ですか?」
──はい。“肩に小鳥を乗せて抜け出そう”とか“青春知らずのまま 死ねるわけがねぇから”とか。思わず歌詞カードに線を引いてしまいました。
SU「あとで住所を教えてもらえますか?」
──え?
SU「いや、ほめてもらったんでお中元でも贈ろうかな、と思って(笑)」
──結構です(笑)。他にもトータス松本さんをフィーチャーした『Here comes the hero』など名曲が満載。聴けば聴くほど6月13日からのツアーが楽しみになってきます。
PES「まだ詳しいことは言えないんですけど。アルバムの世界観を膨らませるようなライブになると思います」
SU「かなり地デジが広まった昨今ですが、あえてアナログ放送な感じでいきます」
──アルバムの世界観を膨らませてアナログっていうことは……もしかして!?
SU「そうです! ステージの右上のあたりに“アナログ”って表示します(笑)。というのは嘘ですが、あっと驚いてもらえるライブにします。期待してて下さい」
特集「RIP SLYME ロックな新作とともに旅立ちへ」(2009年6月11日)
インタビュー「もはや夏の新定番!?“サマー”といえばリップなのです」(2008年7月24日)
