かの漫才日本一決定戦『M-1グランプリ』を“勝手に”開催し、“勝手に”優勝してしまおう、という前代未聞のライブ『勝手に!M-1グランプリ』を敢行するタカアンドトシのふたり。'04年大会で第4位という成績に涙を呑んだ彼らが、M-1への思いを今、改めて語る。
Text●泉英一 Photo●源賀津己
――タカアンドトシの単独ライブは3年ぶりですね。
タカ「そうなんですよ。本当は僕ら、単独(ライブ)は1年に1回はやりたかったんですけど、だんだんテレビの仕事が忙しくなっちゃって、ずっとタイミングを逃してて」
トシ「結果、気がついたら3年やってなかったっていう」
タカ「で、今回ようやくやれることになったんで、どうせだったら、大きい所がいいんじゃないかと。それで思い切って、日本青年館でやらせていただくことになりました」
――会場の規模もさることながら、内容もまた非常にユニークですよね。
タカ「はい、M-1を勝手に開催しちゃおう、という大胆な発想で(笑)」
――つまり、本家M-1の決勝戦さながらに、タカトシのおふたりが8組のファイナリストに扮して漫才を披露するわけですか。
トシ「そうです、そうです」
タカ「いやぁ、なんかM-1の常連コンビだとか、度肝を抜く新人コンビだとか、今年はなかなか強豪が揃ってるらしくて」
トシ「ハハハ」
タカ「なんせ史上最多の6600組から勝ち上がってきた選りすぐりの8組ですから」
トシ「ちなみに6600というのは僕らが勝手に決めた数字なんですけどね(笑)」
タカ「特に僕らは芸歴15年目で、今年がラストイヤーなんで。これは負けてらんないぞと」
――もしかして、参加資格が結成15年以内というのも……。
トシ「はい、僕たちが作ったルールです」
――(笑)。要は、おふたりがタイプの異なる漫才を次々に披露する、という。
トシ「うん、ということです。だからまぁ、コントですよね、わかりやすく言うと。M-1を舞台にした大掛かりなコント。その設定の中で、僕らがいつも通りに漫才をやる。ただしネタの中身は、直球から変化球まで、いろんな種類のものがあるっていう」
タカ「漫才のライブって、ふたりでマイクを挟んでずっとしゃべり続けるだけ、みたいな形になりがちじゃないですか、得てして。そうすると、画変わりがない単調な舞台になっちゃうと思うんですね。だから、どうしたら飽きられずに見てもらえるかっていうことを考えてるうちに……」
トシ「今回演出を担当してくださってる(鈴木)おさむさんから、このアイデアが出てきたんです」
――とはいえ、M-1を題材としているところに、おふたりのM-1に対する思い入れの深さを感じます。やはりタカトシの活動史において、’04年のM-1で優勝を逃したという事実は、相当大きなトピックなんだろうなと。
タカ「うん、そうですねぇ。だって僕ら、(M-1への参加資格がある)10年目までは、M-1のために漫才をやってたようなもんですから。ほんと、M-1のことしか考えてなかった。だから、’04年というラストチャンスの年に決勝まで行けたことは本当にうれしかったし、それだけに4位という結果はものすごく悔しかったですよね、やっぱり」
トシ「最後、敗者復活で出てきた麒麟に3位の座をあっさり奪われてね。まぁ、あれ以来、麒麟とは一切、口をきいてないんですけども」
――(笑)
トシ「まぁそれは冗談ですけど、とにかくM-1は、僕らにとって最大の心残りなんで、ここらで一回、優勝しておこうかと(笑)。そうしないと、次に進めないっていう感じがあって」
――ただ、タカアンドトシがブレイクしたのは、M-1がきっかけではなかったように記憶しているんですが。
トシ「ええ、確かに。M-1の次の年に“欧米か!”のネタをやり始めて、そこからですもんね、仕事が増えてきたのは」
タカ「でも、よくよく考えてみると、M-1がなかったら“欧米か!”もなかったんですよね。あのときの悔しさをバネにして、さらにネタ作りに励むようになって、そこで生まれたのが“欧米か!”ですから。そういう意味じゃ、M-1を獲れなかったからこそ今の僕らがあるのかな、と思ったりもするんですけど」
トシ「そうだよな。だいたい今回みたいな形のライブも、優勝してないコンビだからこそできるわけで。もし優勝してたら、パロディとして成立しなくなっちゃうから(笑)」