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「目標はまず最終メンバー入り、メンバー入りしたらメダルを目指す」(後編)<br />
岩清水梓 いわしみずあずさ(サッカー女子日本代表候補)

昨夏のワールドカップ初優勝を経て、なでしこジャパンはロンドンオリンピックのメダルを期待される存在となった。日本中の期待を受け、岩清水梓はプレッシャーを感じつつも、「目標をメダルと言えること自体、凄いこと」と客観的にとらえている。また、最終ラインを束ねるDFは「みんなが同じように、メダルが目標だって思えるようになったのは、チームの成長」と感じていた。大言壮語を嫌う彼女は自分のため、チームのため、応援してくれるファンのため、そして女子サッカー界の更なる発展のため、「いい色のメダルを取りたい」と語った。

取材・構成:戸塚啓  撮影:スエイシナオヨシ

いままでメダルが目標とは言ったことがないんです。
そうやってチームのみんなが言えるということは凄い

ロンドン五輪へ向けて、プレーのなかで意識して取り組んでいることはありますか?

岩清水「ベレーザでも代表でも、無失点で抑えるのはDFとして大前提の目標です。それ以外で意識しているのは、攻撃の起点となるパスですね。いままでは苦手だったんですけど、それも積み重ねなんだなと思っていて。3年ぐらい前から意識するようになって、少しずつ身についてきました。自信を持ってフィードできるようになってきているので、得点につながるようなパスも出していきたいですね」

なでしこジャパンの佐々木則夫監督も、後方からのビルドアップを強調しています。

岩清水「それは必要不可欠と言うか、最終ラインから攻撃は始まると思います。去年のW杯前から監督がよく話していることで、W杯後は『より精度を上げろ』と言われてきました」

なでしこリーグと国際舞台で、プレーに違いはありますか?

岩清水「基本は変わらないですね。リーグでやっていることが国際大会につながるし、リーグでできないことは国際大会でもできないので。小さな違いはちょこちょことありますけど」

たとえば?

岩清水「やっぱり、外国の選手はキック力が違う。そこはポジションを下げるとか、味方との距離感を調整するとか対応しています。あとはサイズですね。どうやってもヘディングで勝てない、という選手はいるので」

ヘディングの距離は、男子でもかなり違いがあります。外国人選手のほうが、明らかに遠くへ飛ばすことができる。

岩清水「たまにビックリしますからね。センターバックの私のところまで、跳ね返ってきたよって、けっこう驚いたこともありました。自分はあまりサイズがないので、そこは駆け引きでカバーしています。先に落下点に入ったら勝てないので、(距離を)残して勢いをつけて競るとか。味方同士でカバーし合うのも大切ですね。センターバックなので、味方の選手を使ってパスコースを限定して奪うことも意識します」

そうやって、相手の攻撃を自分たちの意図にハメ込めたら楽しいですよね?

岩清水「楽しいし、そういう時は全員がハードワークできていて、チームに勢いが生まれるんです。いい位置でボールを奪って、シュートまで持ち込めるとか。でも、自分たちのサッカーに持ち込めないときが難しくて。そういう時に、どうやっていい状態へ戻せるのか。そのことばかり、ずっと考えています」

むしろ、そちらのほうが大事でしょう?

岩清水「そう、絶対に。いつも自分たちのペースになるわけではないし、これからはもっとそういう展開になるんじゃないですか? 相手に研究されて。ホントに勝つのは大変だと思います」

かつてベレーザを率いた松田岳夫さんから、「センターバックは楽してナンボ」と言われたそうですね。その言葉がすごく胸に響いたそうで?

岩清水「センターバックをやっていくうえで、一番残っている言葉と言うか。自分にとってターニングポイントとなった教えです。『周りをうまく動かして、はい御馳走様みたいなインタセプトが最高だろ』と松田さんに言われました。驚きの言葉と言うか、センターバックは賢くなきゃできない、うまく人を使わなきゃいけないんだなって気付かされました」

6月中旬にはなでしこジャパンの一員として、スウェーデン遠征があります(注:このインタビューは5/24に行われた。岩清水選手は遠征メンバー選出後、ケガで離脱)。ロンドン五輪への意気込みを、改めて聞かせて下さい。

岩清水「最終的な18人に入るのがまず目標で、入ったらメダルを目指して頑張ります。いい色のメダルを取りたいですね」

プレッシャーは?

岩清水「プレッシャーはありますけれど、でも、いままでメダルが目標とは言ったことがないんです。そうやってチームのみんなが言えるということは凄いことなんだと、客観的に思います」

確かにそうですね。どの競技でも、メダルが目標だとなかなか言えることではありません。

岩清水「みんなが同じように、そこが目標だって思えるようになったのは、チームの成長かなと感じています」

なでしこジャパンのロンドンでの頑張り次第で、女子サッカーはさらに発展していくでしょうし。

岩清水「それで、なでしこジャパンに入ることを目標にして競技人口が増えたら、女子サッカーがもっと根づいていくだろうし。そういうことにも貢献したい。女子のチーム数そのものは増えているけれど、中学校年代はまだまだ増えていないとも聞いているので」

W杯の登録人数は21人ですが、五輪は18人です。そのうえで、中2日ペースで最大6試合をこなさなければならない。ロンドン五輪はチーム全体の力が問われる大会になります。

岩清水「結束が問われるような場面でも、チームに貢献していきたい。説得力のあるプレーヤーになりたいですね」

後記

このインタビューが行なわれたのは、関東地方が梅雨入りする前である。ロンドン五輪の登録メンバーはもちろん、その最終選考の機会となる6月中旬のスウェーデン遠征のメンバーも、まだ発表されていなかった。
五輪について語ることに、岩清水は遠慮がちだった。4年前の北京五輪で全6試合にフル出場し、昨年のワールドカップでもレギュラーを務めた彼女は、紛れもない守備の中心選手である。それなのに、自らの立場を不安視している。マスコミ向けの謙遜ではなく、はっきりとした危機感を抱いている──率直に言って意外だった。
原稿を書き上げるために、ICレコーダーに録音した彼女の言葉を聞き返す。聞いて、止めて、また聞いて、という作業を繰り返しているうちに、岩清水の真意に辿り着けたような気がした。
経験や実績に寄り掛からない彼女のスタンスこそが、なでしこジャパンに太く強い芯を打ち込んでいるのだ、と。メダルへの戦いはすでに始まっており、岩清水の妥協を許さない姿勢がチームを支えている。

岩清水梓●いわしみずあずさ
'86年、岩手県生まれ。'99年NTVベレーザ(現日テレ・ベレーザ)の下部組織NTVメニーナに入団。'01年にベレーザの下部組織登録選手となり、'03年にはトップチームの登録選手に昇格。同年よりレギュラーとして活躍。以後なでしこリーグ優勝5回、なでしこリーグカップ優勝2回、全日本女子サッカー選手権優勝5回に貢献するとともに、なでしこリーグベストイレブンに6回選出される。またU-18、U-19、U-20の女子代表にも選出、'06年なでしこジャパンデビューを果たす。'07年ワールドカップ、'08年北京五輪に出場し、'11年ワールドカップ優勝の一端を担う。優れた危機察知能力と高いジャンプ力を生かし、ピンチを未然に防ぐDFだ。

オフィシャルブログ:http://ameblo.jp/azusa1014/

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