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オリンピック出場を目指す注目のアスリートにインタビュー

「ロンドンにレスリング人生すべてをかける」浜口京子

集大成として臨んだ北京五輪で銅メダルを獲得しながら、浜口京子は闘い続けている。一時はマットから離れていたこともある。しかし、浜口はレスリングをやめられなかった。なぜか? 3度目の五輪に向かう浜口は「私はレスリングをやるために生まれてきた」とキッパリ。

取材・構成:宮﨑俊哉(CREW)  撮影:スエイシナオヨシ

練習は辛いけど、終わった後はスッキリして「やってよかった」の繰り返し

「夢の集大成」と心に誓った北京オリンピックで見事メダルを獲得。なのに、2ヵ月後、東京で行われた大会に出場されました。

浜口「女子も男子のフリーやグレコローマン(攻撃・守備時に使えるのが上半身のみ)と同じく通常は7階級ですが、オリンピックは4階級のみ。実施されない階級の選手のため、また女子も7階級あることをアピールするため、女子だけオリンピックイヤーにも世界選手権が行われたので、オリンピックに出場させていただいた責任といいますか……」

疲れも見せず、「日本の顔」として闘って銅メダルを獲得。その後、休養に入られましたが、どのように過ごしていましたか?

浜口「ありがたいことに、イベントや講演に呼んでもらったり、テレビのお仕事をいただいたり」

これまでにない経験をされて、何を感じましたか?

浜口「何もかもが新鮮でした。それまで本当にレスリングだけの生活でしたから。すべて興味があったし、やりたかったことにチャレンジできました。いろいろな方にお会いして、レスリング以外の世界を見られたので、人として自分の幅が広がった気がします」

そのまま現役を退いて、そちらの仕事に進もうとは思わなかったのですか?

浜口「声をかけていただいて嬉しかったし、テレビの仕事などは楽しかったです。だけど、私は小さい頃からずっと体を動かすのが好きでしたから。レスリング以外のことに触れることによって、改めてレスリングがどれだけ自分にとって必要なのかわかって、まだまだ続けたいと思いました。私は不器用ですから。もっと上手く生きられれば、レスリングをやめて楽な方に行けるのかもしれませんが、やっぱり戻ってきました」

練習を再開されたときは、どのような感じでしたか。

浜口「一番最初、レスリングを始めたときのような気分で、もうルンルン! リュックを背負って、道場まで笑顔で走って行きました」

ご自身にとってレスリングとは?

浜口「自分を強くしてくれるもの、体だけでなく心も。レスリングの練習は辛いですけど、終わった後はスッキリして、『あぁ、やってよかった』の繰り返し。私って本当は無口でおとなしくて、結構人見知りもするので、性格的には真逆なことをやっているのかもしれませんが、負けず嫌いなところもあって、レスリングに出会えて本当によかったと思います」

お父さんの影響も?

浜口「まず、父(アニマル浜口)のもとに生まれてきたというのがありますよね。『私はレスリングをやるために生まれてきたんだ』と思うことがあります。父のプロレスの血が流れていますし、哺乳瓶を抱えていた頃から、母におんぶされてプロレス会場にも行っていましたから」

ロンドンに出場する決意を固めたのはいつですか?

浜口「2010年、モスクワで行われた世界選手権で銅メダルを獲得したあたりですか。志が定まって、ロンドンを見据えて練習に取り組むようになりました」

最初の質問に戻って、アテネ、北京と比べてロンドンはいかがですか?

浜口「今回はチームで闘っている、ものすごくそういう気がします。監督、コーチ、指導してくれる先生方、72kg級や67kg級の選手、みんなに支えられていて。それだけに中途半端な気持ちではいけないと思っています」

最高の状態でオリンピック本番を迎えられそうですね。

浜口「私のレスリング人生、山あり谷ありでしたけど、このイキイキとしていられる時間もあともう少しなんだと思うと淋しい気もします。だからこそ、1回1回の練習を大切にしていこう、全力で打ち込もうと貪欲になっています。17歳で世界選手権初出場を果たしてから今日まで18年間、世界で闘ったきた自分のすべてをかけてロンドンで闘います」

後記

浜口京子、オリンピック3大会連続出場……いや、1997年から世界選手権3連覇を果たしており、2000年シドニーオリンピックで女子レスリングが実施されていれば当然、4大会出場だったろう。国内では、全日本選手権で男女通じて最多となる15回優勝。ロンドンでオリンピック3連覇を目指す吉田沙保里の10回優勝が現役第2位の記録と知れば、その記録の偉大さに驚愕するばかりだ。競技生活を長く続けられた理由を本人は、「レスリングを始める前、父にボディビルで鍛えられたので“筋肉の鎧”が身についているから」と説く。永遠にその名を歴史に止める偉大なる選手と同時代に生きる喜びを、読者とともにかみしめたい。

浜口京子●はまぐちきょうこ
1978年、東京都生まれ。ジャパンビバレッジ所属。プロレスラーであった父・アニマル浜口の指導のもと、ボディビルのトレーニングを開始し、14歳からレスリングを始める。1996年全日本選手70kg級で優勝すると、翌年の世界選手権75kg級も制覇。以後、全日本選手権史上最多のV15を達成。2004年アテネ五輪、2008年北京五輪はともに銅メダルを獲得。世界選手権は金5回、銀2回、銅3回。

オフィシャルブログ:http://ameblo.jp/hamaguchi-kyoko/

レスリング女子ワールドカップ2012
5/26(土) 11:00
5/27(日) 10:00
代々木第二体育館