司会を務める『新婚さんいらっしゃい！』も来夏で四十周年を迎える桂三枝。ＴＶスターとしても知られる三枝だが、落語家としての芸道は決して平坦ではなかったという。そのあたりの秘話満載の自伝マンガ『桂三枝の上方落語へいらっしゃ〜い』が年末に刊行される。

「師匠・桂文枝をはじめ、松鶴師、米朝師、枝雀師といった大先輩、漫才のやすし・きよしさんとのエピソードもたっぷりと、『山口六平太』の高井研一郎先生に書いていただきました。私生活も“赤裸々”です(笑)」

そして、この芸能界のトップランナーが、片時も離れなかったのが落語の高座だ。

「よく『最近、三枝は落語に力を入れている』と書いていただきます。ありがたいですが、じつは私……ずーっと演っているんですよね(笑)。まあ、今はそれだけ落語が注目されているんでしょう。これは素直に嬉しいです」

新年には東京や大阪で落語会が目白押しだ。まずは年始の『しながわ寄席』。

「柳家花緑さんや三三さんといった江戸落語も出れば、中川家やフットボールアワーのような漫才も出る、バラエティに富んだ楽しい寄席です。親子で観に来てほしいですね」

さらに一月八日〜十日には、恒例となった有楽町朝日ホールで三日連続の昼夜独演会。

「今年はお客様と一緒に旅に出るつもりでハワイ旅行をテーマにしました。高座でウクレレも弾く予定ですので、どうぞお楽しみに！」

また、大阪では一月十五日に第三回目となる『桂三枝の笑宇宙』が開催される。

「自作の二百二十席から決定版を選ぼうという試みで、高座は映像として残し、ベストアルバムのようなDVD作品集にする予定です。落語はいまだ発展途上ですが、四十年以上やっていますから、こんな会もええかなと(笑)」

しかし、なぜそれほどまでに落語にこだわるのかと問うと、三枝はこう言って微笑んだ。

「落語という芸能は、演出も脚本も主演も助演も全部ひとりでできる、究極のエンタテインメントです。裏を返せば、全部ひとりでやらなあかん(苦笑)。こないに面白いもん、やめろと言われても、ようやめられません」

「マンスリーよしもとPLUS」2011年1月号より