彼らのデビューは、衝撃的だった。「漫才といえば関西弁」が常識だった大阪の舞台で、個性の強すぎる岡山弁で展開する漫才。ある意味、関西人に関西弁以外の面白さを初めて教えてくれたのが、千鳥だった。彼らの実力は、Ｍ-１グランプリの決勝に四度勝ち上がってきたことからも証明できるだろう。そんなふたりが今年、結成十年を迎えた。

大悟「こんな簡単に十年、あっちゅう間に来るんやという感じですね」

ノブ「振り返ると……大阪で仕事させてもらってて、ロケ、ロケ、ロケの毎日やったところに、Ｍ-１の決勝進出が決まって。こうして人の人生って変わっていくんやな、これで売れるなと思った途端、決勝本番で『はい、どうも〜』って出て行ったときの、大悟の緊張したちっちゃい、ちっちゃい声を聞いて『あかん！　違う違う、これは人生変わらへん！』って思ったのが……あれが俺の節目でした（笑）。案の定、すぐに大阪に帰ってロケしてました」

関西のテレビ業界では「ロケといえば千鳥」と定評のあるふたり。その基本は、漫才に裏付けされたトークの面白さにある。大悟の破天荒なキャラクターとボケに加えて、ノブのツッコミも傑出している。

大悟「僕ら岡山の人間は、もともとお笑いっていうものをあまり知らなくて。特にツッコミっていう文化がなかったんで、ノブは最初やっぱ苦労したと思うんですよ。あえて言わなかったんですけどね。どっかで自分でどうにかするんじゃないかな〜って思ってたんですが……してくれましたね」

ノブ「やめてくれよ、恥ずかしい（笑）」

大悟「ただ、響きすぎるというか。僕が意図してない、そんな感じでボケてないってとこを、勝手にボケと取ってツッコんでくるとこがありますけど」

そんなふたりが、かつてbaseよしもとでしのぎを削った仲間をゲストに呼び、十周年の記念イベントを開催することになった。

ノブ「基本的に、十年を振り返って改めて僕らのことを知っていただこう、というイベントなんですけど」

大悟「今回ゲストに呼んだような奴らとワイワイやってたのが楽しすぎて、この十年はのんびりしすぎてたとこがあったんで。僕らの思いとしては『ここから急ごうな』というのがありますね」

ノブ「メンバーがメンバーなんで、イベント自体はちゃんとしたものになりそうもないですけど（笑）。あと、Ｍ-１の出場も今年が最後なんで……Ｍ-１ラストイヤーを意識して、ガッチガチに緊張した僕らの漫才も楽しみにしてください」

「マンスリーよしもとPLUS」9月号より