「ザンビアの想い出」

彼らと出会ったのはジンバブエにある日本人宿だった。
その親子とは、行商の仕事でジンバブエに来ているザンビア人の40歳にはとても見えない若々しいママと20歳前後のスラリと身長の高くハンサムな息子オリバー君。

 私はその宿に1か月近くダラダラしていたのでママとオリバーとは顔見知りになり、気づけば夕食を共にするような仲になっていた。クリスマスにはクリスマスプレゼントをもらったり、私が外から宿に帰るとママが「おなかすいてない?
食事ができているわよ」と食事を出してくれたり、長く家族から離れていた私には楽しい日々が続いた。

「一週間で帰ってくるからね。この宿で待っていてね」

と、ある日オリバー君が私に言いました。オリバー君は行商の仕事でザンビアに一度帰らなければならないのでした。しかし私にも日本に帰国せねばならない日が近づいていて、どうしても一週間もそこで待つ猶予は残っていなかった。
・・・どうしよう・・・先に進まないと・・・でもママとオリバー君とお別れしたくないよーー

「私もザンビアへ行くわ!」

かくして私は彼らについてザンビアへついて行ってしまったのだった。ザンビアにある‘トラックイン‘という長距離トラックの運転手が泊まる、安宿にママは安食堂を持っていたのです。ムム・・・なかなかのやり手・・・。その安食堂ではママの娘であり、オリバー君のお姉さんであるソフィアが働いていた。
‘トラックイン‘は巨大トラックが何十台も止めれるくらい広い広場をぐるりと囲む様にして部屋が並んでいる所だった。水もロクに出ず、今まで見た事もないような汚いトイレ・・・

「ここがゲットーというんだ。俺達はここで育ったんだ」

と、オリバー君は教えてくれた。

ウワー!!あたしゃこんな所じゃ生活できねえー!!

と、思いつつもママやオリバー君、ソフィアにそのいとこ、友達たちに囲まれ、寝食を共にしていたらアッという間に一週間が過ぎいった。
とうとうザンビアを出る日になった。オリバー君は私の重いザックをかついでタンザニア行きのバス乗り場まで見送りに来てくれた。

「・・・ママは今来るはずなんだけどなあ・・・」

残念ながらママにはもう会えそうもなかった。

「ありがとう。楽しかったよ・・・ママによろしくね」

他愛ない別れの挨拶をオリバー君にしていたその時、

「もう行くぞーー!!」

と、バスが動き始めた。私はドキンと胸の何かがつつかれた様に涙がぼわーっと出てきた。

「じゃあね!!じゃあね!!みんなによろしくね!!」

オリバー君と私が抱きしめ会うとバスの窓から私達を見ていた乗客が「ひゅー ー!!!」っとはやしたてた。
別れがすむと私はだっだと動き出したバスに走って乗り込み、車窓に見えるオリ バー君を追う様にしてバスの後車側に移動しながら手を振った。
オリバー君が見えなくなても私は鼻をぐずぐずならしながらママ、オリバー君、ソフィアを思い出しながら泣いた。
バスは少し走ると給油の為すぐにガソリンスタンドに止まりました。ぼーっと車窓を眺めていたらそこに信じられない光景が目に入って来た。

「ジュンコ!!降りて来なさい!!ジュンコ!!」

なんとママがバスの外に立っているではないですか!!
ドッキーン!!!私は今までガマンしていた涙がどどーっと出てきた。

「すみません!!すみません!!」

私は狭い車内の人をかき分け、走る様にして外へ出た。

「ママーーー!!」

私とママはガッと抱き合った。まるで何十年ぶりに出会った時のように・・・。

「ほらほら泣かないのよ。気を強く持ちなさい」

「うんうん」

と、言われてもどうしても涙が止まらない。その横にオリバー君とソフィアもいた。 彼らは何とタクシーに乗って追いかけてくれたのだった。

「これ食べてね」

と、ママは私にリンゴとマーブルチョコを渡してくれた。

「ありがとう、ありがとう」

「じゃあね、日本の家族によろしくね」

そう言ってママ達はまたタクシーに乗って去っていったのでした。
それは今でも絶対に忘れる事のできないザンビアでの出来事なのでした。

事務局の声 くぅっ!!!今度、絵ができたら見せて下さい・・・

山口純子さんのHP
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad/9514/

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