シニア海外ロングステイ タイ編
第6回目 バンコクでのロングステイ実例
増成 ヒトミ


バンコクの地図 世界的に有名な交通渋滞で知られるタイの首都、バンコク。年間1千万人を超える観光客が訪れる一大観光都市でもある。大気汚染や都市化にまつわる問題が懸念される街ではあるが、様々な面で地方都市より便利なことは否めない。最終回の今回はこのバンコクに単身でロングステイされている方の実例をご紹介したい。



交通渋滞 早川毅さん(仮名)は、50歳のときに勤務先の勧奨退職制度を利用して早期退職をし、そのままバンコクに移り住んだ。1998年6月のことだ。現在はバンコク中心部のセントラルワールドプラザ(旧称ワールドトレードセンター)から、バスで数分のところにある賃貸マンションに住んでいる。約32uの広さの部屋にキッチンとバスルームがついて、家賃は月に7,500バーツ(約21,000円)。家賃は手頃だが、セキュリティや居住者向けの各種サービスも充実しているせいか、現地採用で働く日本人をはじめとする外国人居住者が多いのが特徴だ。

初めてタイを訪れたとき、自分の子供時代の日本の雰囲気を感じ、とても懐かしい気分にさせられたと早川さんは言う。独身だったこともあって、いつかはタイに住みたいと心に決め、計画的に貯金をしていたが、退職金も手に入ったことから、安心してタイでの生活をスタートすることができた。1カ月の生活費は、家賃以外では食費や日用品購入費、インターネットなどの通信費で約1万バーツ(約28,000円)といったところだ。

セントラルワールドプラザ キッチンで簡単な食事を作ることもあるが、週の半分は外食をする。マンションから歩いて5分ほどのところに、外国人向けの洋食を食べさせる店や、タイ料理レストランがあるし、屋台でタイのお惣菜を買って来て部屋で食べることもある。独り暮らしが長かったので、自炊は無駄が多いと感じた末の選択だ。食べものが口に合うのも、タイに住めると思った理由の一つだと早川さんは言う。

普段の買い物は近くのコンビニで済ませ、週に1度はセントラルワールドプラザ向かいの大型スーパーに行くことが多い。日本食の食材や日本語書籍を探すときだけ、日系デパートに足を向ける。日系書店で日本語の無料情報誌を眺めて、そこからバンコクの最新情報を得るのも楽しみのひとつだ。

向かいの大型スーパー タイに住むならきちんとしたタイ語を話したいと思っていた早川さんは、タイ語学校で熱心にタイ語を勉強した。だが、年齢が年齢だったこともあって、新しい知識を詰め込むのは想像していた以上に大変だった。クラスメイトに遅れずに授業についていくのに必死で、宿題をこなす余裕すらなかったこともあるという。しかしその猛勉強の甲斐あってか、今はゆっくりながら新聞も読めるようになったし、テレビのニュースも聴き取れるようになった。こんな早川さんに、マンションの管理事務所や警備員などの従業員は好意的だ。挨拶以上のタイ語を交わすことで、勉強したばかりのタイ語を使う機会も増えるし、何より独り暮らしの外国人の身の上を常に気にかけてもらえるのはありがたいと感じる。

最後に、早川さんより、これからタイにロングステイする人たちへのアドバイスを頂戴した。
「日本にいる間に情報収集をして、資金面やライフスタイル面の計画を練っておくこと。また、タイ語は絶対に勉強した方が良いです。歳を取ってからの勉強は大変だと思いますが、努力すればその成果は必ず現れます。知り合いのある年配の日本人は、全くといって日本語が話せないのですが、それが元でタイ人に誤解されることがあります。それから、日本人とタイ人を比較して、日本人の方が全てにおいて優れているようなことを言う人がいますが、そういう人は本当の意味でタイに馴染めないでしょうし、タイ人と付き合っていくことも難しいと思いますね。謙虚な気持ちを持つことが肝要だと思います」。


(参考)
・リンクタイランド
…タイに関する日本語、タイ語のホームページがリンク形式で網羅されている。
http://www.linkthailand.com


<作者紹介>
増成 ヒトミ
97年からバンコク在住。スペースアルク「ヒトミのバンコクな毎日」、キレイコム「世界のキレイ・タイ編」、ウェブコラムマガジンのらり「挨拶は『もうごはん食べた?』」など好評連載中。
ご意見・ご感想は、編集部へ info@stepup.co.jp



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